デジタルエンターテインメントの可能性
コロナ禍で大勢の人が同じ場に集まれないという制限から、エンターテインメントの世界では興行をオンライン化する流れが加速した。韓国のトップアイドルグループ「BTS」が2020年10月10日~11日に行った「BTS MAP OF THE SOUL ON:E」のネット配信では191の国と地域で99.3万人が視聴したという。
国内でもアーティストによるオンラインライブが増加。それを支えるプラットフォーマーによる新たな取り組みが目立った1年でもあった。その一例として、サイバーエージェントグループのAbemaTVが運営する「ABEMA」ではBTSの歴代ライブ映像を独占配信。2020年6月にスタートした有料オンラインライブ配信サービス「ABEMA PPV ONLINE LIVE」では、ライブ、イベント、スポーツ興行、ファッションショー、舞台などを積極的に配信している。
コロナ禍が収束すれば、再び多くの人が会場に集まってアーティストやスポーツ選手のパフォーマンスを楽しむ機会が増えていくだろう。一方で、オンラインイベントならではの楽しみ方とマネタイズが開発されていけば、新しいデジタルエンターテインメントビジネスがより広がっていく可能性がある。
生活や人間関係に密着したフィンテック
最後に、コロナ禍において現金の受け渡しを避けたいニーズと政府のポイント還元事業が相まって普及が進んだフィンテックについて取り上げたい。
近年、QRコードやバーコードで決済を行えるサービス/アプリが数多くリリースされたが、その筆頭である「PayPay」は企業が展開するキャンペーンに組み込まれるケースが増えている。たとえば花王では2020年9月と12月に、店舗で1,000円(税込)以上の同社商品をPayPayで購入したユーザーに花王商品の買い上げ金額の最大40%をPayPayボーナスとして付与する企画を実施した。商品の購入者と直接的な接点を持ちにくいメーカーがスマートフォン決済サービスと手を組んだことで、これまでにない顧客データを得られた可能性がある。今後、企業によるこうした取り組みは注目しておきたい。
また、楽天では2018年11月に低圧電力供給サービス「楽天でんき」をスタートし、200円ごとに「楽天スーパーポイント」が1ポイント付与される仕組みを提供している。楽天モバイルでは2020年10月に都市ガス取次販売サービス「楽天ガス」を開始しており、ポイントプログラムを備えた決済サービスを持つプラットフォームが日常生活を送る上で必要不可欠なインフラを自社のエコシステムに取り込む動きが進んでいる。フィンテックは人々の生活を便利にする一方で、企業が知りたいユーザーの情報を得るツールにもなる。オフラインやオンラインを問わず、企業のマーケティング活動において欠かせない存在となっていくのではないだろうか。
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