チーム間の連携により実現した最新プロジェクト
――ローソンでは、6月から新しいお惣菜ブランド「マチのデリ」を関東近畿の1都2府4県でスタートされました。大谷さんがこのプロジェクトリーダーを務められたと伺っています。
そうなんです。まずは、様々な部署を横断してメンバーをアサインし、お客様がいま抱えてる課題を洗い出すところから始めました。そこで気づいたのは、コロナ禍での料理疲れです。1日3回、献立を考えて材料を買い、料理をして片付ける。これは想像以上に大変なことです。外食しておいしいものを食べたい、お出かけしてワクワク楽しみたいといった気持ちも、自粛中では募るばかりですよね。このようなお客様の困りごとを受け、「マチのデリ」が誕生しました。
マチのデリには、食べたいけれど自分ではなかなか作れない、おいしくて彩りのいいお惣菜が揃っています。“好きなものだけ、ちょっとずつ”気分や体調などに合わせて選んでいただくことができます。昨年から実店舗でテストを行い、ターゲットのお客様に喜ばれるメニューを準備してきました。コンビニは、常に新しい商品や話題の商品が並んでいて、どこかアミューズメントパークのような楽しさがあります。マチのデリの売り場も、いつものお買い物体験が楽しくなるような設計を考えました。まずは、関東と関西の都市部の店舗からスタートし、順次対象エリアを広げていく予定です。
そして、このプロジェクトは、本当にたくさんの部署のメンバーと一緒に進めてきました。みんながプロジェクトを自分ごと化して、各々のミッションを果たすべく取り組んでくれたと思います。たとえば、営業本部を代表してプロジェクトに参加していたメンバーは、営業部と共に、店舗のオーナーさんへ向けた販促として、マチのデリを企画した背景やおすすめの商品、売り場作りの方針などをまとめたビデオレターを制作し、プロジェクトメンバーの思いを各店舗へ届けてくれました。
やはり、1人でできることには限りがあります。関わるメンバー全員がリーダーのような意識で動いている姿を見て、すごいなと感動しましたね。
――プロジェクトを推進する際、メンバーを巻き込むコツなどありますか?
「なぜそれをやる必要があるのか、やらなければならないのか」の根拠となるファクトを示し、納得感を引き出すことです。お客様、社会、会社、社員、そして「あなた」にとって、どんなベネフィットがあるのかを明確にして、「やろう!」とみんなの行動を引き出すような共感を、熱意を持って作り出します。また、できるだけ早い段階で巻きこんでいくことも重要ですね。
風通しの良い組織づくりに必要なこと
――1人ひとりが自立して動きながらも、チームとしてまとまっている。まさに、チームワークの強さを感じます。大谷さんが組織変革を手掛けられて3年が経ちますが、どのようにしてチーム間の連携、コミュニケーションを強化されていったのでしょうか?
やはり、トップである経営陣が自らの姿勢を見せていくことに他なりません。マーケティング戦略本部の存在は、その明確なメッセージですよね。ローソンには率先垂範の言葉があり、社をあげて、あらゆるやり方で風通しを良くし、横と連携して働くことが推奨されています。上長が動かずに、「俺はやらないけど、お前はやれ」は、一番ダメです。上にいる人が率先して取り組まなければ、部下は変わりません。「背中を見せる」ではありませんが、とにかく上長から動きましょう。そうして風通しの良いプロジェクトがいくつもできてくると、日常の仕事でも連携し合うのが当たり前になっていきます。
もうひとつ、風通しの良い組織を作るためには、“話す習慣”も大事です。ワークショップなどをやり慣れてくると、誰かのアイデアを否定することは減っていきます。ですが、なかなか自分のアイデアを押し出すことには慣れない人がいます。ですが、他人のアイデアを否定しないだけでなく、自分のアイデアも否定してはいけません。そこで、話す習慣が重要になってきます。どんどん意見を出せる空気感を日常的に作っていくのです。
良いことと悪いことの両方をフィードバックし合う、ファクトをもとに話すことを習慣にする、定期的に1on1を実施するなど、チームを前進させていく要素はほかにもたくさんあります。すぐにはできなくても、話す習慣を大切にし、フェアなチームであろうと共通の認識を持つ。これを日常的に行えると、チームは加速的に良くなっていきます。
――終わりに、今後の展望をお聞かせください。
組織は生き物です。お客様が今抱えている課題を解決することはもちろん、コロナ禍が明け、その次の変化にも対応できるよう、マインドセットも進化させていかなければなりません。常にお客様視点でファクトに基づいた仮説を持ち、PDCAを回し続ける。時代を先取りするような組織でありたいですね。そのためにも、会社全体でT型リーダーが活躍できる環境を整えることが必要です。まずはマーケティング戦略本部から、その波及効果を広げていきたいと考えています。
