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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

顧客起点で成長し続ける インバウンドマーケティングを実践するHubSpot Japanの現在地

デジタル、顧客視点、信頼の3つがキーワード

――代表就任時のリリースには「HubSpotのインバウンドの考え方が、2020年以降の変化に適応し続けている日本企業に有益な示唆をもたらすと確信している」とありました。

廣田:2020年以降、世界中がコロナ禍に見舞われ、多くのビジネスが苦境に立たされています。その中でも成長している企業をみてみると、3つのキーワードが浮かび上がってきます。それは「デジタル・顧客視点・信頼」です。そして、これらを包括して事業を推進できる具体的な手法がインバウンドだと、先ほど説明いただいた文言を掲げました。

 デジタルは、もはやこの時代で当然ですが、コロナ禍でも堅調に成長している企業はDXを早くに進めているか、元々デジタル中心のビジネスモデルを確立しています。

 とはいえ、企業の都合でデジタル化を進めても、顧客との関係構築や、他社に対する競争優位性の獲得は難しい。シンガポールの企業を含め、成功している企業のリーダー層と話すと、やはり皆さんツール導入だけでは意味がないとよくわかっている。注力しているのは、顧客視点に立ったDXです。顧客を理解し、その視点での改革を実現できて初めて、競争力が高まります。

 そして信頼は、昔から重要な要素ですが、特にコロナ禍で比重が高まっていると感じています。たとえば、感染防止対策を徹底している店舗が支持され、それを怠る店舗は廃れていく。自ずと、誠実な企業が信頼される構図が際立ってきています。また経営と従業員との信頼や、パートナー企業との信頼も一層大事になっています。

 我々自身もインバウンドの実践を通して、デジタルと顧客視点に基づき、そして顧客やパートナー企業に信頼される企業になるという意図も、リリースに込めています。

――新生HubSpot Japanとして目指す方向性や、事業の軸についてうかがえますか?

廣田:これから顧客やパートナー企業と話してニーズを吸い上げていきたいですが、日が浅いなりに感じているのは、やはり日本は特殊なマーケットだということです。ツールや各種情報のローカライゼーションはもちろん、我々が運営するアプリのマーケットプレイスでも日本のアプリを増強することで、より日本顧客にフィットさせていきます。

 また、先ほども話が上がりましたが、我々を支えてきてくださったのはパートナー企業です。よりパートナーシップを深めながら、一方でプラットフォームの拡大にともなう新たな関係構築にも注力していきます。そうすることで、インバウンドの思想を広げながら、多くの企業を支援できると考えています。

「カルチャーコード」刷新企業文化をより強固に

――冒頭で、企業文化を大切にされ、ちょうど「カルチャーコード」を刷新したとのお話がありました。リモートワークの環境下で従業員が増えていくと、社内を一体化する難しさも増すと思いますが、どうお考えですか?

伊佐:企業文化は、そもそもHubSpot共同創業者のダーメッシュ・シャアが重視しており、カルチャーはビジネスの“OS”だと表現しています。特にコロナ禍のように、外的要因の影響が大きいときこそ、我々が何を信じてどう行動すべきかを皆で確かめることが大事になります。ただ、ガイドラインや規則ではなく「コード」と言っているのは、可変性や不確実性も込めているんですね。コードだから、中にはバグもあるけれど、世の中の変化に応じて変えていこう、と。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に対する考え方も、カルチャーコードに盛り込んでいます。

 これがしっかりと根付くためには、明文化と実践が大事です。リモートであっても、随時チームで議論し、日々の業務に取り入れていきます。

――最後に、今後の展開や日本のBtoB事業への提言をいただけますか?

伊佐:前述のオペレーション・ハブのローンチで、HubSpotの方向性は大きく変わります。思想と、その実現のためのCRMプラットフォーム提供というベースは維持した上で、オペレーションの要素が加わることで様々なツールとの連携がさらにしやすくなります。

 ただ、重複しますがツール導入で終わっては意味がないので、具体的な事業成長の考え方や組織運営などを学べる「HubSpotアカデミー」の日本向けコンテンツの増強も図っていきます。同時に、時流を踏まえると、個人情報を適切に取り扱えるツールやサービスの提供も重視しています。

 そして、我々自身がインバウンドの考え方で事業を伸ばしているように、働き方改革の点でもトライ&エラーを重ねて、知見を発信していきます。先日も、グローバルで全員が1週間休むことを試したんです。多々学びがあったので、皆さんに共有できればと思います。

廣田:その発信は、私もより力を入れていくべきだと考えています。カルチャーとは、経営と従業員との双方向で作られるものですが、当社には経営から現場までが参加するカルチャーコミュニティがあり、日々カルチャーの醸成に取り組んでいます。こうした機能があるのはとても有益だと思いますね。

 インバウンドの実践は、IT系や都市圏の企業から浸透してきましたが、最近では非IT系や地方のビジネスでも事例が挙がっています。マーケットの成長可能性も見込めるので、こうした方々にもメッセージを届けていきたいです。

 もうひとつ、BtoBでは売り手と買い手の間に、いまだに「買ってください」「買ってあげる」といった上下関係があると感じます。片やBtoCでは、売り手と買い手のフラットな関係性が確立されつつある。インバウンドの浸透は、そうした関係を推進するものだとも思うので、BtoBにもっと浸透させて、変革をドライブしていきたいと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/25 06:30 https://markezine.jp/article/detail/37757

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