乗り越えるべき課題は2つ
サブスクリプションビジネスは盛り上がりを見せているにもかかわらず、BtoBの領域で“モノ”を扱う成功例はそれほど多くない。どのようなところに難しさがあるのだろうか。間下氏は乗り越えるべきハードルとして、(1)オペレーションと(2)営業体制の確立を挙げる。
(1)オペレーション
サブスクリプションプランである以上、チャーンは発生する。返却された商品を次の顧客にどのように回していくか、修理・修繕をどのように進めるか、といった一連のハンドリングが鍵を握る。テレキューブがスムーズに運営できた要因の一つは、「12ヵ月契約を基本としたこと」(間下氏)。モノの出入りが短期間で頻繁に発生することがなくなり、“時間稼ぎ”ができたことで、体制を確立できた。
(2)営業体制
テレキューブも含め、営業パーソンからの提案や導入・設置場所のコンサルテーションが必要になるケースでは、サブスクリプションに即した営業体制が構築されているかどうかも大きなポイントだ。この点、2009年からソフトウェア領域でサブスクリプションを展開してきたブイキューブは、営業体制や評価体系の大きな変更は不要で、販売を始めることができた。
また企業向けテレキューブは、製品の製造を手掛けるオカムラや「テレキューブエントリー」を展開するアイリスチトセといったパートナー企業も販売しているが、プラン拡充を機に、ブイキューブはサブスクリプション販売に注力することに。すみ分けしたことで、効率的な営業活動につなげた。
テレキューブの“高付加価値化”にも注力
BtoCビジネスのサブスクリプションは、顧客接点を持ち続けられることが強みとして知られているが、テレキューブも、そのようなつながりを構築すべく、可能性を模索している。たとえば顧客の同意を得た上で、サブスクリプションのテレキューブの一部にセンサーを設置し、利用動向の調査を実験的に行い、設置場所や増設の提案やサポートが可能だ。販売型と比べて顧客とつながりやすいのは、BtoBビジネスでも共通する特徴と言えそうだ。
テレキューブが今後目指すのは、設置台数の増加、そしてさらなる高付加価値化だ。
「人が集まるオフィスや駅の一等地に設置されている、電源のある防音個室であるという特徴を活かして、ワークスペース以外の付加価値を提供することを目指しています。現在はテレキューブを利用して、金融商品に関する情報提供を行う実証実験を通じて、ニーズを検証するなどしています。他にも、たとえば心拍センサーを活用することで遠隔医療を実現したり、英会話のレッスンに使用することなどが考えられます。身近な場所でよりリッチなサービスを受けられる可能性を広げていきたいですね。
他には、テレキューブの広告事業も始まっています。外側にはラッピングやポスター型の媒体の掲載、ブース内部には、POPの掲示やサンプリングの設置が可能です(図表2)」(間下氏)

テレキューブの躍進に今後も注目したい。
※1 ブイキューブ「2021年12月期第3四半期決算説明資料」より