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ビジネス投資からブランド投資へ D2Cの進化系「DNVB」とは

ブランド投資の重要性

 D2Cのパフォーマンス・マーケティングはスケールすればするほど、その分の広告費用や流通コストがかかります。一方DNVBは、初期プロダクトやサービスの開発コストはかかりますが、その後は基本的にオンラインをベースに販売を行い、広告費用を抑えながら、SEOやSNS、口コミでオーガニックに顧客獲得をしていく仕組みを作ることで拡大をするため、莫大な追加コストをかけることなく、スケールすることを目指していきます(図表2)

図表2 DNVBの成長イメージ
図表2 DNVBの成長イメージ

 結果として指数関数的な成長を遂げてスケールしているように見えますが、DNVBはブランド投資の期間を設けて「初期はスケールしないことをしている」という点がポイントです。

 これは早い段階で広告に依存したパフォーマンス・マーケティング(=絶対利益の最大化を目標としたKPI設定)になることで縮小均衡し、結果スケールしないというこれまでのD2Cの反省が生かされています。

 ブランド哲学のないD2Cの場合、絶えず広告で認知をとり続ける必要があり、規模の拡大と共に広告費もかさんでいき、将来的に財政状況が厳しくなっていきます。ブランドと顧客がデジタル上で直接つながっていない場合、途中で広告費を削減すると、売り上げが下がるだけではなく、これまでリピートしていた顧客もブランドに飽きたり、忘れてり、離脱してしまう可能性があります。

 事実、ブランド哲学を持たず広告を前提に成長してきた、とあるD2Cは、予算の8%を広告費に当てて順調に売り上げていましたが、広告費の割合を5%にした結果、利益率は上がるどころか、売り上げが20%も下がってしまった事例もありました。

 一方、最初からブランド哲学を発信してローンチしたDNVBは、一定の広告予算は投じながらも、哲学に共感したファンとデジタル上で直接つながりながらブランドを広めていきました。その結果、たとえ広告予算を削減しても、ファンのSNSでの口コミや友人経由の紹介によってオーガニックに顧客が増えていくため、高い利益率を維持することができます。

日本市場におけるDNVBの可能性

 D2C型でいくとパフォーマンス・マーケティングが足かせとなり、広告を前提とした縮小均衡モデルになってしまいます。2021年現在、D2Cブランドが急増し、オンラインでの顧客獲得コストが高騰し、パフォーマンス・マーケティングの利益率は低くなっています。これが日本市場でD2Cが苦戦している要因だと私は考えています。

 そこでDNVBの考え方を取り入れ「まずはしっかりと生活者から共感を呼ぶブランド哲学を開発し、哲学に共感してくれた熱狂的顧客とデジタル上でつながり続けながら、得られた一次情報をもとに、プロダクト開発やサービス体験の改善を絶えず行う」ことが重要だといえるでしょう。

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この記事の著者

佐野 拓海(サノ タクミ)

株式会社博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザイナー

慶應義塾大学経済学部卒業後、博報堂の社内ベンチャーであるSEEDATAにプランナー兼アナリストとして参画。主に生活者リサーチ、新規事業開発、新商品開発、ブランディング、サービスデザインなどの業務に従事。働きながら慶應義塾大学システムデザインマネジメント研究科に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/37581

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