情報資産を蓄え、活用する環境作りを
リードナーチャリングもBtoBマーケティングにおいては重要だ。富家氏は2つのナーチャリングがあると考えを示す。
1つ目が、プロセスを引き上げるための施策実行と検知だ。つまり、マーケティング施策やコンテンツを通して、継続的にアプローチすることで得た顧客に関する情報をもとに、フォローのタイミングや商談機会の打診を検討していくことだ。
そのためには、コンバージョンポイントを細かく用意し、顧客の検討状況に合わせたコミュニケーションを提供していく必要がある。
「マーケティング組織だけでなく、インサイドセールスや営業、カスタマーサクセスなど多くの部門を巻き込みながら、お客様に対してどのようなコンテンツを提供できるのかを考えることが大切だと思います」(富家氏)
2つ目が、商談獲得や受注につなげるための情報収集だ。たとえば、セミナーアンケートやインサイドセールスによるコミュニケーションを通して、検討時期や課題、導入している製品などの情報をCRM上に蓄積していく。あるリード顧客が2年前に競合企業の製品を導入していたならば、製品サイクル上の入れ替え時期には相手が入れ替えを検討しなくても、今がそのタイミングだと積極的にアプローチできる。
「自信をもって打診していくための情報収集がリードナーチャリングだと思っています。情報資産にしたい項目を作り、インサイドセールスのヒアリングやアンケートの項目などで埋めていくという考え方から始めるといいと思います」(富家氏)
つまり、リードナーチャリングで大事なことは情報資産の蓄積と、それをもとにコミュニケーションすることの2点だ。実現のためには、何らかのツールないしはツール群によって企業に関する情報を蓄積・閲覧できる環境を作り、活用できる状態にする必要がある。
「当たり前の話のように聞こえると思いますが、これをどれだけやりきれるかが非常に大事です」(富家氏)
インサイドセールスのKPIはどう設定する?
続いて、富家氏はインサイドセールスのKPIと改善の考え方についても触れた。コニカミノルタでは、次のKPIでインサイドセールスの活動を評価している。
- 電話をかけた「コール数」
- 電話が受付につながった「コネクト数」
- 担当者やキーマンに電話がつながった「コンタクト数」
- 継続的にフォローする相手だと判定できたリード「ナーチャリングリード数」
- 条件を満たしたリードから商談機会を得てセールスに渡した「商談機会獲得数」
- 引き渡した商談でセールス側が有効だと判断した「有効商談数」
インサイドセールスがどのようなアクションをして、最終的にどのような成果につながったのかを追えるようになっている。すべての活動を定量的に把握することで、課題を特定しやすくしているわけだ。
たとえば、コネクト率が50%ならばリストの質を確認したほうがいいだろう。コンタクト率が低ければオープニングトークに改善の余地があると考えられる。また、「有効商談数までインサイドセールスのKPIに入れることがポイントです」と富家氏は言う。
最も避けたい事態は、インサイドセールスが商談数のKPIを達成するために確度の低い商談や受注につながる見込みが低いお客様を営業に渡してしまうことだ。営業は可能性の低い商談の対応にリソースを取られ、本来の受注活動に十分なリソースを割けなくなってしまう。また、有効商談化率を数字で捉えて、対策することはマネジメントにおいて欠かせない。さらに、マーケティング組織そのものがパイプライン(売上見込み金額)管理や受注を目指すならば、有効商談数はKPIとして避けられない。
トスアップ条件はどう決める?
インサイドセールスから営業にリードを渡す(トスアップ)条件も、課題となることが多い。トスアップの条件は適宜見直すものだとしながら、富家氏は条件を決める際のアプローチを次のように示す。
まず、インサイドセールス側で受注した企業の売上高や従業員数などを分析していく。次に、受注した商談をもとに検討時期や導入決定の要因などを分析する。これらの分析結果をもとに条件を決めたうえで、営業側とのすり合わせを行う。そして、設定した条件で十分な商談の供給量が担保できるかを確認する。最後に、除外条件を決めて取りこぼしを減らす、という流れだ。
「営業とのすり合わせを絶対にやってください。受注と相関がある条件であることが重要です。また、供給量の観点も大事です。営業の意見だけを取り入れると、既に導入予算が決まっているリードだけが欲しいといった話になってしまい、PDCAを回せない数の商談しか渡せない、ということになりかねません」(富家氏)
トスアップの条件はマーケ施策にも活用できるため、マーケ担当も積極的に関与していくことが望ましいという。