離脱率の改善をロジカルに提案
鈴木:現在の動画制作現場の課題は、動画の企画や構成、分析のクオリティが広告やクリエイティブのプランナーの能力に委ねられている点です。属人性が高いのです。動画に深い知見を持つ、動画広告クリエイティブの専門家を増やさなければ事業もスケールできません。
一方でアルファアーキテクトさんのAIツールを使用すると、たとえば「動画の6~10秒で急に離脱率が高くなるのは、アニメーションから実写に切り替わっているからだ」「過去のデータから見ると、アニメーションを続けたほうがよさそうだ」など、詳細な原因と改善案を教えてくれるのです。
広告動画は効果の高低や、その原因をデータとしてどんどんAIに蓄積していけます。将来的には、お客様に出すアウトプットが担当者によって変わることなく、平準化できる可能性もあると思います。
MZ:AIに必要な構成要素を割り出してもらうことで、プランナーは「では、どんなアニメーションで訴求するといいか」といった具体的なクリエイティブを考えられるわけですね。分析はどのように行われているのでしょうか?
磯野:分析の仕方としては、企業を業種カテゴリーに分け、その大カテゴリーにおいてベンチマークとしている同業種または近しい業種の特に良い結果が出ているクリエイティブとタグ要素で比較します。要素の出現数(秒単位)×出現範囲(サイズ)×出現時間(何回)などでポイントを振り分け、ターゲット企業と類似したKPIを設定しているクリエイティブとの差異を見るのです。
たとえばクライアントの動画広告と比較対象のクリエイティブを比べた時に、最もギャップが大きかった点が「人物」だとします。さらに比較を進めるとクライアントの動画は「女性」要素がかなり少ないことがわかりました。この結果から、数字的根拠を持った上で「次回は実写で女性をメインキャストにしましょう」といった提案ができます。
テストケースでは、次の動画で女性をメインキャストにした結果、KPIが全体的に前回に比べて向上しました。その企業様には「ここまで具体的なロジックに立ったクリエイティブの提案は受けたことがない」とおっしゃっていただきました。
鈴木: ロジカルな点は営業面でも意義深いですね。「これから動画マーケティングをやってみようか」というお客様に対して、過去のデータや実績を活かして、想定されているクリエイティブの効果見込みをお伝えできます。ロジックがあるので広告主様の判断基準となり、納得感をもって取り組んでいただけますし、企画の軌道修正も可能です。動画広告を出稿してみないと効果が見えないという不安が解消でき、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
今後はCRM領域にも拡充を
MZ:今後、このAIツールを活用して、動画マーケティングにおいてどのような価値を提供していかれるご予定でしょうか。
磯野:Adaupは、広告主様が直接ツールを使用される場合と、フラッグシップオーケストラさんのようなベンダーサイドの企業様が活用される場合を想定しています。どちらのケースでも定量的な根拠を可視化し、判断材料のロジックを強化できると思っています。お客様のクリエイティブ企画が進行しやすくなったり、ベンダーサイドの提案がしやすくなったりするでしょう。仮説をもって制作に入れる点でバリューを出せると思います。
MZ:競合他社によるAdaupの活用も予想されますが、フラッグシップオーケストラさんは動画制作でどのような価値を出していかれたいですか。
鈴木:我々の強みは、やはり量産です。低コストで大量の広告動画を制作できる面にプラスして、Adaupによって、広告出稿のPDCAの中で一定のクオリティを担保しつつもテストの本数自体を減らせています。効率化によって得た時間で年齢層、性別、年収、地域などの属性に合わせてクリエイティブを変えることも可能となりました。クリエイティブの幅と深さに配信対象という変数も加えることで、一層バリューを出していけると思っています。
磯野:弊社は配信もしていますので、広告主様にとって最適なパフォーマンスのメディア配分、メディアアロケーションの部分でのAI機能もリリース予定です。また、オーディエンスターゲティングとして、購買行動のデータを蓄積することで、実際の購買客はどのセグメントなのか、お客様のCRM領域にも取り組める新しい機能を提供していければと思います。ソリューションの提供によって、動画広告のクリエイティブ改善を様々な角度からご支援していきたいですね。