マーケターが消える?マーケティングはビジネスの必須素養へ
――企業全体が、マーケティングのスキルを学ぼうとしているんですね。
津下本:特にセールス部門は、コロナ禍で対面営業が難しくなりました。SFAやオンライン商談ツールの使い方を知り、ホワイトペーパーを作ってリードナーチャリングをするなど、マーケティングの知識が前提の業務に変わっています。セールス部門がマーケティングを学ぶニーズは、より高まっています。
――セールスは、インサイドセールス/フィールドセールス/カスタマーサクセスと分類され、CRMの知識も求められるようになりました。
津下本:そうですよね。また、採用強化の文脈で、人事部がコラーニングを導入するケースもあります。今や応募者は、求人ページだけでなく、会社の口コミサイトや社員のSNSなども参考にしています。求人ページの運用にSEOの知識は必要ですし、Wantedlyでコンテンツを発信したい場合は、コンテンツマーケティングを知っておいたほうがいいですよね。
そもそもオンライン上のプロダクトだけでなく、すべてのサービスがPDCAを回して、提供価値の最大化を図ることが求められています。ものづくり=マーケティングと捉え、商品開発の部門やプログラマ、デザイナー職種の方にも、コラーニングを活用いただいています。
強い事業は、お客様と接点を持つすべての人が、顧客を理解し、その変化に基づいて改善を重ねていると思います。「マーケティングは、もはや必須のビジネススキルになっていく」と考えれば、将来的にマーケターの職種はなくなるかもしれません。

マーケティングスキルを上げ、共通言語を作る
――では、社内の人材育成をする上で、重要なポイントを教えてください。
津下本:まずは、チーム内のマーケティングスキルや知識をそろえることです。チーム内で理解度のズレがあると、会議が進まないとか、属人的になるなど、業務効率が悪いんですね。これを解決する方法の1つが、共通言語を作ることです。
――共通言語を作る。
津下本:そうです。たとえば、代理店にもコラーニングを導入いただいていますが、これもお客様との共通言語を作るためです。従来の代理店は、マス、SEO、アフィリエイト……のように、専門分野に特化した支援に強みをもっていました。しかし、デジタルへの理解を深め、デジタルを前提とした全体戦略を考えるお客様も増えてきました。そこで、代理店も広告だけでなく、ビジネス戦略から支援できるようにと、あらためてマーケティング全般を理解しようとする動きがあります。
――共通言語があると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
津下本:コラーニングは、チーム単位で進度をそろえ、同じカリキュラムに取り組みます。導入されているDMMさんによると、「業務が異なる担当者間で、コミュニケーションが活発になった」そうです。たとえば、SEOとSNSの担当者間でマーケティングの理解がそろっている状態を、共通言語がある状態と定義しましょう。実際に、業務の枠を超えて、「コラーニングでこんな事例がでてきたよね」と、能動的な意見交換が生まれていると聞きました。
――なるほど。知見の共有にもつながり、部分最適ではなく、全体最適のマーケティング施策が考えられますね。
津下本:個人のスキルが上がると、チーム全体のスキルも底上げされます。ですので、たとえば広告予算をマーケターの教育に投資する考え方もあるのではないかと思っています。一時的な広告パフォーマンス向上のために広告予算を増やすのではなく、その分を人材育成に投資する。すると、継続的に金額以上の付加価値を生むのではないでしょうか。