アプリプロモーションの全自動化を支援するUNICORN
──はじめに、皆さんの担当業務について教えてください。
芳賀:ミクシィの芳賀です。デジタルエンターテインメント事業本部 マーケティング部のマネージャーとして、既存のゲームアプリを対象としたデジタルマーケティングの後方支援と、海外向けアプリゲームのマーケ戦略立案やブランディング、マーケティング全般を担当しています。
今回お話しするコトダマンは、まもなく4周年を迎える人気タイトルです。言葉を組み合わせて戦う新感覚のRPGで、おかげさまで多くのファンの方にご支持いただいています。
須藤:UNICORN社でマーケティングコンサルタントをしている須藤です。UNICORNは、全自動化マーケティングプラットフォーム「UNICORN」を提供しています。私は、コトダマンのプロモーションにおけるUNICORNの活用をサポートしています。
横山:須藤と同じくマーケティングコンサルタントの横山です。私は、UNICORNによるASAの活用と運用全般を専門に、コトダマンのプロモーションをご支援しています。
ポストIDFA時代に注目されるASA、求められる運用負荷への対策
──2021年4月に、iOS14.5がリリースされ、すべてのアプリにIDFA取得の確認が必要となりました。それを踏まえ、コトダマンはどのようなデジタルマーケティング施策を行っていますか。
芳賀:まず現在のコトダマンの運営は、様々なIPコラボ(著作権、知的財産権が発生するコンテンツとのコラボレーション)の展開を軸としています。これは、リリース当初から楽しんでくださっているファンだけでなく、より多くのユーザーにコトダマンを知って、プレイいただくための企画です。
この運営方針を基盤にプロモーションプランを組むわけですが、iOS14.5のリリースにともない、ターゲティング精度と効果測定に影響が出ることは想定していました。そこで、あらかじめメディアプランのポートフォリオを変更するほか、効果測定の基準を複数持つことで備えました。その1つとして行っているのが、ASAの活用の強化です。
──ASAに注力された理由を教えてください。
芳賀:ASAは、App Storeで検索されたキーワードに連動して掲載される広告です。何かしらの意図をもって検索する能動的なユーザーに、広告を配信できる点は非常に魅力的だと思います。また、新たなユーザーとの接点を持つ上でも、「RPG」や「パズル」などの一般ワードによる広告配信を通じて、潜在層に対する接点を強化したいと考えました。
また、競合他社も「コトダマン」のキーワードは入札できるので、ブランドワードへの入札も行っています。コトダマンを検索されたユーザーへ正しい情報を届けるだけでなく、機会損失を防ぐことにもつながるためです。
しかし、ASAは運用が大変です。ユーザーが検索するワードを予測しながら、たくさんのキーワードを組み合わせて入札する、途方もない作業がともないます。人の力では限界がありますから「データ分析をもとにキーワードを選定し、自動的に入札できるプロダクトがないか?」と考えていました。そんなとき、UNICORN社でASAの運用ができると知り、導入を決めました。
運用作業を自動化することでASAのパフォーマンスを最大化
──UNICORNを活用してASAを運用することの特徴を教えてください。
須藤:大手SNSなどメガプラットフォームでの広告がリーチできないすべてのディスプレイ広告の運用・配信を自動化し、得られたデータを元に機械学習を行い、クライアント様のKPIに合わせて最適化する全自動マーケティングプラットフォームを提供しています。
その一環として、ASAにおいて、膨大なデータ量による機械学習のロジックを活用し、ASAのパフォーマンスを最大化する全自動の配信ソリューションを提供しています。また、UNICORNのソリューションは、2021年9月に日本で初めてApple Search Adsの公式パートナーに認定されました。
横山:ASAは、ユーザーの検索キーワードに連動して配信されるため、キーワードの選定がとても重要です。
UNICORNでは、年齢・性別などのデモグラフィック情報(オプトインされているデータのみ)を活用し、自動的に収集したキーワードを各セグメントに対して配信を行います。そのキーワードとセグメントの組み合わせは何千何万通りにもなりますが、各組み合わせに対し、最適な入札単価を導き出し、随時入札調整をかけながら運用を行なっています。
──通常であれば、広告運用者がキーワードを考え、たくさんの組み合わせを作り、入札する。これらのアクションを、UNICORNは自動化するのですね。
横山:そうです。ASAのキーワード入札単価は、広告の反応はもちろん、時期や入札競合の状況など様々な要因で変動します。それらのケースすべてを反映して、UNICORNは最適な入札単価を24時間365日計算し続け、ASAのパフォーマンスを最適化・最大化します。また、収集されたキーワードや、セグメントとの組み合わせの中には人が思いつかないようなキーワードや組み合わせが現れる場合もあります。
新しいユーザー層を発掘しリーチの拡大も可能に
──コトダマンに関しては、どのようにASAを運用したのでしょうか。
芳賀:まず、ブランドキーワードや指名キーワードによる検索に対しては、機会損失にならないように、しっかりとコトダマンの広告を配信する設計をしました。
そして一般ワードや関連ワードは、コラボするIPコンテンツのファンをはじめとしたコラボと親和性が高いターゲット層を想定して設計しています。IPコラボは、検索されるであろう関連キーワードの幅がとても広く、UNICORNの機械学習による入札キーワードの選定がマッチしました。
須藤:人の手による配信設定は、わかる範囲、想像しうる範囲でのキーワードやターゲティング設計となり、限定的になりがちです。
UNICORNはまず全体的に配信を行い、効果を見極めて、入札のバランスを取ります。効果の良いキーワードとセグメントの組み合わせは配信を増やす対応を行い、効果が合わない組み合わせは入札を弱める。このような配信の最適化を行い、予算を最大限活用した配信の拡大に取り組みました。その上で、潜在ユーザーによるコトダマンの検索が増えるコラボ期間中は、特に配信の強化を行っています。
芳賀:加えてUNICORNから新たな関連ワードや準指名ワードの存在に気づき、私たちが想定していなかった「見つけられてきた」ユーザー層も明らかになりました。その方たちに向け、アプローチするキーワード群も増やしています。
須藤:そうですね。UNICORNでは、キーワードやセグメントの自動化により、これまでに気づいていなかったユーザー層の反応もわかります。入札対象キーワードの新しいご提案や、新たなユーザー層の発見など、今後のプロモーション戦略に活かしていただけるのではないかと考えています。
テクノロジーを駆使し、一般キーワードのダウンロードが10倍に
──施策の成果を教えてください。
芳賀:機械学習による効率化によって、ブランドキーワード、一般キーワードともに、ダウンロード件数が大きく伸びました。一般ワードは、UNICORNの導入前後を比較したとき、ダウンロードボリュームが10倍ほど上がっています。
以前はASA全体で成果を評価していましたが、現在はブランドキーワードと一般キーワードそれぞれで適正なKPIを設計しています。それぞれの成果を細かく把握できるようになったことで、運用調整や次のプランニングにつながっています。
須藤:ブランドキーワードと一般キーワードの成果がわかるようになったことで、運用の強弱が付けられるようになりました。TVCMや認知型のプロモーションなどを行った際に、潜在層によるブランドキーワードの検索ボリュームが増えるタイミングで入札を強化し、取りこぼしや他アプリへの流出を防ぐとともに、全体の獲得が安価になるため、その機会に一般キーワードの配信を強化するといった具合です。
芳賀:何より、次のプランニングへの納得感が得られました。UNICORNのデータから「予算をどのキーワードにどのくらい配分すれば全体最適化できるか?」がわかり、安心して出稿ができました。
須藤:今回の取り組みでは、芳賀様から「一般キーワードの検索ユーザーに対し、訴求していきたい」と事前にうかがっていました。そのため、私たちからも過去の知見をもとに、「今の市場感でこのキーワードを押さえるには、このくらいの入札単価とCPIが理想です」とご提案することができました。
キーワードの単価には浮き沈みがあるので、タイミングによっては、従来通りのCPIに収まらなかったり、配信ボリュームが減ってしまったりしたときは、他のキーワードで効果を伸ばすなどしてバランスを取っています。その瞬間、瞬間に最適なキーワードを見極めて入札の調整と最適化を実行してきたことが、成果の拡大を後押ししたと思います。
芳賀様としてはチャレンジ要素もあったと思うのですが、私たちを信頼くださり、建設的な議論を交えながら、両社で取り組めました。
芳賀:取り組みの副産物として、UNICORNで様々なキーワードの成果がわかり、コトダマンのASO(App Store Optimization)に反映するキーワード選定の参考情報も得られました。さらにコトダマンに対する市場の反響も見えました。たとえば、「コトダマン」のキーワードを入札している競合タイトルは、時期によって異なります。競合タイトルの動きや意図が温度計のように測れたことは、想定外でした。
テクノロジーを活用し、価値のあるサービスを届ける
──今後の展望を教えてください。
芳賀:iOS14.5リリースのようなユーザーのプライバシー保護は、従来の形だけにとらわれない方法を模索するきっかけとなりました。それゆえに従来の精緻なターゲティングは難しくなってきます。
ただ、私たちマーケターのミッションは、プロダクトやサービスの価値を、多くの方に届けて、伝えていくことに変わりはありません。マーケター自身がアドテクノロジーを理解し、自分たちでチューニングして活用する姿勢が、あらためて大事だなと感じました。
私も、機械学習やアルゴリズムへの理解を深めて、UNICORNのようなプロダクトを使いこなしていきたいです。
須藤:今はASAの運用パートナーとしてミクシィ様を支援していますが、UNICORNから得られる知見やデータから独自の情報を提供し、ASAだけでなく、お客様のマーケティング全体やビジネス成長に貢献できる、マーケティングパートナーになっていきたいです。
横山:私たちUNICORNは、本当に価値のある広告をしっかりお客様に届けていきたいと考えています。ポストIDFA時代に突入し、効果測定やターゲティングに一層の工夫が必要となり、マーケティングは新たな局面に入っています。
クライアント企業の事業・サービスの価値や収益を高めるために、UNICORN社が提供できることは何か? を考えながら、適切なソリューションやテクノロジーをご提供していきたいです。また、App Storeも機能追加や改善により進化しています。ASAのみならず、ASOなども含めたApp Store 全般のマーケティングなど、アプリマーケティング全般のサポートも、強化したいと考えています。