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MarkeZine Day 2021 Spring(AD)

PRせずとも開始10日間で5,000再生を突破!UGCを効率的に増やすAR活用

 顧客の購買プロセスにおいてデジタルコンテンツが与える影響は、新型コロナウィルス感染拡大を経て、ますます大きくなっている。顧客が興味を持ち、自ら共有したくなるコンテンツの表現とは? MarkeZine Day 2021 Springにおいてスターティアラボの山内大氏が、ARを使用した⾮接触型イベント施策、体験価値を活かしたSNS連携型の企画など、時代に対応した新しいプロモーション施策とその成功のポイントについて語った。

半数以上の顧客は来店前に心が決まっている

 顧客の購買行動にリアルとデジタルの境目がないといわれる昨今。たとえば、ある製品を知ったとき、SNSで詳細を検索し、そのあと店舗に見に行き、店舗では買わずにECサイトで買うというケースは多いだろう。

 企業のDX推進を様々なソリューションで支援するスターティアラボの山内氏は、こうした時代への対応として「リアルとデジタルを含めて顧客接点の頻度を保ち、価値を高めていくこと」が求められるという。

スターティアラボ デジタルプロモーション事業部 マネージャー 山内大氏
スターティアラボ デジタルプロモーション事業部 マネージャー 山内大氏

 こうした購買プロセスの変化は、ビジネスシーンにおいても起きている。旧来では展示会で会って名刺交換し、営業がアプローチして行くモデルが主流だった。山内氏の示す最近のデータでは、顧客の57%はオンライン上でSNSやコンテンツ、広告などの情報を取得し、ほぼ意志決定した状態で営業に接触してくるのだという(データ出典元:The Digital Evolution in B2B Marketing)。

 こうした背景からも「お客様と接触する前に、企業から情報を発信していくことがとても重要」と述べる山内氏。情報発信チャネルのなかでもSNSは、新商品の開発や自社ECでの販促強化など新事業の展開に有効だという。具体的には、未認知層、潜在層、比較検討層に広く浅くコミュニケーションを取り、まずは会社を知ってもらう。そして商品を検討してもらえるように情報発信し、ファンにしていく、という流れだ。

 さらに山内氏は、こうしたコミュニケーションのなかでユーザーが思わずクチコミしたくなる体験を創造するための技術に「AR」が適していると語る。

今やAR導入の3大障壁は解消されている

 AR(拡張現実)は、現実世界の写真や動画上に非現実的なものを見せる技術。ブームとなった「ポケモンGO」に使われていることでも有名だ。山内氏いわくAR/VRは市場としても非常に伸びており、2023年には1,606.5億ドル(約17兆3,000億円)に達すると予測されている。

 山内氏は同市場が伸びた最大の理由として、アプリをDLしなくてもARを楽しめるようになったことを挙げる。また、AR導入の3大障壁だったという「コストが高い」「自社でアプリ開発ができない」「アプリをDLしなければならない」が今や解消され、誰でも簡単にすぐ使えるようになったという。非接触が求められるコロナ禍でもARであれば施策を打つことができ、ユーザーもスマホひとつで参加できる環境になったことを強調した。

 こうしたなか、スターティアラボではアプリレスAR「LESSAR(レッサー)」をローンチ。アプリレスでありながらGPSで制限がかけられるなど機能がよりリッチになり、データログが取ることも可能になっている。施策を打つごとに効果測定ができ、しっかりとPDCAが回せるようになったと語った。

 実際、LESSARを使ったあるAR企画では、1日の再生回数1150回再生のうち、SNSの投稿率が19.7%と高い結果が出ている。スターティアラボが企画から参入すると平均15~16%の投稿率が担保できているという。

 「オンラインへのシフトによりオンライン展示会などが増えているが、ユーザーが受け身でコンテンツ動画を見て終わりというものも多い。その点ARは参加型の企画が実施でき、ユーザーが能動的に行動できるところがポイントです。ユーザーからのクチコミを生み出してSNS上でいかにインプレッションを最大化するかが重要だと思います」(山内氏)

コロナ禍のピンチはチャンスになった

 コロナ禍やパンデミックがAR市場の成長を加速させている面もあるという山内氏。コロナ禍での「人混みを避ける」「非接触」「自宅で過ごす」という3つのキーワードにおいても、ARなら新たな価値を生み出せると話す。閑散とした観光地域や公共の場に非接触でも楽しめるイベントなどを創り出すことができ、急増する巣ごもりのニーズに応え、自宅のなかのエンターテイメント性を高めるコンテンツも創出できるという。

 また、コロナ禍ではできなくなったことをARの活用で解決している事例もあるという。たとえば、化粧品業界で商品のテスターが置けなくなり試しづらい状況においても、ARを使用すれば自分の肌にのせたときの疑似体験ができる。またインテリア業界でも、ユーザーが自宅で家具や雑貨の設置イメージを見ることが可能に。サイズ感も実際に置くのと遜色がなく、自宅で部屋に置いた様子を具体的にイメージしてECサイトで購入できる。

DXの推進で逆境をはね返した企業の共通点

 スターティアラボでは、2018年にWebマーケティング事業を分社子会社化し「Mtame(エムタメ)」を設立。Mtameが支援してきたなかで発見したという成功企業の共通点は、「直近の売上を作る施策と中長期的に売上を底上げする施策の2つの軸を持ち、リアルからデジタルにシフトしていること」だという。山内氏は事例を基に説明した。

 1つ目は、大阪江坂にありB2B向け社内運動会を提案するバウンスクリエイティブの事例。リアル運動会を企画する会社ゆえコロナの影響を多大に受け、一時期予約はすべてキャンセルになったという。しかし、そのタイミングでいち早くオンライン運動会に舵をきりLPを改修、コンテンツ作成を実施し、オンラインにシフトした。  

 その結果、NHKなどのメディア取材があり、関東の大手企業からの問い合わせが急増するなど好調に。緊急事態宣言前後で比べると月間の問い合わせ件数が5件から23件と4.6倍に増加したという。

 2つ目の100均店舗向けに生活用プラスチック製品を扱うサナダ精工では、展開する商品「フタとま」がタミヤの「ミニ四駆」のケースとしてシンデレラフィットすることで爆発的に売れ、ミニ四駆業界のシェアを席巻している。同社では、ユーザーが見つけた意外な商品の使用方法から、商品開発を見直すこともあるという。定期的なSNSキャンペーンは、販促強化だけでなく新規顧客への足がかりにもなっており、既存顧客からのクチコミ投稿拡大施策にも取り組む

 また、芳武印刷のケースでは、2019年9月にサイトをリニューアル。最新のトレンドを取り入れて、検索評価されやすいように工夫したほか、コンテンツ発信のブログを新設し、月2~3記事をコンスタントに追加していった。コロナ禍のなか、抗菌印刷の視点からマスクのつけ方や保管方法をまとめた記事から爆発的にアクセスが伸び、アクセス数が前年比で140倍、月間の問い合わせが0件から98件に増加。ひとつのコンテンツの集客力、売上貢献の成功を体験した社長は、現在Twitterでの情報発信に尽力しているという。

芳武印刷のサイトアクセス数のグラフと施策実施の流れ
芳武印刷のサイトアクセス数のグラフと施策実施の流れ

 「次のフェーズとして、MAツールを活用したDX推進、流入した企業を可視化することによる効率的なアプローチにも取り組んでいただいています」と山内氏も意気込む。

UGC創出にARが活用される理由

 現在、ユーザーのクチコミやユーザーの手によって作られたコンテンツ(UGC)の増加を目的としたSNSの運用が増え、ARとSNSを絡めた施策が多いという山内氏。企業が直接ユーザーに情報を届けるのは広告と同じで情報の影響力が弱い。その点UGCは、第三者を介してユーザーに情報を届けられるため強い影響力を持つ。

 しかし、意図的にUGCを発生させるのは可能なのだろうか。山内氏は、それこそが「ARの得意なところ」だと話す。ARによる、見た目に驚くような顧客体験で「写真を撮って投稿したい」と思うきっかけを作り、ユーザーがSNSに投稿する。そのUGCを企業からリツイート、リポストすることで、さらにそれを見たユーザーによって新たなUGCが生まれるというのだ。

 山内氏は、SNSのなかでもアクティブユーザーが4500万人と多く、拡散性が強いTwitterの活用を勧める。「テキスト+画像」の投稿はデータドリブンの運用に適しており、参加者の顧客データも収集していけるという。

 広告費は長く運用していくとCPMが上がり、その広告予算を青天井で増やしていくのは難しい。「UGC、クチコミをいかに増やすかに注力していくと、広告費の削減にもつながります」と山内氏は請け負う。

 またクチコミ内容を踏まえて商品力を強化し、サービスの改善をすることで顧客の満足度を上げることにもつながるという。一方的に商品を宣伝して届けるのではなく、ユーザーから好意的に商品を手にして、さらにそれを拡散してもらえる状況を作っていくのが理想だ。

ユーザー参加で盛り上がるAR活用の最前線

 山内氏はAR活用によって成果のあった実際の事例も紹介した。

 くら寿司では、バナーをタップすると「AIまぐろ」が出現するARコンテンツを「#これがAIが選んだまぐろ」というハッシュタグとともに展開。公式のTwitterアカウントから、企画の内容、ユーザーのメリットなどを記したURLを投稿した。

 投稿を見たユーザーが興味を持ってURLをクリックするとLPに飛び、アプリレスでARを体験できる。実際にユーザー各々が自由な発想でSNSに写真を投稿し、反響を得た。

 敷島製パンの事例では、桜パッケージのサンドロールにQRコードをつけ、動画フォトフレームARを使った「おうちでエア花見」企画を実施。ユーザーがフォトフレームを利用して写真を撮りたくなる仕組みづくりで、PRせずとも開始10日間で5000再生、再生数からの撮影率は41.5%を達成した。ログを取得することで朝の時間帯5:00~10:00の閲覧率が32.2%とわかるなど、どの層がどの時間に参加したというデータも分析を可能にした。

 こうした施策に関して山内氏は「継続実施が重要」だと述べ、それはデータにも表れているという。同じ企画を同じ媒体で行った事例では、1回目の参加者は8266UUに対して2回目は12167UU。同じ企画だが、2回目のほうが1.5倍くらい多い結果となった。

 「ARの企画や時期など切り口を変えながらPDCAを回していくと、より御社のファンに参加いただけると思います」と山内氏は締めくくった。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/14 17:18 https://markezine.jp/article/detail/36018