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ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点

企業の“女性応援メッセージ”はなぜ炎上するのか?働く女性とZ世代に響くリアルなメッセージの勘所


「ゆるく働きたい」という言葉の裏に込められた若者の本音

白石:Z世代の意識調査によると、男女共に「多様な働き方や副業への関心」が高いことがわかっています。スリールさんも大学生に、仕事と育児の両立体験を行うインターンの事業を実施されていますよね。大学などでも講座をもっていらっしゃるので、こうした若い世代の働き方に関する意識について、どのようにご覧になっていますか?

堀江:みなさんが「Z世代」と一括りにイメージしている大学生は、言い方に語弊があるかもしれません。まず前提として、社会人の方が会っている学生は、行動している学生なので、それは上位数パーセントのイケてる学生さんたちです。

 イケてる学生、置いていかれる学生は昔からいましたが、この時代の場合、前者であればデジタルを活用して起業する子、クラウドファンディングや投資でお金を集めて何かを始める子、個性があってジェンダーギャップも感じていて、関心も高く、社会課題解決型のスタートアップを始める子もいます。一方でそんな流れに置いていかれる子もいて、圧倒的にそういう子のほうが多い。まずこれが前提としてあります。

 やりたいことや、情熱を傾けられる何かを見つけられた学生はいいのですが、一方で、そういうものを見つけられない学生、働くということをイメージできない学生もいます。就職市場に出てくるのはこうした学生さんたちですね。大人といえば、自分の親と学校の先生くらいしか知らないので、働くことが何なのかわかっていないんです。

 ただ、親世代のように深夜まで猛烈に働くのではなく、「人間らしく働きたい」という当たり前の要望を持っています。それが言葉になって出てくると、「ゆるく働きたい」になってしまい、企業側には「やる気がない!」と伝わってしまうのは、残念な点です。

白石:なるほど。社会背景と働くことへの価値観の親世代とのギャップが「ゆるく」に集約されている感じですね。「ゆるく働く」と聞くとネガティブなイメージを持つ世代も多いように思います。

堀江:あくまで、定時に帰って家族を大事にして、自分らしく働きたいということです。東日本大震災以降、家族を第一に考える若い世代が増えたので、その影響もあるでしょう。それが言葉になると「ゆるく働きたい」になってしまうので、誤解する上の世代が多いんです。

 前段でご紹介があった、仕事と育児の両立体験を行うインターンの学生も、「働くイメージが湧かないので、それを知りたい」ということで来るケースがあります。また、家庭・プライベートと仕事の両立について知りたい、という学生もいます。彼らにとって大人は親と先生だけなので、本当は大人から彼らに近づいていって、教育の現場で人が頑張る姿を見せていくことが重要です。

 こういう事実を踏まえると、学生向けのマーケティングがいかに難しいかわかりますよね。イケてる子は、デジタルを活用していろんな人とのつながりを持ち、やりたいことの実現に向けて自ら動く一方、世の中大半の学生は、友だちとのつながりはLINEだけで、その世界のことしか見えていません。企業がマーケティング施策でインフルエンサーに頼りたくなるのも理解できます。

 私たちの時代は、学校から帰ってしまえば、友だちが何をしているのかわからなかったのですが、今はSNSで、誰がどこにいて何をしているのか見えてしまいます。自宅で友だちが書いた「今、渋谷でタピオカミルクティー飲んでます」という投稿を見て、「私は誘われていない」とか、そんな感じでお互いの行動を見ていたりするんですよね。

 本当に自分がやりたいわけではないのに、「みんながやっているからやらないと」というような不安感が複雑に絡み合って、SNSの話題のために何かをやるという子もいます。どんどん閉鎖的になっている危機感を感じます。

株式会社Amplify Asia 代表取締役 白石愛美氏
株式会社Amplify Asia 代表取締役 白石愛美氏

価値観や意見を押し付けないコミュニケーションを

白石:最近は若者のメンタルヘルスの課題にも、注目が集まっていますよね。

堀江:特にコロナ禍でオンライン授業になるなか、大学になるとクラスもなく、いきなり大海原に放たれてしまうようなものじゃないですか。門戸は開かれているし、チャンスも多いけど、そこについていけずに悩む人も多い。

 そういう若い人たちと、コミュニケーションを取ろうと思っていろいろ質問しようとしても、あれこれ一方的に聞いてしまったら、責められたと思って悩んでしまう。むしろ、「こうしてもいいよ」「あれもいいよ」といろんな方向で肯定感を出さないといけないので、そういう意味で、表現やマーケティングは難しくなっている気がします。

白石:同感です。ただ、コミュニケーションの取り方については大人側・企業側にも再考の余地はありますよね。質問の内容に聞き手の先入観が強く表れていたら、やっぱり冒頭にも出た価値観の押し付けになってしまいます。コミュニケーションの齟齬が起因して、幅広い可能性や意見を潰してしまうことにもなりかねません。

 それこそ、若い世代ほど、現在女性活躍の表現で使われている働き方の「頑張る」「キラキラ」といったワードの押し付けは離反を招きそうです。

堀江:そう思います。まず現状に対して共感を得るところからスタートし、そこからどうしていくかというビジョンを描くことが必要だと思います。

次のページ
女性や若者の共感を得られるメッセージをどう作るのか

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この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役
株式会社YUIDEA 社外CMO

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。2024年10月より、YUIDEAの社外CM...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/26 12:15 https://markezine.jp/article/detail/37295

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