女性や若者の共感を得られるメッセージをどう作るのか
白石:性別を超えて、前提に世代による価値観のギャップが強くあることが理解できました。しかし、多様化が進む今、特に「ジェンダー」に関する表現は難しいと感じているマーケターは多いと思います。先ほども出ていましたが「まず現状に対して共感を得る」というところは1つのキーにはなるのではないでしょうか?
堀江:ジェンダー問題が根深いのは、特に女性に関しては、当の女性自身が、自らの固定観念で作り上げられていることにあるんです。これは「現状理解」の一つでもあると思います。たとえば「専業主婦になりたい」という女性がいたとしても、よくよく話を聞いてみると、別に専業主婦になりたいわけではなく、単に「共働き、無理ゲー」といっているだけに過ぎないことがあるんです。
働くことも頑張りたいし、母として子育てもしたいけど、そのロールモデルは親しか知らないので、「お父さんのように働いて、お母さんのように子育てするのは、自分には無理!」と考えてしまうんです。それも当然なんですよね。「男性が働いて、女性が家にいる」という固定観念は、実は60代以上と20代が一番多いんです。その時期に就職活動をするのは20代が主ですので、「残業が少ないところ、無理しないところ」が一番になるのは、男女とも仕方がないと思います。
白石:なるほど。ジェンダーと世代の課題が交わるとより複雑ですね。しかし、これからの社会を考えていくと、少子化で働き手は少なくなりますし、企業経営戦略は、様々な観点でもダイバーシティの視点を取り入れていかないと、イノベーションも生まれませんし、存続することすら危うくなると思います。具体的にはどのような対応が必要でしょうか?
堀江:そうですね。政府の目標でも、「2020年までに女性管理職の比率を30%に」といわれていました。実はこの30%というのは、クリティカルマスと言って、組織のなかで意見が通るために必要な人数割合といわれているんです。
意思決定層に多様性があるということは、いろんな視点で物事を決めていくことになるので、性別の多様性が高ければ、それだけ優しい社会、特に子どもに優しい社会になる可能性が高くなります。実際に今年から、東京都の議員の30%が女性議員になりました。以前から増30%に近い数がいたので、過去4年で待機児童が90%減少したという効果がありました。
これは企業という組織でも同じことで、たとえば子育て中の女性は自分が管理職になれば、「17時以降はミーティング禁止」など、自分が困っていたことを解決していけるきっかけになります
今までは男性だからという理由で言いだしにくかったけれど、「本当は定時に帰りたい」「子育てしたい」と考えている男性の多様性も包括できることにもつながりますし、それだけで会社の雰囲気も変わりますよね。メッセージとしては、「みんなでその席に座ろう」というのもありだと思います。
白石:管理職や経営層にはなりたくないという人もいると思いますが、そこに対してはいかがでしょう?
堀江:弊社で行った若手社員向けの調査では、「求められればマネジメント職を経験したい」と答える女性は66.5%もいたんです(出典:『両立不安白書』)。なので、聞き方によっては、希望をしている人もいるということを認識していくことも重要だと思います。
また、管理職を打診される方というのは、男女年齢問わず、仕事を頑張って成果を出している人だと思うんです。そして、何かを良くしていきたいと考えている人。だからこそ、「管理職にならないか」と声をかけられるはずなんです。そうして上がっていくと、自分が影響力をもって、いい方向に変えていくことができる。「あなたが影響力を持つことで、良い方向に変わっていきます」というポジティブメッセージを伝えたいですね。
白石:影響力を持つ勇気、ということですね。これは企業にとっても、ダイバーシティを推進していく上では重要な意識かもしれません。今日は参考になるお話をありがとうございました。
