実は、訪問型とリモート型の営業で「成約率」に大差はない
では、なぜ売り手側は、依然として訪問型営業を好むのだろうか。
訪問型営業のほうが好ましいと回答した売り手にその理由を尋ねたところ、「訪問営業のほうが成約率が高いと思うから」という答えが1位だった。しかし、訪問型営業のみを行っている組織とリモート営業を導入した組織の商談成約率の差分はわずか3ポイントで、調査では大きな差は認められなかった。
続けて訪問営業のほうが好ましいと考える理由第2位は、「訪問しないと誠意が見せられない」というもの。これについても、買い手側の意識とギャップがある。
買い手側に「どのような営業担当者に誠意があると思うか」を聞いたところ、「足を運んで対面で話してくれる」との回答は23.9%という結果に。「できないことを明確に伝えてくれる」「短時間で内容の濃い商談をしてくれる」といった要素のほうが高い評価を得る結果となったのだ。
ここまで共有した調査結果をまとめる形で亀山氏は、「もちろん対面でこそ可能になるコミュニケーションや信頼関係の醸成もあると思いますが、それは商談の内容の質や本質的な価値提供があってこそ威力を発揮するもの」とした上で、次のように続けた。
「コロナ禍によって半ば強制的にリモート営業の導入が進み、すでに買い手の意識は大きく変わりつつあります。売り手は買い手の変化に合わせて売り方を変えていく必要があるのではないでしょうか」(亀山氏)
医療・製薬業界でも高まるリモート営業のニーズ
ここからは、デジタルでの営業に取り組む2社がゲスト登壇。亀山氏が昨今の状況をインタビューした。
まず登壇したのは、製薬・医療機器業界でデジタルマーケティングを支援しているエムスリーデジタルコミュニケーションズの渡辺氏。一度目の緊急事態宣言以降、医療機関への訪問規制が強化され、担当する医師とコンタクトが取れないという課題に直面し、製薬会社でも急速にデジタルを活用しなければならない状況になったという。
同社は以前よりHubSpotを活用し、リモート支援、データ活用支援、資材制作の支援に取り組んできたが、コロナ禍でデジタルシフトへの流れが加速したことで、そのニーズが高まっていると渡辺氏は話す。
「当社は、情報提供手段をデジタルによって最適化するというミッションを掲げ、IT・映像技術・マーケティングを掛け合わせたソリューションを提供しています。まだまだ課題はたくさんありますが、HubSpotを活用しながら、製薬・医療機器業界のデジタルマーケティングを支援する会社として誇れる活動を行っていきたいと思っています」(渡辺氏)