「ブランディング=認知獲得」は半分正解
広義のブランディングに事業のマーケターが向き合っても、優先度はなかなか上がらない。そこで、沢村氏が所属する事業部門とは別に専門チーム「freee brand studio」が広義のブランディングを担当。映画祭やフェスなど、事業側ではトライしにくいことにも取り組んでいるのだ。

そもそも狭義のブランディングはなぜ必要なのか。沢村氏はマーケティングファネルを用いて解説する。

「upper(認知)」「middle(興味・購買意向)」「lower(購買)」にファネルを分けた場合、定石として最初に取り組むのはlowerを購買へと向かわせるための改善だが、沢村氏は次のように考えた。
「改善はわりとすぐにやりきってしまいます。事業をより成長させたい場合、ファネルをupper側に上げてトライする必要があるのではと考え、ブランディングを強化しました」(沢村氏)
ここで「ブランディング=認知獲得なのか」という一般的な議題について「半分Yes半分No」と沢村氏。
「マーケティング活動である以上、購買につなげないと意味がありません。『まずは認知をとりにいく』という戦略ありきなら価値あるブランディングと言えますが、とりあえず認知だけ上げようとする姿勢は得策ではありません」(沢村氏)
freeeでも、認知のみを上げるトライが大きな効果をもたらさなかった例を持つ。沢村氏は「middleやlowerに対する仕掛けができていなかったため、最終的なROIは上がりきらなかった」と振り返り、単なる認知だけがブランディングではないとした。
時間軸を含めた大方針に基づくメディアプランニング
続いて両者は、ブランディングにおけるメディアプランニングやクリエイティブ制作の方法論を解説。石田氏は「時間軸を含めた方針」「ターゲット」「何を伝えるか」をポイントとして挙げる。

「単に名前だけを認知させる場合、ターゲットや訴求内容をさほど細かく分ける必要はありませんが、具体的な訴求では変えていく必要があります」(石田氏)
では、具体的にどのようなタッチポイントで施策を展開していったのか。その全体像が下図だ。

左側はマス広告を使った認知特化の施策だ。右へいくにつれ訴求内容が細かくなり、施策も細分化。デジタルを活用した施策はプロダクト別に展開し、各プロダクトが持つ価値を重点的に訴求した。
沢村氏はfreeeのメディア戦略を先述のファネルに基づき解説。lowerにはサーチを使ってリード・フリーミアムを獲得しつつ、middle、upper側には動画を活用。テレビだけでなく、YouTubeやTwitterなども媒体効率を分析しながら使い分けているという。
