SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

「クラフトボス」「伊右衛門」など主要ブランドを刷新 サントリーの“攻め”のボトルデザイン戦略とは?

触感と開栓音にこだわった「THE STRONG 天然水スパークリング」

 近年ポピュラーな存在となった無糖炭酸飲料。「サントリー天然水」ブランドの新製品である「THE STRONG 天然水スパークリング」も、コロナ禍における家飲み機会増大を経て伸びる“家飲みの割り材”として、また、連続的なテレワーク下における“オンオフ切り替え”“リフレッシュ”のための飲料としての強炭酸水市場拡大の追い風もありヒットしている。

 「閉塞感とストレスの解消」というコンセプトを体現したというボトルは、従来は技術的に不可能とされてきた“バキバキ”に尖ったボトル形状を実現し、光沢のあるシルバーカラーのパッケージや、開栓音などにもこだわったという。尖ったフォルムにクリスタルのような透明感、シルバーのラベルもあいまって刺激の強さと爽快感を即座にイメージできる

 ひと目で「スカッと強い炭酸」をイメージできる、クリアでエッジな“バキバキ”ボトル。実は炭酸飲料用ボトルをこの形状にするのは至難の技で、通常のボトル開発の5倍もの試作品を製作したという。

完成品(左)と試作されたボトルの形状の例/新ボトル開発は最新技術を活用。通常新容器比で約5倍の試作を実施した。
完成品(左)と試作されたボトルの形状の例
新ボトル開発は最新技術を活用し、通常新容器比で約5倍の試作を実施した。

 これまでの「強炭酸水」の開発では、中味の刺激(ガス圧)をいかに高めるかというように、中味に向き合うことが多かった。「THE STRONG 天然水スパークリング」でも、「サントリー天然水」ブランド史上最高レベルのガス圧の強炭酸を加えることで、飲んだ瞬間、喉に突き刺さるような強刺激を実現し、強炭酸ファンに訴える飲み口に仕上げた。

 そして、中味それ自体のこれまでにない強い刺激を、五感を通じていかに伝えていくとことかも重要視し、ボトルデザインで刺激を表現するという発想にたどり着いた。

 「強い刺激を伝えていくことに加えて、『サントリー天然水」ブランドとしての記号を象徴的に残すことも同時に実現させなければならなかったため、開発の初期段階から、サントリー天然水を象徴する水源の山並みを、氷山に模したものからヒントを得てデザイン開発を進めていきました。開発を進めていくにつれ、チーム全体の商品に対するイメージはおぼろげながら固まっていきました。

 そして、ボトル全体に氷山のような鋭角な印象が残る形状を目指すことになりました。しかし、これがなんとも難しい挑戦だったのです」(多田氏)

 炭酸飲料というのは容器内にガスが入っているため、そのガスが外へ外へと抜けようとする「内圧」がかかる飲み物。そのため、一般的な炭酸飲料では、概ねボトルが丸みを帯びているか、内圧に耐えられるよう滑らかな形状になっている。しかし、今回サントリー天然水チームが実現したのはそういった一般的な形状とは異なる複数の凹凸が施された「バキバキ」のボトルだった。

 「デザインコンセプトが固まるタイミングで、容器を設計する包材担当者とも協議をしましたが、最初のリアクションとしては、『これは絶対に無理』『内圧に耐えられるわけがない』という声でした」(多田氏)

 「しかし、開発チームは今の世の中で求められる刺激感を極限まで高めたい、そしてできるだけ早くお客様にお届けしたいという思いがあり、なんとかクリアできる方法はないかと幾度となく試行錯誤を繰り返しました。その中で、みつかった突破口は弊社の人員体制があってこそ実現できたことだと思っています。

 サントリーはデザイナーを社内に抱えるインハウスデザインの体制を敷いています。包材設計の技術者とも常にオフィス内(オンライン含む)で、気軽にコミュニケーションが取れる体制です。

 そのため、「内圧」にいかに耐えられるかということを包材部署が普段社外の専門機関と実施している『応力解析シミュレーション』を自社に取り込み、デザイナーも一緒に手を動かし、内圧に耐えつつ、理想の複雑な構造を実現する方法を模索しました。そして、普段の5倍以上の試作を試み、いきついた形状が今回の形状でした」(多田氏)

次のページ
クリエイティビティの延長にある、伊右衛門の“ラベルレス”

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

カサブランカ・リー(カサブランカ・リー)

マーケティング評論家、コミュニケーションストラテジスト、コンテンツプランナー、コピーライター、コラムニスト。ビューティ、メディカル&ヘルスケア、スタートアップ、デジタルコンテンツ領域に強み。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/11/04 07:30 https://markezine.jp/article/detail/37675

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング