複数部門でBtoBマーケティングの取り組みを広めた方法とは?
MAの本格導入が進み、リード獲得から育成を進める仕組みが整ってきた。佐藤氏によれば、MAの運用に関しては「地道な検証を重ね、効果を少しずつ改善してきた」という。
「最初は、妥当な目標数値がわかりませんでした。そのため、仮の目標値を設定し、施策の結果をもとに課題を洗い出し、課題解決に向けた仮説を構築してから新しい施策を講じることを繰り返してきました。プロセスや結果がデータとして出せるデジタルマーケティングの良いところを活用しました」(佐藤氏)

そして、改善の繰り返しで目標数値も明確になり、成果も出始めてきたデジタルマーケティングチームは、社内広報や外部メディアへの露出を意識的に強化。社内外での発信が功を奏し、他部門から注目され相談を受けるように。また、コーポレートサイトから各事業部門への送客施策を担当するなど、事業を越えて活動することが増えていったという。
複数部門のマーケティングをサポートする兆しが見えた段階で、佐藤氏は改めて「デジタルマーケティングは、日立製作所において何を実現できるのか」を考えたという。その結果見えたのは、「営業プロセスの生産性向上」「デジタル事業の拡大」の2つへの貢献だった。
前者に関しては、顧客の検討行動の変化への対応が求められていたことが背景にある。BtoB商材の検討時、多くの人は企業に問い合わせる前にWeb上で情報収集を行う。そこで「Web上でどのようなコンテンツを見たか?」「どの資料をダウンロードしたか?」といったデータを営業担当者に渡すことで、よりお客様のニーズを理解した営業活動が実施できると佐藤氏は考えた。
後者に関しては、日立製作所の幅広い事業を支える狙いがあったという。
「製造業と言っても、提供するソリューションによってターゲットとなる業種や地域は異なります。デジタルマーケティングの力を使えば、ターゲットの状況理解を助けるためのデータが提供できると思いました」(佐藤氏)
コロナ禍で、営業とマーケティングの役割分担が明確に
社内でのデジタルマーケティングの存在感が少しずつ高まっていた矢先、2020年から新型コロナウイルスの影響で対面営業が難しい状態に。デジタルマーケティングの推進を急ピッチで進める必要があった。
特に営業部門から上がってきたのは「非対面での営業活動を推進するうえで、デジタルマーケティングはどう活用できるのか?」という相談だ。これに対し佐藤氏は、顧客の状況に合わせた役割分担を提案したという。
「コロナ禍に突入した当初、営業部門は、すでに商談を進めているお客様(今すぐ客)を中心に営業活動を進めることに注力せざるを得ない状況でした。そこで、デジタルマーケティングを活用して、現状必要としていないまだまだ客、本当に必要か迷っているそのうち客をターゲットにリードナーチャリングを実施することを提案しました」(佐藤氏)

顧客の検討フェーズで対応を分けたことで、協力体制が非常に強固になった。メルマガ登録や資料ダウンロード、オンラインセミナーの参加に関する状況を把握し、営業とも対話しながらホットリードを創出。もしそのリードがまだ情報収集段階だった場合には、再度マーケティングチームにリードを戻し、コンテンツ提供を継続するといった連携が行えるようになったという。
