前半のマーケティングと後半のセールス、2つに分けて考える
――では、販促の設計図の全体像を教えてください。
販促の設計図とは、見込み客と出会い、商談機会を得て、たとえ成約しなくとも次の商談機会を自動的に生み出す一連の流れを指します。これには、「発掘」「誘引」「獲得」「追跡」という4つの段階があり、それぞれの段階で行うべき施策が存在します。私は各段階で様々な施策を試しましたが、その中で最も効果が高く出た6つの施策として、「リスティング広告」「コンテンツSEO」「ダイレクトメール」「コーポレートサイト」「ノウハウブック」「ニュースレター」を挙げています(図表2)。

これらの各役割を説明する前に、まず設計図を描くうえで重要なポイントから説明しましょう。全体最適を図るには、まずお客様の立場になって、お客様がどのように発注先を決めるのかを想像する必要があります。BtoBの場合、BtoCと異なり、決裁フローが長く複雑で時間がかかるのが特徴ですが、この購買フローを理解することから始めます。
お客様が発注先を決めるには、まず若手社員がWebで情報を収集し、そのなかから3〜4社にターゲットを絞り、問い合わせをするなどさらに詳しい情報を得て、商談に臨む時にはある程度目星を付けてから話をするのが一般的です。このフローを踏まえると、まずやるべきは「最初の3〜4社に残ること」です。ここに残らないと、その後の商談につながりません。そこで必要になるのが、コーポレートサイト、そして問い合わせに応えるためのノウハウブックです。この2つに魅力を感じてもらえれば、3〜4社の候補のなかで際立つ存在になれる。「ここだな」と始めから目星を付けられる状態にする、それが販促の設計図の肝です。
ここまでが前半のマーケティングで、商談に入るとあとはセールスの出番になります。ここは個人のプレゼン能力や魅力がものをいう分野ですが、商談に入ったからといってすぐに受注につながるとは限りません。予算やスケジュールの関係ですぐに成約できなかったり、失注したりすることもあるでしょう。この「そのうち客」と「失注客」について、何もやっていない企業が多いのですが、実はここを放っておくと、将来の商談機会を失ってしまうんですね。そこをフォローするためにニュースレターやメルマガを活用するわけです。しっかりフォローするにはMAを導入し、追跡することも必要でしょう。このように前半のマーケティングと後半のセールスを分け、その後のフォローを継続していく。前半・後半を分けて考えるのが設計のポイントです。
顕在化ニーズにはリスティング広告、潜在ニーズにはDM
――販促の設計図における6つのパーツの役割についても教えてください。
まず前半の集客ですが、自身で様々な施策を重ねた結果、「リスティング広告」「コンテンツSEO(コンテンツマーケティング)」「ダイレクトメール(紙媒体を郵送)」の3つに集約していきました。集客はどの企業も悩んでいる課題だと思うのですが、ニッチな商品を扱うBtoBの場合はテレビCMは不向きです。また、SNSも基本的にオフモードの時に見るメディアなので、やはりBtoBとの相性は良くありません。顕在化しているニーズに対応するには、やはり目的を持って検索しているユーザーに対し、リスティング広告やコンテンツSEOで接点を作ることが効果的です。
問題は、まだ表層に現れていない潜在ニーズに対し、どうアプローチするかです。これに最適なのが郵送のダイレクトメールです。テレアポしてもつないでくれないし、メールDMやフォームDMは、信用を損ねる可能性があります。しかし郵送ダイレクトメールでクレームが来ることはありません。
こうした施策を重ね、集客しても、なかなか商談に進まないことがありますし、ターゲット外の顧客ばかりが集まることもあり得ます。そこでフィルターの役割を果たすのが、コーポレートサイトとノウハウブックです。
――フィルターとは?
ターゲット外のお客様には辞退を促し、意欲のある優良顧客のモチベーションを高める機能です。実はBtoBのデジタルマーケティングで、大きな盲点になっているのがこれら2つのパーツなんです。特に大切なのがコーポレートサイトです。LPの制作にはこだわるのに、コーポレートサイトがなおざりにされていることが多い。とてももったいないと思います。