本当にコンシューマが知りたいことを伝えるためのPGM
いまや、コンシューマが求めるすべての情報を公式サイトで提供することは不可能になっています。コンシューマが求めるのは「実際に使ったことのある人の生の声」です。そこでは、公式サイトや広告以外の情報を求めているのです。そうした人々(見込み顧客、購入検討者)の疑問を、公式サイトとPGMの両方を通じて解決することがホリスティック・マーケティングには不可欠です。
「Webは問題解決ツールです」
「企業のマーケターが言いたいことと、お客様が聞きたいことは違うと思います」
という、石井さんの言葉もそれを裏付けています。すでに機能提案の時代は終わっています。そういう分野もまったくないわけではありませんが、コンシューマが知りたいのはデジタルカメラの画素数などではなく、それが「自分にとって本当に使えるのか」や「自分を幸せにしてくれるのか」といった用途提案です。それに企業が答えるのが難しいなら、パートナーに協力してもらえばいいのです。そのためのPGMなのです。
ただし、今回紹介したコミュニケーション・プランニングは絶対ではない、ということは忘れないでください。
「「AUBE」のようにテレビがゴールの商品もあれば、「エッセンシャル」のようにテレビがスタートになる商品もあります。正しく見極めて、適切なところでテレビを使うことが重要です」
この発言からわかるように、すべてにおいてPGM構築を優先するのも間違っています。商品特性や、そのブランドが新規なのか継続なのかによっても変わってくるでしょう。大事なことは、コンシューマが参加したくなる、共感したり、メッセージを共有したくなる仕組みづくりを常に考えるということです。
「本当によい商品なら、何もいわなくても広がっていく」
石井さんのお話をうかがったとき、冒頭のNHKのニュースの話題になりました。連載の第1回の内容について説明し、「Buzzは金で買えない」という主張をしたところ、石井さんは次のようにおっしゃいました。
「ひと記事いくらというのは簡単ですが、それでは決してうまくいきません。それに実際にひとりあたりのコストでは(会場代などを考えると)我々のほうがかかっています。お金を渡すことよりも、よい体験をしていただくことのほうが大事で、本当によければ何も言わなくても広めていただけます」
これこそが、最前線でホリスティック・マーケティングを実践されている方の言葉なのです。WOMの重要性を誰よりもわかっているからこそ、正しいコミュニケーションについて考えることができるのでしょう。
さらに「テレビCMは死んでいない、使い方が変わっただけ」という筆者の発言については、
「同感です。生活者の環境が変わっているのでテレビの意味合いも変わっているだけですね。Webもテレビもすべてを組み合わせて、効果を最大化することがマーケターの仕事だと思います」
という答えが返ってきました。
残念ながら、筆者はテレビCMを使う企業に勤めていないので、今後もテレビCMの効果については伝聞が中心になると思いますが、こうしてさまざまな企業の担当者の話をうかがいながら、知識や経験の共有をしていければと思います。
