瞑想の効果とGoogleの業績の関係
Googleをはじめ、シリコンバレーの多くの企業は積極的に瞑想を取り入れている。瞑想でマインドフルな状態を維持できれば、社員のパフォーマンスが向上し幸福度が増す。幸せでポジティブな社員が増えれば増えるほど、Googleの業績も伸びる。私がGoogle在籍中に聞いた話だが、瞑想の効果とGoogleの業績の関係は数値で測れるらしい。
「じつは、脳の中の幸せの度合いを測定する方法がある。左の前頭前野と右の前頭前野の特定領域で活性化の度合いを比べればいい(2)。左の前頭前野の活性化の度合いが相対的に高い人ほど、喜びや熱意、活力といったポジティブな情動を多く報告する。その逆も言える。右の前頭前野の活性化の度合いが相対的に高い人は、ネガティブな情動を報告する。」
出典:『サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』チャディー・メン・タン,一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート 著
Googleには、数学や物理学、コンピューターサイエンスなどの博士号を持つ社員が数多くいた。彼らは、私の知る限り、Googleの業績のことなんかまったく気にはしていない。彼らは、たとえば、量子コンピューターなどの新しい理論や技術について夢を語り、目の前の課題に知的に興奮していた。Googleの業績のために仕事をしている訳ではない。少なくとも私にはそう見えた。それでも、いや、だからこそ、彼らの仕事はマインドフルで、Googleの業績を急激に押し上げたのだと思う。
岡潔氏は、数学の本質について、書いている。
「数学の本質は禅と同じであって、主体である法(自分)が客体である法(まだ見えない研究対象)に関心を集め続けてやめないのである。」
出典:『春風夏雨(角川ソフィア文庫)』岡 潔 著
主体が客体に関心を集め続けてやめない。それは、自由意志の働きで精神が集中している状態を指す。マインドフルなとき、禅の修行をするとき、数学の本質に到達する。自由意志の働きが、単なる一流から超一流への飛躍をもたらす。岡潔氏が見抜いた数学の本質。それは、王貞治氏や大谷翔平選手の超一流の秘密と同じだ。
これを昭和の精神論と一蹴する人もいる。だが、科学がその効果の証左となっている。
「科学的な証拠がある。神経画像研究者のジュリー・ブレフツィンスキー ルイスらによる興味深い研究によってわかったのだが、瞑想の達人(一万時間以上の瞑想修行を終えた人)たちにネガティブな音声(たとえば、女性の悲鳴)を聞かせると、桃体と呼ばれる情動的な脳の領域が、未熟な瞑想者と比べてあまり活性化しなかった(14)。そのうえ、瞑想修行に長い時間をかけてきた達人ほど、桃体の活性の度合いは低かった。」
出典:『サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』チャディー・メン・タン,一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート 著
1996年から約4年間、私は米国西海岸にいた。留学後、そのままサンフランシスコのネット企業で働いたのだ。その頃から既に、シリコンバレーでは多くのインド人が働いていて、ヨガや禅が流行していた。
スティーブ・ジョブズも例外ではない。実際にインドに訪問し瞑想を学んでいる。
「インドに行く前からサンフランシスコの禅センターに顔を出していた。そして帰国後は、知野弘文老師が開く俳句禅堂に通うようになった。ジョブズは、弘文を生涯の友とするようになる。座禅による瞑想と集中は、ジョブズの創造性を生み出したと考えられる。また、余分なものをそぎ落とし、シンプルさを求める禅の美意識はアップル製品のデザインにも投影されることになったと考えられるのである。」
出典:『天才を生んだ孤独な少年期 (新曜社)』熊谷高幸 著