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LINE広告活用術(AD)

新規集客の30%がLINE広告経由!半年でCV数を8.4倍にしたスナックミーの運用ノウハウ

 おやつのサブスクリプションサービス「snaq.me(以下、スナックミー)」は、2015年の創業以来、製品を軸とした堅実なマーケティングでユーザー数を伸ばしてきた。そんなスナックミーがさらなる新規顧客の獲得を目指し、LINE広告の本格運用を開始したのが2020年。以来、精緻かつスピーディーなPDCAにより、高い成果を上げているという。スナックミーのマーケティング全体を指揮する尾﨑敬祐氏に、LINE広告の活用について話を聞いた。

「継続率」と「新規獲得数」をKPIに、スピード感のあるPDCAを実行

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめにスナックミーの事業内容をお聞かせ下さい。

株式会社スナックミー Marketing 尾﨑敬祐氏
株式会社スナックミー Marketing 尾﨑敬祐氏

尾﨑:当社は、おやつの定期便サービス「スナックミー」をメイン事業として展開しています。味へのこだわりはもちろんのこと、保存料や着色料といった添加物は一切使用していません。お届けする製品は、お客様に事前に回答いただく「おやつ診断」や食べたおやつへの評価、リクエストなどの情報をもとにAIが一人ひとりの好みを分析して選定しています。「今回はどんなおやつが届くんだろう?」というワクワク感も一緒にお届けすることが、我々のサービスの重要な軸です。

100種類以上から8つのおやつを一人ひとりにパーソナライズして届ける「snaq.me」
100種類以上から8つのおやつを一人ひとりにパーソナライズして届ける「スナックミー」

 また、お客様の95%が女性という点も特徴です。20代後半から30代がボリュームゾーンですが、基本的には若年層から高齢層まで幅広い世代にご利用いただいています。

MZ:続いて、スナックミーのマーケティング戦略について教えて下さい。

尾﨑:マーケティングでは、「継続率」「新規獲得数」の2つのKPIを重視しています。月額定額制のサブスクリプションサービスなので、より重要視しているのは継続率です。継続率を伸ばし、解約率を抑えるには、やはりプロダクトであるおやつの質や満足度が重要です。そのため、まずは製品を第一に考えて、良いものを誠実に作り、そしてサービスを改善する――この2つを地道に積み重ねています。新規顧客の獲得については、獲得経路を広告とオーガニックに分けて考えており、広告はLINE広告をはじめとしたデジタル広告を中心に出稿しています。

MZ:その中で尾﨑さんはどのような業務を担当されているのですか?

尾﨑:私は2020年3月にマーケティングディレクターとして入社しました。現在マーケティングを担当しているのは社内で私のみで、新規顧客の獲得から認知拡大・ブランディングまでを担いながら、製品開発やカスタマーサポートにも横断的に参加しています。社内にデザイナーもエンジニアもいるので、戦略に基づいてすぐ実行に移せたり、クリエイティブを細かく検証できたりと、スピード感を持って動けるメリットを感じています。

本格運用から1年、今では新規獲得の30%がLINE広告経由に

MZ:LINE広告を導入した背景についてお聞かせ下さい。

尾﨑:LINE広告を本格的に運用し始めたのは、私がスナックミーに入社した2020年3月ごろです。新規顧客の獲得数を増やすにあたって、広告の出稿先を広げる必要があり、LINE広告を導入しました。なお、LINE公式アカウントはスナックミーの創業から間もない2016年3月に開設していました。

MZ:LINE広告ではデータを活用した高度なターゲティングが可能ですが、スナックミーではどのように運用されていますか?

尾﨑:現在は大きく3つの配信機能を活用しています。1つは、LINE側の保有する年齢・地域・性別・興味関心などの「みなし属性(※)」であるオーディエンスデータを用いた「LINEターゲティング配信」。当社では、25歳以上の女性ユーザーをターゲットに広告を配信しています。

 2つ目に、Webサイト上に設置したLINE Tagから取得したユーザーのオンライン行動データを基に、より精緻なターゲティングが行える「オーディエンス配信」でリターゲティングをしています。そして3つ目が、当社の保有する電話番号やメールアドレスなどのオーディエンスデータに類似するLINEユーザーを見つけ出し、広告を配信する「類似配信」です。

MZ:本格運用を始められてから1年、現在どのような成果が出ているのでしょうか?

尾﨑:LINE広告経由の新規獲得は全体の5%未満であったのが、現在30%に伸長しています。ターゲット層以外にも40代・50代の新規顧客も獲得できているため、他媒体ではアプローチできていなかった層にもリーチできていると考えています。配信開始から半年でCV数は8.4倍に伸長するなど、全体の新規獲得の底上げにつながっています

(※)ユーザーが「LINE」上で購入・使用したスタンプや興味のあるコンテンツのほか、どのようなLINE公式アカウントと友だちになっているかといった傾向をもとに分析(電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容などの機微情報は含まない)したもの。なお、属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っていない。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主など)への提供は実施していない。

精緻なPDCAより得られたLINE広告運用のポイント

MZ:広告のクリエイティブについて、工夫されていることを教えていただけますか?

尾﨑:広告のクリエイティブは、細かい検証を重ねてきました。たとえば、静止画のクリエイティブの場合は、カメラマンが撮影した綺麗な構図のものより、ユーザーがスマートフォンで撮影したような親近感のある写真のほうが、CTR(クリック率)が3.6倍と圧倒的に高くなりました。配信面のひとつであるLINE NEWSは報道写真が多い傾向があるため、こうした親近感のある写真が逆にユーザーの目を引くのではないかと考えています。撮影工数やコストも抑えられるので、我々のようなスタートアップ企業にとっては有難い傾向でした。

 またテキスト要素であるクリエイティブのタイトルについては、機能訴求とベネフィット訴求の2つのパターンで検証をしてきました。機能訴求とは、「毎月届く自分専用のおやつの定期便」「届く時のワクワクをお楽しみ下さい」というように、プロダクトの機能や魅力の紹介に軸を置いたタイトルです。一方、ベネフィット訴求は「私がコンビニのおやつを買わなくなった理由」など、プロダクトによってユーザーが得られる具体的な変化や効果を軸にしたものです。

 この2つで検証したところ、ベネフィット訴求のほうが機能訴求よりも新規獲得率が約2倍高くなることがわかりました。自身の利用シーンをイメージしやすい点が結果に表れたのだと思います。

MZ:静止画以外のクリエイティブフォーマットは活用されていますか?

尾﨑:はい、動画広告を活用しています。動画は静止画と比べるとCPM(広告が1,000回表示されるごとに生じる広告費)は1.7倍高く出るのですが、それ以上にCTRが5.4倍ほど高く、最終的にCPA(顧客獲得単価)を約30%抑制することができています。結論としては、静止画と同等か、もしくはそれ以上の新規獲得に貢献しています。

 また、各配信面の特性に合わせて、静止画と動画の両方を活用することでリーチ数を拡大できるというメリットもありますね。パフォーマンスが同等であるのなら、両方展開するほうが全体的に成果を上げられると思います。

静止画と動画を比較した際の数値
静止画と動画を比較した際の数値

CPAを重視しすぎた過度な訴求に注意

MZ:LINE広告の運用において、注意されていることはありますか?

尾﨑:LINE広告に限らずですが、新規顧客の獲得で注意しているのは、「CPAを重視しすぎて無茶な獲得に走らないこと」です。CPAを絶対指標にすると、出稿量の増加による過度な訴求をしてしまったり、CVRが上がっても最終的なLTVが下がってしまったり、といった状況に陥る可能性があります。数値の良し悪しのみを重視してお客様に寄り添わない訴求をすれば、お客様の心も離れてしまいますよね。既存のお客様が周りの人やSNS上で勧めたくなるようなプロダクトであり続けることが重要で、その先にサービスの継続率がついてくると考えています。

MZ:LINE広告ならではの利点を感じる部分はありますか?

尾﨑:運用者視点で言うと、LINEは広告の審査基準が厳しいので、他社のアドネットワークやディスプレイ広告と比較すると、表示される広告の質が高いと感じています。ブランド毀損のリスクが低いという点もLINE広告の特長ではないでしょうか。

LINE公式アカウントは、ユーザーコミュニケーションの重要な場

MZ:LINE公式アカウントも開設されていますが、どのように運用されているのですか?

尾﨑:LINE公式アカウントは、カスタマーサポートのチャネルの一つとして活用しています。サービスの継続率を伸ばすには、お客様の小さな不満やご要望をできるだけ拾い上げ、一つひとつきちんと対応していかなければなりません。ほとんどの方は何も言わずに退会されていくので、問い合わせのハードルをいかに下げるかがポイントになります。

 スナックミーでは、LINE公式アカウント、Webフォーム、メールの3つの窓口でご意見やご要望を受け付けているのですが、現在はLINE公式アカウント経由のお問い合せが全体の6割を占めている状況です。やはり日頃から身近にあるLINEだと、問い合わせのハードルも下がるのだと思います。

MZ:サービス訴求などのメッセージも配信されますか?

尾﨑:現在、LINE公式アカウントからメッセージを配信することは、ほとんどありません。その理由は、カスタマーサポートとして活用しているので、不要なメッセージを送って友だちにブロックされてしまうのを避けたいからです。

 ただ、まったくメッセージを送らないというわけではなく、スナックミーの会員データとLINEアカウントを連携していただいているお客様に対しては、高評価をいただいたおやつの大容量パックを発売した時にお知らせを配信したり、おやつの低評価が何度か続いたお客様には「なにか不備やご不満はありませんか?」とアンケートフォームを配信したりと、解約につながらないようなOne to Oneコミュニケーションを心がけています。

LINE公式アカウントでのメッセージ配信例
LINE公式アカウントでのメッセージ配信例(※画像はイメージです)

 そして、実はLINE公式アカウントに寄せられた問い合わせには、LINEチャットを活用してカスタマーサポートの担当者がすべて手動で返信をしているんです。お客様からLINEスタンプが1つ送られてきても、返信する内容を担当者が考えて返答しています。

MZ:ええっ! それはかなりの工数がかかるのではないですか?

尾﨑:現在、LINE公式アカウントの友だち数は10万人以上いるのですが(2021年8月末時点)、多数寄せられるお問い合わせに対して、日々カスタマーサポートの担当者が一つひとつ返信しています。本当の友だちのように感じていただける親しみやすさを心掛けているため、「このおやつがおいしかったです」「こんなおやつを作れませんか?」と、お問い合わせ以上のコミュニケーションが生まれています。特にロイヤリティの高いお客様からは、不定期で実施している当社のインスタライブを見た感想を送っていただけることもあります。

 また、具体的なご不満やご要望をいただいた時には、カスタマーサポートの担当者がすぐに社内にその内容を共有して、全員で確認しています。いただいた声を基にサービスの改善や新しい製品開発につなげるなどスピーディーに対応しており、この対応の速さには自信がありますね。

LINE上で完結する新規獲得の仕組みを強化したい

MZ:今後LINEを活用して挑戦したい施策はありますか?

尾﨑:2021年9月に提供が開始された運用型広告「Talk Head View Custom」はぜひ使ってみたいですね。トークリストの最上部にCPM課金で広告を配信できるということで、大規模な認知施策に最適だと思います。これまで行ってきた動画広告の配信経験を踏まえ、うまく活用していきたいです。

トークリスト最上部に動画広告を配信することができる運用型広告「Talk Head View Custom」
トークリスト最上部に動画広告を配信することができる運用型広告「Talk Head View Custom」

 加えて、LINE公式アカウントのさらなる展開も模索しています。現在は既存のお客様へのカスタマーサポートを目的とした運用を行っていますが、将来的に新規顧客となり得るユーザーに向けたLINE公式アカウントを別に開設し、LINE内で新規顧客の獲得できる骨組みを作っていきたいと考えています。もちろん単に新規顧客の獲得を目的とするだけでなく、LINE公式アカウントの友だちになっていただいた方に有益な情報をお届けしながら、スナックミーのサービスにより興味を持っていただけるようなコミュニケーションの方法を設計している最中です。

MZ:ありがとうございます。最後に今後の事業展開についてもお話しいただけますか?

尾﨑:おやつの「スナックミー」だけでなく、植物性のシンプルな素材で作ったプロテインバー「CLR BAR(クリアバー)」や、晩酌用のおつまみの定期便である「otuma.me(オツマミ―)」など、現在ブランドを拡大しています。ブランド数とともにターゲット層も拡大していくことで、事業成長を加速させていきたいと考えています。

 LINEもどんどんアップデートしていて、様々な広告メニューが展開されていますよね。今後もそのアップデートに対応し、積極的に新機能を活用していくことで、機会損失を防いで、より成果を上げていきたいと思います。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/26 09:58 https://markezine.jp/article/detail/37186