一度撤退も、インハウスで再度挑戦
MarkeZine編集部(以下、MZ):バルクオムでは、TikTok For Businessを新規顧客獲得に利用していると聞いています。その背景について教えてください。
菊池:以前は、広告代理店経由でTikTokに出稿しておりましたが、その時は運用がうまくいかず撤退しました。そこで今回、広告運用のインハウス化を進める中で、新たに挑戦できるプラットフォームはないかと探していたところ、セルフサーブ型の「TikTok For Business」がリリースされたことを知りました。
セルフサーブ型であれば、自社でナレッジを貯めることができる上に、広告代理店経由の場合と比べ、施策の実行速度や目標CPA、予算などを調整しやすくなります。その上、TikTokのユーザー規模もどんどん拡大しており、広告配信プラットフォームとしてもアップデートを重ねて進化していたため、改めて新規顧客獲得を目的にTikTokにチャレンジすることを決めました。
他プラットフォームの知見を活かし、配信を最適化
MZ:今回はどのような配信設計を行っていたのでしょうか。
菊池:18歳以上の男性にターゲティングをし、夜の時間帯に配信を行いました。また、一度LPに来たことのある方は除外するなど、適宜調整しながら配信を最適化していきました。
MZ:一度LPに来た方を除外するのはなぜでしょうか。
菊池:今回の配信では無料サンプルをお配りするオファーを行っていたので、「初回接触の時点で無料サンプルに応募しなかった場合、2回目以降も確度が高くないのでは?」という仮説を持っていました。他の広告プラットフォームでも、同じ設計で上手くいっていたこともあり、TikTok For Businessでも同様の配信設計にしました。
MZ:他の広告プラットフォームでの知見を活かすというのは、インハウスならではのメリットですね。
TikTokのクリエイティブで大事なこととは?
MZ:今回の配信ではどのようなクリエイティブを展開していたのでしょうか。
菊池:クリエイティブに関しては、数多くの検証を行ってきました。最初はTikTokにはおもしろいコンテンツがたくさん流れている印象だったので、TikTokのトンマナに合わせたおもしろいコンテンツ風のクリエイティブを作りました。また、ホラーやゲームなどの要素を取り入れたクリエイティブも制作しましたね。
その他にも、TikTokの場合、音が重要になるので、ナレーションの声を男女で様々なパターンで録ってテストするなど、最初はとにかくTikTokの特性に合わせたクリエイティブを作っていました。しかし、これらのクリエイティブでは目標CPAに見合う成果が得られなかったんです。
MZ:プラットフォームのトンマナに合わせたほうが一見上手くいくと思ったのですが、ダメだったんですね。実際に上手くいったのはどのようなクリエイティブだったのでしょうか。
菊池:非常にシンプルではありますが、「アンケートにお答えいただくだけで無料サンプルを差し上げます」という内容を、製品画像を交えながら伝えるクリエイティブのCPAが一番良かったです。我々の製品の場合、TikTokのトンマナに合わせるよりも、シンプルな訴求が合っていたのかもしれません。
もちろん、先述の検証とはオファーの形も違ったので、一概にTikTokのトンマナに寄せたクリエイティブが良くないとは言えません。ただ、今回のようなオファーの場合だと、シンプルに訴求内容を伝えたほうが良いことが検証できました。
運用工数もかからず手軽に出稿できる
MZ:実際に運用してみて、TikTok For Businessの運用工数や設定のしやすさはいかがでしたか。
菊池:これまで、管理画面を直接触って運用することがほとんどなかったんです。その中で、TikTok For Businessに関してはアカウント立ち上げから行っていますが、特に困ることはなく、工数もほとんどかかりませんでした。
また、運用を始めたころは気になる点も多少ありましたが、アップデートによってどんどん便利になっていると感じています。
目標CPAを達成、他プラットフォームよりもCPCも安価に
MZ:実際に配信したことによって得られた成果を教えてください。
菊池:他のプラットフォームと比べてもCPCも安く、目標としているCPAで獲得ができています。CPAに関しては、目標の半分を切ることもありました。また、予算消化もきちんと行われる上に消化した分、獲得も伸びるので、新規獲得を増やしたいタイミングで予算を投下しやすいと考えています。
MZ:CPAが半分を切ったこともあるというのは相当な成果ですね。
菊池:正直最初は挑戦ということもあり、そこまでリソースを投じていなかったのですが、配信してすぐにCPAが半分以下で獲得できたので、一気にTikTokへの優先度が上がりましたね。
最近では、上司からも「今月まだ予算あるから、TikTokに予算を寄せようか」と相談を受けることもあり、自社のインハウス運用の中でも上手くいっている印象はあります。
MZ:今回は無料サンプルのオファーでしたが、そこからの購入はいかがでしたか。
菊池:アップセル率は他プラットフォームに比べると高く、3ヵ月おまとめコースに申し込まれる方が多いです。「若い方も多く、美容に対する意識も高いことが起因しているのでは?」と考えています。そのため、初回で3ヵ月コースをまとめて買うのは勇気がいると思いますが、美容に対してもきちんと投資する層が、TikTokのユーザーには多くいらっしゃると考えています。
メインの訴求をいち早く出すことが重要
MZ:今回の事例を通じて得られた知見・気づきがあれば教えてください。
菊池:TikTokでは、メインの訴求をいち早く出すことが重要だということですね。TikTok For Businessの担当者の方からアドバイスをいただいて得られた知見なのですが、冒頭1秒の表現を削ってすぐメインの訴求にたどり着くクリエイティブを配信したところ、他のクリエイティブよりも非常に良い数値となりました。それ以降いち早く訴求内容を伝えることは意識しています。
また、配信していく中でシャンプーであれば香りの訴求が効くなど、自社製品のどの部分にTikTokユーザーが興味を持っているのかは今回の配信でよくわかりました。
MZ:では、最後に今後の展望として、TikTok For Businessをどのように活用していきたいか教えてください。
菊池:現状よりも多くのクリエイティブを制作して、様々な訴求を試していきたいと考えています。クリエイティブのパターンを増やしていけば、その分コンバージョンが獲得できる可能性がTikTokにはまだまだあるはずです。そのため、今後は様々な訴求を仕掛けるテストマーケティング的な場としても、TikTok For Businessを活用していきたいです。
MZ:今回の事例では、TikTokらしいクリエイティブよりも、ストレートに訴求内容を伝えるというのが効果的だったというのが印象的でした。非常に参考になる事例だったと思います。菊池さん、貴重なお話をありがとうございました。