先進的な生活者「トライブ」から未来の生活者を洞察する
突然ですが、みなさんの周りにはこんな行動をとる人たちがいるでしょうか。「映画や動画は基本的に倍速で視聴する」「食事のほとんどを完全栄養食で摂取する」「70歳を超えてからダンスを始めた」「家を持たずに車やホテルだけで暮らす」。私たちSEEDATA(シーデータ)は、このように一見突飛な、しかし先進性のある行動を取る人たちを「トライブ」と呼んで創業以来5年にわたって調査してきました。その数は100トライブ以上、1,000人近くに登ります。
私たちがトライブを調査する理由は、先進的な生活者だからこそ感じられている生活への不満や課題を明らかにし、社会全体で顕在化する前にいち早く捉えることにあります。企業の商品開発や事業開発のサイクルは早くても1年以上かかることが多いため、今現れた課題ではなく、これから社会に現れるであろう課題を先見的に捉える必要があると考えています。本連載では、そんなトライブの先進的な生活とその背後にある価値観を、インタビューをもとにご紹介していきます。
第一回となる今回のトライブは、家事代行や食事のテイクアウトなどを活用してできる限り家事を外注する人々、「家事アウトソーサー」です。
家事代行に求められる「3つの外注」
調査を行った家事アウトソーサーとは、端的に言えば「家事の外注や自動化などを通じて徹底的に家事効率を高めている人たち」です。夫婦共働きが社会一般的に大きく割合を伸ばしていること、またコロナ禍を通じて在宅時間が伸びていることによる家事の総量(掃除や料理の回数増)を背景に、このトライブの調査を始めました。
家事アウトソーサーとは、具体的には家事代行サービスを積極的に活用することで、料理・掃除・洗濯などの家事を家庭外の他者に外注することを行う人たち、と定義しています。調査では計6名の家事アウトソーサーたちにインタビューを行いましたが、その結果、家事代行には大きく3つの外注の価値があることがわかりました。それは、「1、家事を行う労力の負担」「2、家事を考える時間の負担」、そして「3、家事に対する心理的負担」の3つの外注です。
1つ目の「家事を行う労力の負担」は一般的にイメージされる家事代行へ依頼する内容で、掃除、洗濯、料理などのタスクを依頼し、その内容を忠実に遂行してもらうことです。ただ、トライブへのインタビューではこの「家事を行う労力の負担」以上に、「家事を考える時間の負担」がむしろ生活者の悩みのタネになっていることがわかってきました。