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リゾームマーケティングの時代

クオンタム思考へのいざない 大谷翔平とスティーブ・ジョブズの共通項

 あらゆるものを疑い、ゼロベースで考えなおす「クオンタム思考」。そこへたどり着く、有園雄一氏の思考の変遷を紡いだ本コラム。数学者の岡潔氏からメジャーリーガーの大谷翔平氏、スティーブ・ジョブズ氏らまで、その共通項とは?

自由意志を強くする実践方法

 ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹氏や朝永振一郎氏らが「物理学の授業よりもよほど刺激的だった」と評した講義がある。世界的な数学者、岡潔氏の授業だ。

 その岡潔氏が、1964年(昭和39年)の巨人軍に苦言を呈している。「勝つときはかさにかかって大きく勝つが、負けるときはだらしなく負けてしまう」というのだ。

 「九回の二死後から一球一球選んで勝負を顚倒させるのは自由意志である。球を打つのは知覚、運動二作用の総合動作だから、非常な精神集中がいる。ここというところでよく打つのは自由意志の働きである。ぐっと踏みこたえるのはもとより自由意志の働きである。この意志力は使われることによってのみ発育して強くなる。そのとき、大切な心得は、自主的に意志力を働かすのでなければダメだということである。」

出典:『春風夏雨 (角川ソフィア文庫)』岡 潔 著

 つまり、自由意志が弱いというのだ。自主的に意志力を働かす。それができていない。だから弱いんだ、とダメ出しをしている訳である。

 王貞治氏が巨人軍に入団したのは、1959年(昭和34年)。今では信じられないが、入団から5年間ほどは思うように成績があがらなかった。「王は王でも三振王」とヤジられていたりした。本人も認めている。「高校からプロ野球に入って二年目、三年目の選手としては、まあまあだったと思うんですが。」(参照:『動じない。 超一流になる人の心得』王貞治 広岡達朗 藤平信一 著)と。

 つまり、後に世界のホームラン王になるとは、誰も思っていなかった。岡潔氏にいわせれば、自由意志が弱く、自主的に意志力を働かす訓練ができていない。一本足打法が完成する前の王貞治氏はまだ、超一流ではなかった。

 では、なぜ、王貞治氏は変わったのか? 彼の飛躍の秘密はなんだったのか?

 メジャーリーガー大谷翔平選手は、王貞治氏の飛躍の秘密を研究したはずだ。だから、彼の愛読書は、中村天風氏の『運命を拓く』なのだ(参照:「大谷翔平もその書を愛読 思想家・中村天風の説く「哲学」とは?」)。

 『動じない。 超一流になる人の心得』の中で、一本足打法完成への鍛錬と、その背景にある中村天風氏の思想、その流れを汲む「心身統一合氣道」について紹介されている。

 「心身統一法」や「氣」の使い方、その妙を身体に覚え込ませる。その妙技が、一流から超一流に飛躍する秘訣だ、と。

 臍下丹田(王貞治氏は「臍下の一点」という表現を好む)に氣を集中し、無駄な力を抜き、心身を統一する。私なりに解釈すれば、それが、自由意志を強くする実践方法だ。自由意志が強くなれば、まさに、自由が手に入る。制限も限界もない。極論すれば、自由になんでもできるようになる。

 中村天風氏は、数多くの実践的方法論を独自に編み出した。その中で、多くの人に効果があるのは、おそらく、「安定打坐(あんじょうだざ)」だろう。

 「安定打坐」を知らない人は多いと思う。これは瞑想法の一つであり、最近の言葉でいえば、マインドフルネスだ。マインドフルな状態を意図的に作ることができるかどうか。一流から超一流へと飛躍する秘密が、そこに隠れている。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2021/08/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/36927

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