デジタル人材が学ぶべきマーケティングスキルとは?
――コロナ禍による急速なデジタルシフトにより、デジタル人材の採用や育成を強化する企業が増えています。特にDXを進めるためには、マーケティング視点は欠かせません。津下本さんは、デジタル人材に必要なマーケティングスキルをどのように定義されていますか。
津下本:そもそもマーケティングで大切なことは、人やその生活をどう深く捉えられるかどうかだと思っています。たとえばコロナ禍で、一気にZoomやLINE通話といったオンライン会議や、Uberなどのデリバリーサービスが浸透しましたし、ECの利用率も増えました。このような変化を捉えてビジネスチャンスを見つけて、顧客体験をブラッシュアップできることが重要です。
そのためにどんな人材要件が必要かを未定義という企業が多いため、弊社の「コラーニング」では、必要なスキル要件を「マーケティングスキル50」と定義し、顧客の人材育成を推進してもらっています。
津下本:あわせて、マーケティングスキルだけでなく、ビジネススキル、コンピテンシーと3領域のスキルを共通スキルと定義し、ビジネスパーソンとして知っておきたい知識を網羅したプログラムを提供しています。
――ビジネススキルやマーケティングスキルは幅広く、こうして定義されていると、「今、どんなスキルが足りないか?」がわかりやすいですね。では津下本さんは、昨今語られている「デジタル人材」を、どのように捉えていますか。
津下本:弊社の株主である西口一希さんが、「世界は従来からの『物理世界(旧リアル)』と『デジタル世界(新リアル)』の2つに分断され、重なり合っている『パラレルワールド』と表現されていますが、ビジネスパーソンはどちらの理解も必要です。その上で、マーケティングにおけるデジタル人材とは、デジタルの世界で生活者が何をしているのかを理解し、必要なマーケティングの打ち手を考え、実践できるスキルを持つ人材ではないかと考えています。
――なるほど。各デジタルチャネルの変化を知り、自ら使ってみようとする姿勢をもっているかどうかも、重要なポイントになりそうです。
社員への教育投資がマストの時代に
――しかし、デジタル人材の採用は、難しいのが現状です。
津下本:マーケティングスキルを持った人材のニーズは高いですし、私たちが昨年、CMOクラスのマネジメント層に行ったアンケートでは、ほとんどの方が「人材不足」と回答しています。一方で、採用が難しい人材ですから、社内で育成しようの機運は感じますね。
――マーケティング部門に所属する人だけでなく、店舗やコールセンターで直接お客様と接し、顧客理解に長けている人たちも、マーケティングを理解したデジタル人材として活躍していくことは理想的ですよね。
津下本:はい。先が読めないVUCAの時代と言われていますし、必要な人材や求められるスキルも変動しやすいです。ですから、特定のスキルだけでなく、ビジネスやサービスモデルそのものを理解するマーケティングのコアスキルを得ることが必要だと思います。
実際にコラーニングは、マーケティング部だけでなく、様々な企業・部署で利用されています。事業全体でマーケティングリテラシーを上げる目的で利用されている例もあれば、自治体初の事例として栃木市が試験導入をスタートしたりしています。