ヒットに欠かせない「継続的な工夫」と「独自価値の提案」
MZ:ゲームアプリのマーケティングが持つ特徴や課題を教えてください。
ペティ:競合が多い点が特徴であり、課題だと感じます。アプリストアには無数のゲームが並んでおり、その中でいかに自社のアプリをアピールするのか、常に考える必要があります。
また、うまくアピールできてお客様がダウンロードしてくれたとしても、継続してもらうためにはさらなる工夫が必要です。今年で10周年を迎えた弊社アプリのポケコロは、10年間のプロモーションでほぼすべての訴求軸を試してきました。
佐藤:同じエンタメコンテンツでも、映画の場合はその時に上映されている他の作品との勝負になりますが、ゲームの場合は10年選手もいれば新規参入もあります。これほど競合が同時多発的にある業界は珍しいです。ゲームの提供企業は独自の価値を提案するUSP(Unique Selling Proposition)のようなものを磨いておかなければ、ユーザーがすぐに離れてしまいます。
ペティ:ポケコロは「可愛い着せ替えアバターアプリ」として知られていますが、なかなかそのイメージから抜け出せずにいます。10年間運営しているサービスなので、新しい層を獲得するためにどうアピールするかだけでなく、アプリの内容を変えていくことも含めて取り組む必要があると感じています。
積極的なインプットと変化への適応能力が求められる
佐藤:ゲームがたくさん存在するということは、お客さんがたくさんいるということでもあります。先発・後発を問わず“勝っている”ゲームは、差別化ができているんです。
差別化で大切なのは、まずプロダクトの中身を磨くこと。だからゲームアプリは開発が重要で、開発チームの立場が強くなります。差別化をするためには、開発段階においてもマーケティングが重要です。つまり、マーケターは開発段階からアプリに貢献することが求められているのです。
魅力の差別化ができれば勝てる市場なので、ゲームアプリのマーケティングはやりがいがあります。簡単ではありませんが、諦めてはいけないポイントなので、関係者が全員でやり抜くべきだと思います。
ペティさんが「全ての訴求軸でプロモーションを試した」とおっしゃいましたが、論理的に導き出せるというフェーズはもう終わっており、クリエイティブな要素が求められてきたと感じます。
クリエイティブネスはプロダクトから生まれる部分も大きいので、マーケターが一般的な職務領域でコントロールするのは難しいところでもある。「マーケターが自分のエリアを広げていかなければ差別化は作れない」というのは、ゲームアプリ以外のジャンルでも聞かれるようになりました。
MZ:いまお話しいただいたような課題を考慮すると、ゲームアプリのマーケターに求められる資質はどのようなものだとお考えですか?
ペティ:ゲーム業界はトレンドの移り変わりが早いです。ARや5Gなどの先端技術があり、それらを利用できる最新のスマートフォンに向けてゲームを作っているからです。競合やお客様の気持ちも常に変化していますし、プロモーション手法の幅もどんどん広がっています。
そのため、ゲームアプリのマーケターには高い適応能力が求められると思います。トレンドを把握し、記事や事例を読み、人と話し、情報をキャッチアップする。そういうアクションを起こせる人が向いているのではないでしょうか。アウトプットも大切ですが、そのためには常にインプットすることが非常に大事です。