EC化率を57%まで伸長したSephoraのデジタルシフト
2,700以上の店舗とオンラインストアを35カ国に展開するSephoraは、「優れた店舗体験」「会員アプリを軸に提供するロイヤルティプログラムやコミュニティ」「SNSを有効活用したインフルエンサープログラム」などの幅広い接点で顧客との関係を構築しながら成長しているが、コロナ禍では90%の店舗が閉店を余儀なくされる事態となった。この危機を救ったのが、デジタルでの顧客とのつながりだという。
スリーダララジ氏が「最大のチャレンジだった」と述べるリモートワークへの即時対応を実施。75万回以上のウェビナーを通じ、3.5万人のスタッフにデジタルを活用して顧客と向き合う方法をレクチャーした。
同氏が「かつて“nice-to-have(あれば良いもの)”だったデジタルチャネルは、すでになくてはならないものになっている」と力説するように、アプリやSNSを軸にコミュニケーションを取ることで構築していた高いEC化率(2020年初期で34%)が、店舗閉店時の売上や再開後の売上を支え、2020年後期ではEC化率を57%まで伸長させた。
コロナ禍で顧客の行動がデジタル中心に移行したことを見れば、サイトのABテストをすばやく繰り返し実施するのは当たり前の取り組みなのだろう。
CXMを支えた「データ」「マインド」「スキル」「ツール」
Sephoraでは、買い物をする場としてオンラインのニーズが高まったことを受け、商品に素早くたどり着くナビゲーションのデザイン変更や、従来は店舗で対応してきた悩みを相談したいユーザーのオンライン対応を実施。従来から持つスカルプケアやドライスキンなど、顧客それぞれの悩みに区分けされたコミュニティへの誘導を強化し、商品を理解・納得できる購買体験を提供するなど、顧客データとデジタルを活用して戦略的にサイトを改善し続けた。
スリーダララジ氏はプレゼンテーションの最後に、次の6つのノウハウを発表した。
1.常に顧客を中心に考えたアプローチを、自社の強みを使って差別化できることで行う
2.シナジーが生まれるパートナーと組み、新しい強みを作って一緒に勝つ
3.マインドセット、スキルセットを変えたのちにツールを選定する
4.素早いテストと顧客理解を行い、迅速に拡大する
5.「短期的な目標」と「長期的な戦略」の両方を持つ
6.競合の視点で戦略を立てる
つまりSephoraは、ロイヤルティプログラムやコミュニティなど、企業の強みである顧客接点から得られる“データ”があり、それを活用する従業員の“マインド”や“スキル”を磨き、使いこなせる“ツール”を準備した。これによって、コロナ禍のような非常事態が起きても、その状況に合ったCXMを繰り返し実行することが出来たのである。