最新調査にみるコロナ禍のメールマーケティング
――メール配信業界の老舗企業として、これまでメールマーケティングを支えてきたユミルリンクさんですが、近年のメールマーケティングのトレンドをどのように捉えていますか?
桑谷:当社では毎年、EC売上トップ50社を対象に、メルマガをどのように販促やブランドコミュニケーションに活用しているかを調査しています。2020年の結果を見ると、例年とは違う傾向が見られました。
特筆すべきは、配信する「曜日」と「時間帯」における変化です。曜日については、これまで“週末の金曜日”に集中していたのが、“平日の水曜日”に配信数が増加しました。
時間帯の傾向としても、かつては夜ご飯前の“18時台”に集中していたのが、日中“12時台”の配信数が大幅に増える傾向が出ていました。
桑谷:一方休日のピークは、12時が10時に、夕方18時が19時に動いていることがわかりました。小売などはピークシフトへの配慮もあるでしょうが、接点を分散しようとする工夫が、こういった結果につながっているのではと分析しています。
――メールマーケティングにもコロナ禍の影響が見られるのですね。
桑谷:そうですね。配信内容に関しても、お客様への気遣いをメッセージに含める企業もあるようです。そしてオフラインの接点に制限のある今、お客さまとの関係構築の重要なチャネルとしてメールの使い方を見直したいと当社にご相談くださる方が増えています。
最多は1日9通!配信数のコントロールが急務に
――具体的には、どのような相談が寄せられているのでしょうか。
桑谷:配信頻度のコントロールに関するご相談が増えています。先ほどの調査によると、1社あたりの平均は1日1通程度ですが、最も多い企業では「9通」との回答がありました。特に複数のブランドを抱えるアパレルや家電系の総合販売店は、配信数が多くなる傾向にあります。
桑谷:メールマーケティングは顧客との関係維持やプロモーション、通知などの用途で活用できますが、配信数が多くなりすぎると離反やブランド毀損につながったり、開封率低下の恐れも出てきます。
このようなご相談は2~3年前から増加傾向にありましたが、コロナ禍でオンラインチャネルの重要性が増している中、対応が急務になっている側面もあると思います。
――そもそもなぜ、配信数のコントロールが難しい状況になっているのでしょうか。
桑谷:いくつかの要因がありますが、一つはシナリオの複雑化です。デジタル化の流れから、行動データやPOSデータなどが取れるようになりましたよね。それを基にレコメンドメールを送ったり、セグメンテーションを分け、パーソナライズした内容の配信が当たり前になったことで、複数のシナリオが同時に走るようになってきました。加えてデジタル上のキャンペーン数も増えると、絶対数が増えていくため、運用する企業の負荷が高くなることも課題としてあがるようになったのです。
こうした背景から今回、当社のメール配信システム「Cuenote FC」に、新たにフリークエンシー機能を実装しました。
「期間・通数」の設定で、配信を自動でコントロール
――では「Cuenote FC」と新たに実装したフリークエンシー機能について、教えてください。
桑谷:当社が提供している「Cuenote FC」は、独自開発のメール配信エンジンにより高速かつ確実にメールを届けるメール配信ツールとして、多くの企業や自治体にご利用いただいています。サービス契約数は1,800を超え、月間配信数は44億通と、国内最大規模となっています。
新たに追加したフリークエンシー機能は、配信頻度を自動でコントロールするものです。あらかじめ「期間」「通数」を設定するだけで、1人の顧客に対して情報過多にならないよう、メッセージ送信数を制御することが可能です。従来この機能は一部のお客さまにカスタマイズ対応として提供していたのですが、ニーズの高まりから、今回標準機能として実装する運びになりました。
――メールを送る企業、受け取る顧客の双方にメリットが生まれる機能ですね。
桑谷:その通りです。企業側は作業負荷を軽減しながら、配信過多による購読解除や退会を低減し、顧客との良好な関係構築に役立てることができます。そして顧客側には、より自分に合う情報が提供され、体験が向上するメリットが生まれます。
仕事が増え続けるメール担当者を、システムで支えたい
――機能実装の裏に、どのような思いが込められているのでしょうか。
桑谷:メールマーケティングの担当者は現在、ツール管理やシナリオ管理に労力がかかっている上に、最近は頻度コントロールや内容への気配りが必要になり、求められることが日々増えている状況ではないかと感じています。
私たちは、マーケターに本来割くべき業務、たとえばコンテンツのブラッシュアップや適切なセグメンテーションを考えることに時間を使ってもらうためにはどうするべきか、その観点からツールとしてお手伝いできることを考えています。
当社代表の清水も「システムに『おもてなし』を」と言っているのですが、製品設計を行う際は、マーケターやその先にいるエンドユーザーの利便性を高めていくおもてなしを大切にしています。
――すでに導入されている企業もあるとのことですが、導入前後でどのような変化があったと話されていますか?
桑谷:先行して導入いただいた某メディア様は、多くの媒体を持ち、さらにその媒体の中でもカテゴリーの分岐があることから、1日あたりのメルマガ配信頻度が高くなってしまい、コントロールが難しいことについて悩まれていました。
ですが、導入後は「送りたいものはいったんすべて予約をして、その後はCuenoteに任せられるようになった」「送りすぎを気にする必要がなくなり、コンテンツ制作に集中できるようになった」と、これまで業務を行う上でかかっていた負担を減らせた点をご評価いただきました。
BtoC/BtoB問わず活用が可能
――今回の新機能をどのような企業に活用してほしいですか。
桑谷:多数のメルマガ会員を抱えている企業は、それだけデータのセグメントが細かく、配信頻度が多くなるので、機能の有用性を感じていただけると思います。
業種に関しては、BtoC/BtoB問わず活用していただけますが、特にアパレル、小売、メディアのお客さまとは相性が良いでしょう。会員の母数は多くなくとも、複数のブランドを持っていたり、商品カテゴリーが多数に分かれるような企業、キャンペーンをいくつも動かしていて配信頻度の高い企業などは、導入メリットが大きいと思います。
――様々な活用が可能ですね。
桑谷:はい。ほかにもスタートアップで効率的にメール配信を行うためにMAツールを導入しようか迷われている企業には「Cuenote FC」をお勧めします。
MAツールは導入コストが大きいうえに、運用に対するコストやリソースも必要ですので、“専属部隊”を作って活用していく覚悟が必要です。一方「Cuenote FC」には、今回のフリークエンシー機能をはじめ、メール配信をコントロールできる様々な機能が備わっています。スモールスタートを目指されるお客さまとは、相性が良いと思います。
――最後にマーケターに向けてメールマーケティングの成功に向けたアドバイスをお願いします。
桑谷:今回の機能は、企業側にとってはより良い顧客コミュニケーションの実現と工数削減、そして顧客側にとっては本当に欲しい情報が手に入るようになる体験を実現するものです。
コロナ禍の影響でリアルの接点に制限が生じていることもあり、デジタル上での情報発信はある意味「やって当たり前」の状況になっています。そこから一歩抜きん出て、お客さまに「この企業は自分に合う情報を送ってくれる」「読み逃さないようにしよう」と思ってもらえる存在になるために、配信コントロールを行う重要性は増しています。差別化を図っていくための手助けを、我々の製品でさせてもらえたらと考えています。
――本日はありがとうございました。