定量×定性でクリエイティブのPDCAを回す
MZ:アルファアーキテクトさんも動画広告の制作から配信までワンストップで実現可能なソリューション「VeleT」を提供されていますね。御社は動画クリエイティブについて、どうお考えですか?
磯野:弊社では、「実際にそのクリエイティブが受け手にどう伝わったのか」を定量と定性の2軸で分析してPDCAを回しています。いわゆるCPA軸、視聴率やCPC、視聴完了はもちろん、ビュースルーCVやサーチリフトをメインに、動画を見た人がその後どういう行動を起こしたかを定量化しています。
定性面ではアンケートやインサイト調査、動画視聴後の態度変容調査など数値には出にくいユーザーのリアクションを可視化して、クリエイティブの良し悪しの判断をしています。その繰り返しですね。クリエイティブが少し違うだけで評価にかなりの差が出てきます。クリエイティブの要素を可能な限り分解して、各動画のポジティブな部分を組み合わせたらどうなるかなども考えています。
インサイトからクリエイティブを改善した例では、美容系の脱毛エステの広告について「女性が脱毛したいシチュエーション」を調査しました。すると、「恋人ができそうだからお手入れしなきゃ」というインサイトが見えてきました。脱毛やエステなどの広告はキラキラしたきれいな女性で訴求するクリエイティブが多いのですが、趣向を変えて男性とデートをする前のシチュエーションなど、少しユニークでエッジの効いたクリエイティブを用意したところ、良い結果が出ました。
このように、良かった点はしっかり踏襲した上で、それまでの配信実績の数値を見て、次のアプローチを提案し、しっかり最適なクリエイティブ動画の制作をする。この一連の流れを繰り返すのが弊社のPDCAですね。
この取り組みをさらに細分化してPDCAを回されるのがフラッグシップオーケストラさんの強みだと思っています。普通はそこまで量産するのは難しいですから。そこで弊社の場合は、様々なマーケティング調査ができるツールやAIツールのようなソリューションによって大きな方向性やシフトチェンジを提案して、クリエイティブの制作や調整をフラッグシップオーケストラさんに依頼しています。パターン化するのが得意な企業様と組んで質と量の両軸でしっかりとクリエイティブのPDCAを回すことが一番の理想ですね。
MZ:クリエイティブのPDCAについて、クリエイティブは良くてもパフォーマンスが落ちているというケースもあると思います。そこはいかがお考えですか?
磯野:そうですね。デジタル広告の性質として、時期によって1インプレッションあたりの価値が大きく変動します。仮にクリエイティブパワーが上がっても、その時期に競合他社の出稿が多くなると1広告の1インプレッションあたりの買付単価が倍に跳ね上がることもあります。結果として、「クリエイティブはいいかもしれないけどパフォーマンスは落ちている」というケースはあり得ます。ですからクリエイティブのPDCAで重要なことは定点観測だと思います。デジタル広告の特性も鑑みて、初月のみの評価ではなく少なくとも2~3ヵ月はレートなども含めて追っていく必要があると思います。
「動画の何秒目にどんな要素があると効果的か」がわかる強さ
MZ:動画広告のクリエイティブは様々なパターンを試し、定点観測することが非常に大事だとわかりました。その中で、アルファアーキテクトさんの「Adaup」はクリエイティブ改善にどう関わってくるのでしょうか。
磯野:先ほど申し上げたとおり、弊社では定性と定量の2軸で分析してPDCAを回しています。定量的な領域においては、個々の企業のクリエイティブ評価だけでなく、近しい業種同士でもクリエイティブの比較や評価が気軽にできないかと考えました。広告主様からすると、成果が出ているクリエイティブの良いところが欲しいわけですから。
また、「VeleT」で、蓄積した広告配信側のアクチュアルデータをうまく活用したいと思っていました。データ資産を使って動画をロジカルに分析し、市場でヒットしている動画や、好評な動画のクリエイティブと比較して評価を可視化できるツールがあれば良いのではないかと考えました。そこで開発したAIソリューションの機能の内の一つが動画広告の制作PDCAを支援するツール「Adaup」です。要素の分析比較と、配信後のクリエイティブ効果の予測がツールとしての主な機能です。
動画は静止画バナーよりも構成要素が多く複雑です。パラパラ漫画をイメージしていただくとわかるかと思いますが、動画広告の15秒や30秒といった尺の中に、人物やロゴ、キャッチコピーやテキストなどの構成要素が大量に含まれています。その構成要素を自動的にAIで解析して、データベースに蓄積されたパフォーマンスの良い動画の要素同士を比較分析します。これにより、広告配信のKPIにおいて、各構成要素がどれぐらい重要なのかを把握できるのです。また、実際にそのクリエイティブを動画広告配信した際のインプレッションやCPCなどのパフォーマンス予想が可能です。
MZ:「Adaup」を使うと、どういったことが実現できるのでしょうか。
磯野:広告主様が最終的に気になるのは、その動画広告のパフォーマンスです。ですが、広告を作って配信してみなければ結果はわかりません。AIツールを使うことで、制作予定の動画の構成要素が他社と比較して不足がないか、もしくは過剰すぎないかなどがわかります。また、決まった尺の中でどこにどの構成要素を出せば効果的かといった企画構成のヒントも提示できます。