変革期ならではのおもしろさがある
――変革を進める上で、意識的に取り組まれてきたことはありますか?
大学院に通っており、変革やリーダーの在り方を学んでいます。学術的な知識を身につけて、実践するというのは、自分としてもやりがいを強く感じている部分です。中でも、ジョン・コッターが提唱している変革の8段階プロセスは意識して取り込むことで不足分を補ってくれました。
「ジョン・コッターの8段階のプロセスと実践例」
- 1.危機意識を高める→顕在層との接点がないという現状課題を認識させる
- 2.変革推進チームをつくる→小さなデジタルマーケティングチームをつくる
- 3.適切なビジョンをつくる→「売り上げに貢献するマーケティングの実現」というビジョンを掲げる
- 4.変革のビジョンを周知徹底する→取り組みの成果(数字)を積極的に共有する
- 5.従業員の自発的な行動を促す→営業を巻き込むためには、寄り添う・手伝うことも大事
- 6.短期的な成果を生む→クイックウィンを積み重ねる
- 7.さらに変革を進める→データの一元化に取り組み中
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8.変革を根付かせる
――ほぼ一人での変革は困難も多かったのではと思いますが、保坂さんはどんな時にやりがいを感じられますか?
やはり、数字が上がっていくおもしろさは大きいですね。BtoBマーケティングにずっと注力している会社だとそんなに大きな変化はないかもしれませんが、私の場合は本格的にスタートするタイミングで関わっているので、KGI、KPIなど数字の右肩上がりを見られることに大きな喜びややりがいを感じます。
あとは、そうした成果を発信することが非常に大事だと感じています。自ら発信しなければ、社内に何も理解されないですし、価値がないと思われてしまうかもしれません。私の場合は、他の事業部もいる場で、私たちがデジタルを使ってやっていることやその成果を発表する機会を積極的に作ってきました。そして、今日こうして会社を背負って社外で話せることも活力になりますね。これまで社内で取り組んできたことが社外で認められると、社内全体でデジタルを活用したマーケティングに興味や理解を示してくれる人がさらに増えるのではないかと思います。
一方で、ヘルスケアIT領域自体が変革期であり、その中でデジタルマーケティングはまだ立ち上げ期にあります。採用活動もしておりますので、興味がある方は一緒に変革を行いたいです。
現状に甘んじず、顧客理解を深めていきたい
――デジタルマーケティングの変革をスタートして2年半。今はどのようなことに取り組まれているのでしょうか?
現在実践していることは、「顧客の解像度の高度化」と「データの一元化」です。
私たちの業界にもベンチャー企業が参入してきています。彼らはスピード感をもって動いて、少しずつシェアを伸ばしてきており、私たちも業界トップクラスという現状に甘んじているようではいけません。先に話した通り、デジタルでの顧客との接点が少ないというのは大きな課題となっています。そうした中で顧客のことをより深く知り、解像度を高めていくために、コンセプトダイアグラム(顧客の心理変容とマーケティング施策を図解し、顧客の理解と施策の評価を合わせて行う手法)という手法を用いてPDCAを回そうと進めています。「こういうコンテンツは反応がいい」「最終的な決め手にこんな情報があったほうがいい」など、インサイドセールスからフィードバックをもらって、ウェブ上だけでなくリアルの営業も改善できるようにしていきたいですね。顧客の解像度を高め、購買活動のコンテンツを強化していくことが現在の目標です。

データの一元化については、新たにCRMツールを入れて、GAの数値との一元化を行っています。「このコンバージョンポイントからの問い合わせは商談につながりやすい」など、インサイドセールスからの定性的なフィードバックでは施策の良し悪しがわかりやすいのですが、定量的なデータから把握することはできていません。正しい数字を見て、マーケティングの売り上げへの貢献を可視化できるよう、データ環境を整備していきます。
最後にこれは個人的な目標でもありますが、顧客視点が増えてくる中で、顧客に「欲しいと思った!」と言ってもらえるようなプロダクト改善や開発まで考えられるようになりたいですね。
※一般診療所向け電子カルテシステム(診療録を電子的に作成・保管するシステム)稼働施設数ベース 2020年10月時点
※本調査結果は、定性的な調査・分析手法による推計である。
※出所:株式会社矢野経済研究所「2020年版医療情報システム(EMR・EHR)市場の将来展望」(2020年12月発刊)