「リテール」事業の価値は「物品の宅配」の、向こう側
「デリバリー」や「宅配」事業のP/Lの黒字化を急ぐことも重要だが、同時に成長ステップでは『B/S視点での事業の「飴玉」』を意識したい。筆者は、繰り返し「医療・金融・保険・教育」の4分野のサービスの枠組みと繋がる可能性を示唆している。たとえば、「医療」領域とは、「医師免許」が必要な処方箋や手術の分野を指す。
Woltジャパンが見せた施策として、イオン九州やツルハと提携し、店頭医薬品(うがい薬や目薬、風邪薬など)のデリバリー・サービスを開始した努力は賞賛する(参考記事)。ただし、これらは宅配品目に汎用品を加えたに過ぎない。これらの商品は「大衆薬(OTC薬)」の名のとおり、棚から誰でもとれる不特定な多数向けであり、個人への処方をともなう「医療分野」とは別物と考える。
デリバリー事業体は、単なる「物品の宅配」を「スケール化」できて、初めてトントンの収益となる「ほぼ、社会インフラ」のようなパイプ事業になっている。即座の採算を取る目的でないパイプ・インフラを敷設したその上で、「お任せしたい」「頼りたい」の信用繋がりでの会話を想定してみたい。
※1 EBITDA:財務分析上の利益概念のひとつ。税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却などを足し戻した利益。
※2 Foodpandaを買収したDelivery Heroのグローバル全体のEBITDA調整後での額。数字はすべて1ドル=110円で換算。
※3 EBITDA調整後での赤字額。「Uber Eats部門」の赤字決算は、2020年の全社での純損失(約7,470億円)から利払い、減価償却、ストックオプションなど約4,240億円を足し戻したEBITDAを使用し、さらに本社販管費の2,300億円を加味していないという立ち位置だ。
※4 EBITDA調整後での額。