20代後半~50代の「働く女性」がメインターゲット
MarkeZine編集部(以下、MZ):石川さんにお聞きします。御社が運営されている「airCloset」がどういったサービスなのか、お話しいただけますか。
石川:月額制でスタイリストが選んだ洋服をレンタルできるサブスクリプションサービスとして、2014年に開始しました。届いた洋服を返却すると次の洋服が届き、気に入った洋服は購入することもできます。お客様は20代後半~50代の女性と幅広く、働く女性が9割以上を占めています。
MZ:エアークローゼットでは、デジタルマーケティング戦略のパートナーとしてワンスターと手を組み、サービスの訴求に取り組んでいるとうかがいました。具体的な取り組みの前提として、ワンスターと協力に臨んだ背景について教えてください。
石川:決め手は「コンテンツの制作力」と「サブスクリプションモデルの支援実績」でした。ワンスターさんには、健康食品・化粧品分野で多くの記事広告を制作しながら培ってきた「勝ちパターン」を作り上げるためのノウハウがあります。また、健康食品・化粧品は定期購買モデルが多いので、当社との親和性が高いと考えました。ノウハウを共有いただき、潜在層にアプローチしていきたいという狙いがあったのです。
他媒体で検証した勝ちパターンをLINE広告に投下
石川:より課題を深堀りすると、まずは検索連動広告などを使って効率よく顕在層にリーチしていくことも大事ですが、それだけではユーザーに広がりが出ません。事業成長に伴い潜在層にもアプローチする必要が出てきたタイミングで力を発揮するのが記事広告だと考え、ワンスターさんを頼りました。
MZ:ワンスターの協力の下、2018年からLINE広告の運用を開始されたそうですね。LINE広告を始めた理由はどういったものでしたか?
石川:2018年からLINE広告を始めましたが、本腰を入れて展開したのは2020年夏からになります。当時はほかのSNS広告もやっていたのですが、どれが当たるかはPDCAを回して見ていく必要があったので、ワンスターさんと相談していろいろ試していた段階でした。というのも、airClosetの場合、単純にバナーを置いてランディングページに誘導して、それでコンバージョンするというのは、なかなか難しかったからです。
airClosetは新しいサービスなので、潜在層の方にはまず「airClosetとはどういうサービスなのか」を知っていただく必要があります。そこで、「単純にバナーからLPへ誘導するのではなく、情報量が多い記事広告を通じてサービス内容を理解いただいてからLPに誘導した方がCVにつながるのでは」と考え、記事広告に強いワンスターさんと一緒に広告戦略を練りました。こうした戦略を前提に、山田さんから「LINE広告はフィード面が多彩で拡張性もある」とのアドバイスをいただき、LINE広告の運用を始めたのです。
山田:最初は出稿リスクの低い媒体でクリエイティブを検証し、良いクリエイティブができたら満を持してLINE広告に出して大きくリーチをとっていくという戦略で運用しました。現在は多少状況が変わり、最初からLINE広告に出すこともあるのですが、当時はLINEのリーチ力を十分に生かすために、効果的なクリエイティブをじっくり見極めてから始めるというスタイルを採用していたのです。
桑原:LINEは国内の月間利用者数が8,900万人(2021年6月時点)と、多くのユーザーが毎日使うサービスであり、他のSNSではリーチすることのできないユーザーに対しても積極的に広告配信を行うことができます(出典:LINE Business Guide)。airClosetのターゲットは20代後半から50代の女性とかなり広いレンジですが、LINE広告は8,900万人が利用するLINEに出稿できる広告配信プラットフォームなので、ターゲットの抜け漏れを少なく、多くのユーザーへアプローチすることが可能と考えられ、好相性と言えます。
記事でファッションニーズを喚起
MZ:2020年夏から本格的にLINE広告の運用を開始されたそうですが、どのような戦略で進められたのでしょうか。
山田:「airClosetの潜在顧客にリーチ」し、「無料/有料登録していただく」という点を最終ゴールに置いていました。ただ、airClosetを知らない人たちにサービスを知ってもらい、さらに登録を促すとなると、コミュニケーションをうまく設計できなければCPAが合わなくなる恐れがある。そのハードルを、クリエイティブとメディアの力を活用することでクリアし、市場を拡大していくことが私たちのミッションでした。
具体的な施策として、2つの広告を実施しました。1つは記事広告、もう1つはアンケート広告です。
まずは記事広告を中心に展開しました。記事の目的は「潜在層へのニーズ喚起」。「服・ファッションについて悩んでいる」というより、「そういう悩みを潜在的に持っているけれど、自分のニーズに気が付いていない」という方に「気付き」を促すものです。第三者的に「かわいく着こなしたいですよね」「こういう理想像に近づきたいですよね」というメッセージを発信し、ニーズが顕在化したところで「そのための手段としてairClosetが有効」だと伝える内容にしました。
高精度の仮説検証でターゲティング機能の成果を最大化
MZ:もう1つのアンケート施策についても教えてください。
山田:2021年3月~4月に、記事広告よりもライトな施策としてアンケート広告を実施しました。記事を読み込む手間がなく、アンケートに答えるだけで割引クーポンなどのお得な情報をもらえるので、記事が刺さらなかったユーザーをカバーできると考えたわけです。
この施策には2つの狙いがあります。1つは、「アンケートに答える」というユーザーの能動的な行動を引き出すこと。もう1つは、airClosetに登録しない理由をユーザー自身で潰していってもらうことです。アンケートの内容は「ファッションに関する悩みを回答する」というものなのですが、回答していくうちに「その悩みを解消したいならairClosetに登録しない理由はない」と思えるような設計を意識しました。
MZ:記事とアンケートの配信には、LINE広告のターゲティング機能を活用したと伺いました。
山田:最初は、LINE広告の「類似配信」機能を使って配信しました。ただ、類似配信はCPAを抑えるのに効果的ですが、どうしても拡大に限界があるので、デモグラ情報を活用した拡張施策を考えたのです。そこで、LINE広告の「LINEターゲティング配信」機能を活用することにしました。
airClosetのターゲットは「忙しいビジネスウーマン」です。まとまった月額費用を支払える経済力がある人でなければコンバージョンしにくいという仮説のもと、LINEターゲティング配信の属性セグメント(みなし属性※)で、「年収が上位50%の女性」に絞ってターゲティングを行った結果、うまくはまりました。
加えて、経済力のあるビジネスウーマンを確実に狙うためには、一定以上の年代で区切った方が当たる確率が高くなると考え、「30代以上」に設定したところ、こちらも目論見通りの成果に結びつきました。
※ユーザーがLINE上で購入・使用したスタンプや興味のあるコンテンツのほか、どのようなLINE公式アカウントと友だちになっているかといった傾向を基に分析(電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容などの機微情報は含まない)したもの。なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っていない。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主など)への提供は実施していない。
桑原:LINE広告には、類似配信やLINEターゲティング配信のほか、「オーディエンス配信」など様々な配信機能があります。類似配信は、類似の度合いを1~15%の範囲内で、1%単位で決められるため、切り口によってオーディエンスのボリュームを調整することが可能です。
細かく設定できるからこそ、代理店やマーケティング担当者による仮説が重要なのですが、ワンスターさんの場合はそうした仮説検証や配信設定にずば抜けて高いスキルを持っており、繰り返しテストして最適解を素早く見つける体制が整っているのだと思います。
パフォーマンスは3~4倍、長期的な顧客育成にも高い効果
MZ:記事広告とアンケートについて、どのような成果があったのでしょうか。
山田:記事広告では、CPAを目標値の-25%と大幅に抑えることができました。あわせて、従来の広告施策の3~4倍もの認知を得ることができました。
石川:当社としても、CPAが合ってさえいれば、できるだけ獲得したいという思いがありました。記事広告の勝ちパターンを作れたというのは大きな成果だったと思います。
また、デモグラ情報を使ってボリュームを拡大しながらターゲットにしっかりリーチできたのも良かったです。LINEのような大きい媒体で勝ち筋が見つけられると、獲得件数が増やせるだけでなく、「次の春はもっと会員が増えそうだから在庫を増やしておこう」というように事業自体の見通しが立てやすくなるというメリットも感じられますね。
単なる支援会社ではなく「同じチームの一員」として協力
MZ:正しい仮説や勝ちパターンを見極めるにあたり、山田さんが普段から意識されていることはありますか?
山田:「クライアントに情報を共有してもらうこと」でしょうか。クリエイティブを作る際は、感覚ではなく“ファクト”をベースにしているので、できるだけ内部の数字もしっかり出していただいた方が、より成果の高いクリエイティブや施策を作れるようになると思っています。
「外部の人間に数字や会社の内情を出すことはできない」と思われるかもしれませんが、だからこそクライアントとのチーム感は常に意識しています。私は石川さんと一緒に「airClosetでアパレル業界のゲームチェンジをしたい」という思いがまず根底にあり、同じマーケティングチームの一員のような気持ちで普段からあらゆる数字やビジョンを共有いただくようにしています。そうすることでボトルネックが把握でき、CPA以外の課題であってもそれを一緒に解決していくことで、結果的に成果の高い施策を実現できるんです。
MZ:最後に、皆様の今後の展望をお聞かせください。
石川:今回は一定の成果が出ましたが、まだまだ「やりきった」というフェーズまでは到達していないので、今の体制や戦略で引き続きしっかり進めていくことが第一だと考えています。そして効果を上げるには「PDCAをどこまで回せるか」がポイントなので、コミュニケーションの方法を改善し、ワンスターさんとマーケティング戦略を共有しながらスピードを上げていきたいと思います。
山田:石川さんがおっしゃるとおり、一定の成果を出せるようにはなりましたが、一方で、いろんな課題も見えてきました。そうした課題に対し、クリエイティブや運用面で総合的にPDCAを回して「量と質の維持・拡大」に努めたいと思います。
桑原:広告面の拡充や重要な広告面の変化など、LINE広告にはトレンドがあります。そうしたトレンド情報を共有しながら、クライアントに貢献できる提案を続けていきます。