SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

特集:BtoBビジネスの勝敗を分ける戦略

営業不在で自動的に売れる仕組みを作る 「販促の設計図」の描き方

コーポレートサイトとノウハウブックはなぜ重要なのか

――なぜコーポレートサイトとノウハウブックは重要なのでしょうか。

 BtoBで商談の前段階にあたる情報収集時期は、必ずホームページに訪れます。特に発注先が中小企業の場合、「どんな会社なんだろう」と担当者は必ず見に来ます。商品だけでなく、会社として取引する価値があるかどうかを判断する。だから販促の設計図でまず着手すべきはコーポレートサイトなんですね(図表3)

図表3 コーポレートサイトを受け皿とする「誘引」のステップ(タップで画像拡大)
図表3 コーポレートサイトを受け皿とする「誘引」のステップ(タップで画像拡大)

 そして興味を持てば、問い合わせをするのでノウハウブックの出番になります。ノウハウブックは私の造語ですが、これはお客様が抱えている課題や悩みに役立つ情報をまとめたもの。すべての商品を紹介する商品カタログと異なり、「お客様の課題」に対して解決のヒントとなる1冊というのが基本です。

――ホワイトペーパーとは違うのでしょうか?

 ホワイトペーパーも否定はしませんが、ノウハウブックは“ブック”とあるように、数十ページにわたるボリュームが重要なんです。理由は、その情報量に価値を感じてもらえるから。それを紙媒体のブックレットにするのです。これだけの分量があると、PDFで配布しても印刷して読む方が多いでしょうし、同じ内容でも印刷物のほうがより価値を実感していただけます。すると商談のモチベーションも高まりますし、コストをかけてこうしたものを用意していれば、「安ければいい」と考える自社に相応しくない顧客も自然と排除できます。

 このノウハウブックを、問い合わせしてくれた会社に送付します。よく「お問い合わせフォーム」といって、企業名や連絡先、悩みを長々と書いてもらう方法がありますが、「無料で資料請求」としてフォームに問い合わせ欄を設けるほうがいいでしょう。なぜなら、情報収集段階で初めて接点をもつ企業に悩みを打ち明けることには抵抗があるし、長々と入力してもらうのは手間がかかります。それより、連絡先だけを記入してもらうほうが離脱も減るし、しっかり読み込める印刷物が届くと、信頼性も向上します。

コンテンツを使い倒して顧客とのつながりを保つ

――最後のパーツはニュースレターですね。

 これは接点を持ったお客様と長くつながり、次の商談を生み出すための施策ですね。当社はニュースレターもメルマガもやっていますが、「紙のニュースレター」を定期的に発行する企業は少ないかもしれません。

 ニュースレターもノウハウブックと同じで「紙の価値」があります。当社では年に3回、接点のあった企業に24ページのニュースレターを送っていますが、思った以上に価値が伝わっているようで、最初の接点から数年経って仕事を依頼されるケースもあります。ニュースレターの記事も、実はオウンドメディアやノウハウブックのために作成したコンテンツを流用し、アレンジしてメルマガも作っています。メルマガの場合、キャッチコピーと写真だけを本文に載せ、クリックするとオウンドメディアの記事に飛ぶようにして、長々と書くことはありません。

――コンテンツを作ろうにも、元となるアイデアやネタがないというケースもあると思いますが、その場合はどのような工夫が必要ですか?

 コンテンツは、どの会社にも必ずあります。一番わかりやすいのは事例ですね。一言二言の「お客様の声」ではなく、お客様にインタビューし、なぜ当社を選んでくれたのか、どのように検討したのか、実際に使ってみてどんな成果が生まれたのか、しっかり記事に落とし込む。すると新規で情報収集する方も、導入前後の流れをイメージしやすくなります。ましてや大手企業への導入実績があれば、お客様にとって安心感にもつながるでしょう。当社でも「プロジェクト」というページを設けて事例を公開しています。相手先への許可申請や撮影・取材など手間がかかるのは事実ですが、自社にとっても「なぜお客様が選んでくれたのか」という根幹の部分を生でヒアリングできます。中小企業ほど効果が大きいと思います。

戦術の前に、まず商品戦略と顧客戦略を

――自社に最適な設計図を描くにはどうすれば良いのでしょうか?

 自社のターゲットを踏まえ、顧客の購買プロセスやその心理・行動を理解することがポイントだと思います。商習慣上、デジタルに消極的な業界の場合、Webマーケティングよりも、企業リストを購入してDMを打つほうが効果的です。反対に、若い業界でスマホを業務で日常的に使用しているような場合は、レスポンシブ対応が欠かせません。そうしたペルソナを描き、そのペルソナの心理や行動に応じた設計図を組んでいくことが大切です。

――最後に、設計図を描くためのファーストステップ、全体的なアドバイスをお願いします。

 この6つのパーツは戦術なんです。どう活用するかという戦略がないと効果を発揮できません。たとえばリスティング広告にしても、いきなり全商品に導入するのではなく、「一番波及効果が高い商品から着手していこう」のように戦略的に展開していかないと、お金を無駄にすることになります。波及効果の高い商品は会社によって違うでしょうが、私ならまずリピート性の高い商品・サービス、または発注先を変更しやすく参入障壁が低い商品・サービスから始めます。

 次に、顧客のペルソナですね。中小企業の場合、意外にも経営者宛てにDMを送ると読んでもらえることが多く、商談がスピーディーです。窓口になるのが若手社員であれば、そのペルソナに適した戦術を選ぶ。この商品戦略と顧客戦略の2つを前提として、設計図の全体像を見て考えていくわけです。

 あとはとにかく、コーポレートサイトですね。お客様にとって役立つコンテンツを考える。「お問い合わせ」ではなく「資料請求」にして、無料のノウハウブックを送るようにする。これだけでも十分な効果があると思います。

『新規顧客が勝手にあつまる販促の設計図』中野道良 著 翔泳社 1,980円(本体1,800円+税10%)
『新規顧客が勝手にあつまる販促の設計図』中野道良 著 翔泳社 1,980円(本体1,800円+税10%)

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
特集:BtoBビジネスの勝敗を分ける戦略連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/11/01 16:21 https://markezine.jp/article/detail/37305

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング