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MarkeZine Day 2021 Spring(AD)

コロナ禍でもLTVが115%アップ マーケ予算縮小の中「b→dash」で実現させた4つの施策

 「ノーコードによるCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)構築とクロスチャネルによる顧客アプローチにより実現した分析と施策とは」と題し、MarkeZine Day 2021 springに登壇したのは、フロムスクラッチの大薮悟志氏。同社のマーケティングプラットフォーム「b→dash」によるデータ分析とOne to OneマーケティングでLTVを115%改善した、とある企業の事例が紹介された。

コロナウイルスが売り上げに与えた影響 EC強化に活路を見出す

 フロムスクラッチの大薮氏は、マーケティングプラットフォーム「b→dash」のカスタマーサクセスに従事。導入社数は500社を超え、さまざまな企業で活用されている「b→dash」のコンセプトは、「ノーコードとAll in One」だ。

株式会社フロムスクラッチ Customer Success Unit Manager 大薮悟志氏
株式会社フロムスクラッチ Customer Success Unit Manager 大薮悟志氏

 企業内に点在するデータをすべて取り込み、SQLいらずのノーコードでデータの加工・統合ができるほか、CDPやメール配信、プッシュ通知からウェブ接客、レコメンドまで、データマーケティング施策に必要な機能がAll in Oneになっている点が特徴。店舗とECの両方を展開する企業にも導入が増えているという。

利用可能な機能の一覧
「b→dash」で利用可能な機能の一覧

 今回の事例に登場する企業もまた、全国に約20の店舗とECを展開しているA社。手芸用品などを扱う専門小売企業だ。

 はじめに大薮氏は、コロナ禍におけるA社の状況について説明した。

 「A社は2020年のはじめまで右肩上がりの成長を続けていましたが、少しずつコロナの影響を受け、店舗の売り上げが大きくダウンしてしまいました。対して、ECでは大幅に売り上げが伸長していたため、店舗売り上げ分のカバーも視野に入れ、ECの強化という経営判断を行いました」(大薮氏)

ツール費用とデータ準備の壁が施策を阻む

 しかし、多くの企業がそうであったように、コロナ禍の影響でA社もマーケティング予算の縮小は避けられなかった。そのため、広告施策による新規顧客獲得ではなく、既存顧客へのアプローチによりLTVを伸ばす施策を実施することに。

 そこで、A社が考案したマーケティング施策が以下だ。

  • 購入単価向上施策:購入履歴に基づいた併せ買い商品のクロスチャネル(メール、LINE)訴求
  • 購入単価向上施策:ECサイト閲覧中の商品に基づいた併せ買い商品のポップアップ訴求
  • 購入回数向上施策:カゴ落ち商品のクロスチャネルによるリマインド
  • 購入回数向上施策:店舗購入会員を対象としたEC限定クーポンの配布

 データをもとに練られたOne to Oneマーケティングの施策を打ち出したわけだが、ここでA社は、ツール費用の壁とデータ準備の壁という2つの壁にぶつかってしまう

 ツール費用の壁とは、施策実行に伴い必要になる、MAツールやLINE配信ツールなどの導入コストだ。これらを新規で導入する場合、年間コストは約2,000万円になるとわかり、そもそものマーケティング予算を超過してしまうことが判明した。

 一方、データ準備の壁とは、施策に必要なデータをそろえること。社内システム内に保持されていないデータの作成だけでなく、点在するデータを統合する必要もあった。

 このデータ作成・統合には、プログラミングコードのSQLを用いるが、A社のマーケティング部にはSQLを扱える担当者が不在。そのため、社内の情報システム部へ依頼するが、タスクの順番待ちとなり「マーケティング部の案件は2カ月後の着手になってしまう」と告げられた。ならばと外部ベンダーへ相談するも、かかる費用はタスク1回につき200万円。ツール費用と同じく、予算内では対応しきれない金額であった。

 このような状況下でA社は「b→dash」を検討。「ぶつかっていた2つの壁を越えられる」と導入を決定した。

 「『b→dash』は、データの準備である作成・統合をはじめ、アウトプットのMAやBI、ウェブ接客など幅広い機能を持っており、データ準備に伴うリソースやコストは不要です。なにより、ノーコードでマーケティング担当者が自らデータ加工できる点をご評価いただきました」と大薮氏は振り返る。

たった12クリックで、施策に必要なデータ準備が完了

 続いて、A社が具体的に「b→dash」を活用していくプロセスが共有された。

 「b→dash」では、機能を提供するだけでなく、大薮氏らカスタマーサクセス担当者がその活用も支援している。今回もデータ準備から施策の実行、モニタリングまで、LTVを伸ばすというA社のゴール達成をサポートした。

 まず、データ準備では「b→dash」の加工・統合テンプレートを活用した。大薮氏が例に挙げたのは、「併せ買い商品おすすめシナリオ」のテンプレートだ。テンプレート内に必要なデータが設計されているため、担当者はツールの案内に沿ってデータを選択していけばよい。「『b→dash』には、このようなテンプレートが約250種類用意されています。画面をクリックしていくだけで加工・統合が可能です」と大薮氏。

用意されているテンプレートの一部
用意されているテンプレートの一部

 また、施策対象者のセグメントも簡単に設定できる。前出のテンプレートに沿ってデータを準備した後、セグメント機能に付随する「併せ買い商品おすすめ」テンプレートを選択。このテンプレートにも施策に最適な抽出条件が設計されており、案内に沿ってデータを選んでいく。この時、セグメント条件のチューニングが可能だ。

 「併せ買い商品おすすめシナリオ」の選択からセグメントを設定するところまで、およそ12クリック。あとは、施策のシナリオに沿って、メールやLINE配信、ポップアップを表示させればよい。コンセプト通り、「ノーコードとAll in One」でA社が抱えていた2つの課題は解決した。

複雑なMAシナリオもテンプレートの選択で簡単に実行

 ここからは、「b→dash」を活用した施策の実行と、そのモニタリングが語られた。

 改めて、A社が計画していた施策を振り返ろう。

 施策の目的は、既存顧客のLTVを伸ばすこと。施策の方針は、購入単価の向上と購入回数の増加の2点。そして、4つの施策があった。

 まず、購入単価向上の施策は次の2つ。

 クロスチャネル訴求では、過去に購入した商品の上位商品を「おすすめ商品」としてコンテンツ化して配信した。「訴求の対象は商品購入者です。メール配信のタイミングは、EC購入後に商品が届き、利用して実感を得る14日後を想定しました」と大薮氏。

 メール配信後、一定の待機期間を置き、開封の有無をチェック。この時、メールを開封したが未購入の顧客には、続いて「最近購入した商品に関連する商品」を勧めるメールを配信。再び待機後、メール開封・未購入の顧客に最終的なプッシュとしてクーポンを配布した。

 大薮氏は、「母集団を絞り込んでクーポンを配布すると、無駄のない予算投資ができます」と話す。

 一方、メール未開封の顧客には、LINEでメッセージを配信。ここでも過去の購入商品を参考に上位商品や関連商品を勧め、購入の有無を見ながら、未購入の顧客にはクーポンを配布した。

クリックして拡大
クリックして拡大

 このような複雑なシナリオも「b→dash」にはMAテンプレートとして用意されている。分岐設定なども盛り込まれているため、担当者はコンテンツを差し替えるだけで理想のコミュニケーションを実行できる

一目で状況把握が可能なレポート機能で、PDCAを回していく

 商品購入回数の向上に対しては、次の施策を実行した。

 対象は、ECで商品をカゴに入れたものの未購入の会員。

 まずはEC訪問の翌日に「カゴに残っている商品があります」とリマインドのメールを送信する。メール開封の有無で分岐させ、商品未購入の会員にはカゴ落ちした商品の在庫数に合わせてメールを配信。在庫が10個未満の場合は「在庫が残り少ないこと」を、在庫が10個以上ある場合は「お買い忘れなく」のメッセージとともに、購入履歴を参考にしたおすすめ商品も訴求した。

 そして、一定の日数経過後に再び購入実績を確認。未購入の場合は、クーポンを配布した。この施策もメール未開封会員にはLINEでアプローチした。

 4つ目の施策、EC限定クーポンの配布では、会員がサイトへ来訪したタイミングで店舗購入の有無を判別。店舗購入の実績がある会員に対しては、ポップアップでEC限定クーポンを表示させた。

 以上の施策を「b→dash」のレポート機能でモニタリング。メール成果のレポートでは、配信メールのコンテンツごとに配信数、開封率、クリック数などが一覧で把握でき、そのメールが最終的な売り上げにつながったかも判断できる。

 「『b→dash』のレポートは施策別に振り返りやすくなっています。たとえば、開封率が低い場合、まずコンテンツの件名を改善する、次にコンテンツ内容を変えるなどのPDCAを回していきます」(大薮氏)

 また、月次LTV状況確認レポートでは、指標としていた平均購入回数と平均LTVを一目で把握できる。レポート項目をクリックしていくと年代別のデータを確認できるなど、詳細を追うことも可能だ。

カスタマーサクセス支援があってこその成果最大化

 では、今回の取り組みを経て、A社のLTVはどう変わったのか。

 今回は、LTV=初回購入から6カ月後の累計の購入金額(1人当たり)と定義。大薮氏曰く、2019年の10月ごろは6,115円だったLTVが、「b→dash」導入後の施策実行で7,032円と115%アップしたそうだ。

 また、得られた成果はLTVの伸長だけではない。大薮氏は「b→dash」導入が創出した価値を次のようにまとめた。

 まずは、A社の予算内で計画通りに施策を実行できたこと。「コロナ禍でマーケティング予算の削減がある中、さまざまな施策にトライしたいというご要望に応えることができました」と大薮氏。

 また、工数費用の抑制も成果として挙げた。社内エンジニアや外部ベンダーにリソースやコストを割くことなく、マーケター自身でデータ準備から施策の実行、振り返りまで完了できる。さらに、施策のPDCAをスピーディーに回せる点も大きなメリットだろう。

 大薮氏は、「『b→dash』は、プロダクトを提供して終わりではありません。カスタマーサクセスの部門でしっかりと施策の実施、分析までをサポートする体制を整えています」とまとめ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/35830