FAXや展示会が主体の営業から、短期でシフトした例も
多々良:もう一つ、短期でデジタル主体の体制にシフトできた例として、ある下着メーカー様が展開する医療用下着のCRM構築についてご紹介します。医療用の下着ですから、看護師からカタログやサンプル送付の依頼を受け、患者さんに紹介していただくというビジネスフローとなり、コロナ禍前はFAXや展示会でのコミュニケーションが主体でした。
施策としては弊社のCRMツール「Synergy!」を導入し、フォームからデータ収集を実施。カタログ依頼や申し込みはWeb完結できるようにしました。エクセルデータで作成していたリストも「Synergy!」に切り替え、コンタクト履歴もツール上で一括管理。データベースの項目も1つずつ事前にすり合わせました。
MZ:ツールの定着、デジタルシフトを短期で進められたポイントはどこにあったのでしょうか。
多々良:たとえば「たくさんのカタログや生地サンプルをどのようなフォーム形式で見せたら申し込みしやすく、データ管理もしやすいか?」など、現場の運用をしっかりとヒアリングした上で、ツールがどういう場面でどう貢献できるかを、かなり具体的に詰めました。デジタルを活かしてCRMを整備することで、社内外の誰にとってどんなメリットが生まれるのかを明確にできたことは、クライアント様からも評価いただいた部分です。
また、国産ツールである「Synergy!」は海外ツールと比較して、日本語表記がわかりやすいと言っていただくことが多く、こうした面もスムーズな導入に役立っていると思います。また、メールやLINEなどのプッシュ系チャネル配信機能では、配信対象者の条件設定や配信タイミング設定が柔軟に指定できることも支持されています。
これからのCRMに求められること
MZ:今後のCRMはどのように変化するとお考えですか。
多々良:コロナ禍や個人情報の取り扱いなどの社会的な変化を受けて、デジタルマーケティングは今後より一層ユーザーに寄り添うことを求められるようになるでしょう。
今まで企業が取得してきた顧客情報というものは、キャンペーンや初回クーポンなどを理由として、しかたなしに「代償」として提供されたものも多かったと言えます。個人情報に対する社会の認識が変わる中、情報を提供いただけるような信頼関係をどのように作っていくかが問われていくと思います。
たとえば、企業のビジョンやミッションへの共感が重要になるでしょう。その企業の「ファン」として、自らの意思で顧客情報を提供しより良い体験をしたい、と思っていただく。それによってお客様と企業の双方にメリットが生まれる、といった状況が想定されます。
そして顧客行動や熱量は我々のシステムの中で可視化され、企業側が大切なファンに伝えるべき感謝や情報を届けることで、より良いサイクルができていく。このような世界観は、弊社の新ミッションである「Create Synergy with FAN」にも通じるものです。こういった関係を構築していくためのご支援ができると嬉しいですね。
また、新規顧客と企業との出会いの場に関しても、熱量の高いファンの方々が新規顧客を連れてきてくれる場面も増えると思います。優良なお客様はいわゆる購買データだけで判断できなくなるのです。
MZ:たくさん購入することだけが優良顧客の指標ではなくなるということですか。
多々良:はい。SNSでの発信やシェア数など、バイラル要素も関係してきます。スポーツチームのファンクラブ会員の中には、自分自身で楽しむことはもちろん、試合を観たことがない方に試合を観てもらい、その方が喜ぶことに嬉しさを感じる方もいます。そういった方々をどう大切にしていくかは、非常に重要なポイントです。これからはファンを継続的に満足させる施策の企画や設計が、CRMとして注目されることでしょう。
MZ:CRMの最前線、御社の強みがよくわかりました。本日はありがとうございました。