エッセンシャル思考の加速に伴い、“いいブランド”の定義も変化する
バングラディシュの栄養失調問題をきっかけに、人と地球を健康にすることを目指して2005年に設立されたユーグレナ。昨年の15周年を機に、企業フィロソフィーとして「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げたユーグレナという企業の存在自体がパーパスそのものを体現しているが、「私たちも試行錯誤しながら取り組んでいて、完璧に実行できているわけではありません。この場では、表面的な成功体験の共有ではなく、自身の経験から得た気づきから、パーパスを出自としていない企業でも実践できるような考え方や要点をシェアできれば」と工藤氏は口火を切った。
コロナ禍を境に、よりエッセンシャルな方向に社会は変化し、生活者はモノ・サービスの要不要を厳しく選別し始めている。それに伴い、「いいブランドの定義も変わってきています」と工藤氏は指摘する。
「マーケターとして、自社のブランドが『あのブランドは●●だね』と言われて嬉しい言葉は何でしょうか? 私自身、かつては『かっこいい』『憧れ』という言葉を目指していましたが、今は『意義深い』『今の時代に必要』と言われることを嬉しく感じるようになっています」(工藤氏)
パーパスドリブンな企業は4倍もの成長率を遂げている
ここで改めて、「パーパス」という言葉の定義を整理しておきたい。
パーパスとは、一般的に「ブランドの存在意義」と言われている。消費者にとっては「存在意義」であり、ブランドにとっては「存在の目的」だ。また同時に、「何をやるのか(WHAT)」ではなく「なぜやるのか(WHY)」が重視される。
では、なぜ、パーパスドリブンであることが求められるのだろうか? パーパスドリブンであることの効用としては、「社会課題の解決」「顧客満足の向上」「ブランド・エクイティの向上」「売上アップ」「社員のモチベーション向上」といったことが一般的には挙げられる。中でも特に「思いを一つにすることで、組織の中と外の壁を下げて、外部から資源を呼び込む効用がある」と工藤氏は指摘する。
元P&Gでグローバルマーケティングオフィサーを務めたジム・ステンゲル氏の著書『本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業』の中で、代表的な上場企業を比較するとパーパスドリブンな企業は4倍もの成長率を遂げていると示されていることからも、今やパーパスの重要さを認識していないマーケターはいないだろう。
「私自身は、パーパスはいわば『稼ぐエンジン』であり『ビジネスの燃料』と捉えています。これは自分だけでなく、社員、パートナー企業、そして顧客にとってのエンジンになると実感しています」(工藤氏)