よりきちんと見られて、リッチな表現を可能に
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、予約型がどのような背景のもとリリースされたのか教えてください。
小嶋:現在ヤフーではディスプレイ広告に関するプロダクトの再編を進めており、予約型と運用型の2つへとリニューアルしました。その中で予約型が生まれたのは、これまでのYahoo!プレミアム広告をさらにパワーアップし、広告主様のブランディングに最大限貢献したいという背景があります。
MZ:これまでもブランディング目的で使われてきたYahoo!プレミアム広告を強化するためのリニューアルとのことですが、具体的には何が変わったのでしょうか。
小嶋:大きく3つの変化があります。1つ目は、インプレッション保証からビューアブルインプレッション保証にした点です。ビューアブルインプレッションで視認範囲に表示されたと見なされるのは、広告の50%以上の範囲が1秒以上連続して表示された場合になります(※)。これにより広告が見られていると保証できますし、広告が「見られているがクリックされていない」のか、「見られていないからクリックされていない」のかを分析でき、これまでよりきちんと「見られる」価値を提供できるようになりました。
※バナー広告およびアウトストリーム型広告の場合
2つ目は、リッチアドの拡充です。ファーストビューにおける専有面積が広く、視認性が高い広告フォーマットであるリッチアドは、これまでのYahoo!プレミアム広告でも提供してきましたが、基本的にはPCでの展開がメインでした。しかし今後は、スマホをはじめどのデバイスでも新たな表現ができるように検討しています。
そして3つ目は、運用型と連携した計測です。これまではディスプレイ広告の各プロダクトで効果計測を行っていましたが、これからはそれらを統合して効果計測・分析ができるため、さらに効果改善が見込めます。
ディスプレイ広告の総合的評価を実現
MZ:運用型と予約型を統合して分析できるのは非常にメリットが大きいと感じました。具体的には、どのような効果計測・分析ができるようになるのでしょうか。
宮村:プラットフォームの統一に際してレポート領域は非常に重要と考えています。これまでのレポートとの大きな違いが2つあり、 1つは運用型と予約型の指標の統一です。
宮村:これまでYahoo!プレミアム広告とYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)では計測できる指標が異なるため、たとえばYahoo!プレミアム広告ではコンバージョン計測ができず、「ブランディング目的だが獲得成果も見たい」といったお声には応えられませんでした。しかし、プラットフォーム統合により、予約型も運用型と同じ指標で計測ができ、フラットな評価が可能になりました。
もう1つの違いは、横断した分析が可能になる点です。具体的には、予約型と運用型の重複リーチ数やコンバージョン数などが視覚的に判断できるようになります。ベン図を用いて、予約型で1,000万UU、運用型で800万UUにリーチして、そのうち300万UUが重複していた、といった情報が一目で把握可能になります。
MZ:指標を揃えるといっても、ブランディング目的の予約型と獲得目的の運用型では効果が大きく異なってくると思うのですが、どのような形で評価することができるのでしょうか。
宮村:おっしゃる通り、運用型か予約型かは出稿目的に対する手段なので、一概に混在させず目的に対する評価をすべきです。その中においてこれまでのラストクリック偏重の評価ではなく、新しく提供を始めたアトリビューション分析でコンバージョンパスを見える化することで、たとえば運用型広告のコンバージョンに予約型のリッチアドのビューや動画視聴が寄与していたという総合的な評価ができると思います。
また、自動車や家電など耐久消費財などの商材はリッチアドのようなブランディング向けフォーマットの接触により購買意欲が高まり、来店予約やECでの購入などWebコンバージョンにつながるケースもあるため、ブランディング向けのリッチフォーマットが獲得に寄与するケースもあると考えています。そのため、予約型のコンバージョン計測ができることも非常に重要なアップデートだと捉えています。
運用型と予約型で効率よくアプローチする秘訣は?
MZ:これまでより、ディスプレイ広告を活用してフルファネルでのアプローチがしやすくなったのはわかりました。では、どのように運用型と予約型を併用していくのがベストかも教えてください。
宮村:基本的に効率的に配信ができる運用型をオールウェイズ・オンで出稿いただき、繁忙期やキャンペーン期間などは配信が担保される予約型や、視認性の高いリッチアドなどを活用しプランを立てていただくのが定石だと思います。
また、活用の際はぜひシミュレーションもご活用いただきたいです。予約型では想定配信期間やご予算やターゲティングを設定いただくとリアルタイムに広告在庫と連動し、想定の獲得リーチ数や平均フリークエンシー数がシミュレートされます。まだ興味関心が薄くクリックアクションなどに移らない潜在層へのアプローチは、ターゲット規模(リーチ数)と興味醸成(フリークエンシー数)が重要なので、運用型のリターゲティングボリュームやコンバージョン数の状況を見ながら、予約型で潜在層へのアプローチをプランニングするなどの併用が考えられます。
その他にも、運用型をメインにご活用いただいているお客様だと予約型の広告に手を出すのにハードルを感じる方もいると思いますが、統合されたことにより、まず運用型でクリエイティブや配信ターゲットのテストをしていただいて、そこでの検証結果をもとに予約型を買い付けることも可能になりました。たとえば、オールウェイズ・オン配信の運用型でクリエイティブや配信ターゲットの勝ちパターンを検証したうえで、予約型をプランするといった活用をいただくケースもあります。
小嶋:予約型は高額のため手を出しにくいと思われがちですが、地域を限定して配信することでグロスが大きくなくても購入可能な「ブランドパネルPC(市区郡)」といった商品もあります。運用型広告でダイレクトレスポンスを中心に活用してきた広告主の皆様にも、ぜひ予約型を活用していただきたいです。
ファネル全体でのアプローチ不足部分を探る
MZ:統合して計測できるようになったことで、結果の分析の仕方もこれまでも変わってくると思うのですがいかがでしょうか。
宮村:昨今のデータ規制の流れを踏まえ、リターゲティング広告に依存した広告プランニングが困難になってきています。今回、ブランディング目的の予約型と運用型の横断分析、そして中間評価が可能になったため、最終的なコンバージョン数の母数を増やすための全体設計や目的設定が重要になると思います。
そのためレポートを見ながら、ファネル全体でアプローチが足りていない部分を分析していただき、自社の顧客基盤を最大化するためのプランニングに役立てていただければ幸いです。
MZ:小嶋さんはいかがでしょうか。
小嶋:アッパーファネルへのアプローチの重要性は多くの方が理解していると思いますが、あまり浸透していないのが現状でした。しかし今回のリニューアルでトライする価値が明確になると思います。
予約型ならではの広告フォーマットを拡充
MZ:では、最後に今後の展望をお聞かせください。
宮村:今後強化したいと考えていることは3つあります。1つ目は前述した総合的な広告効果をよりUI上で感覚的に見える化する、UXの向上です。広告主や広告代理店の広告運用者の方の生産性が上がるような状態を作ります。
2つ目は、リスティング広告(検索連動型広告)と連動した計測です。リッチアドや動画広告などが検索広告に好影響を及ぼすケースもあると思いますので、そのあたりの効果計測も可能にします。
3つ目は可視化した結果とその次の配信への連動です。たとえば新規にリーチしたユーザーへの再アプローチできる仕組みなどを検討しているので、よりPDCAサイクルのアクションを取りやすいプラットフォームにしていきます。
小嶋:予約型に対する実施ハードルを下げていけるよう、今後も機能拡充やプロダクト改善を行っていきます。リッチアドだけでなく、予約型ならではのサービスを提供することで、予約型と運用型をセットで出稿するのがスタンダードになればうれしいです。
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