パーソナルデータ利用に対する個人中心のアプローチを展開
太田氏は、過去にDMP(データマネジメントプラットフォーム)やMA(マーケティングオートメーション)のツールを開発してきた人物。現在は、データ活用の透明性確保と、公正なデータ流通を実現する活動を展開している。
「企業側でデータを活用するシステムを作っている中で、データを収集される個人のことが結構見落とされがちだと課題感を持って、データ活用の透明性確保ですとか公正なデータ流通を実現するためにDataSignを立ち上げました。また、一般社団法人MyDataJapanの設立メンバーの1人でもあります」(太田氏)
ほかに、内閣官房 デジタル市場競争本部「Trusted Web推進協議会」、総務省・経産省「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」の委員や、総務省「プラットフォームサービスに係る利用者情報の取り扱いに関するワーキンググループ」、デジタル庁「プラットフォームにおけるデータ取り扱いルールの実装に関するサブワーキンググループ」の構成員もでもある。
MyDataJapanの「MyData」という概念は、フィンランドで生まれた。個人データはこれまで企業が中心となって収集してきたが、個人が自身のデータの主導権を持ち活用していこうという考えであり、その普及活動をする団体として、MyDataGlobalがある。日本で活動するMyDataJapanでは、庫内において個人データに関わる個人情報保護法や電気通信事業法などに関連したパブリックコメントを提出している。
違法ではないのもの、企業の都合で利用されてきた個人に関するデータ
個人データ保護規制というと、企業の目線では規制が厳しくなっているという見方となるが、消費者の目線では、自分たちのデータの権利が強化されることとなる。
この潮流は、2018年にヨーロッパでGDPRが施行されたことを皮切りに世界中で大きく動いている。中国で2021年11月にPIPL、日本でも2022年4月に個人情報保護法が施行となり、2月には電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインも提出された。アメリカでは2023年1月にカリフォルニアのCCPRA、バージニアのVCDPAなどの州法が施行される。このほか、インドのPDPBやオーストラリアAPPなど、世界的に個人データ保護の波が押し寄せている。
こうした規制強化のきっかけの一つとされるのが、アメリカで起きたケンブリッジアナリティカ事件だ。これは、8,700万人のFacebookユーザーの識別データを利用し、2016年のアメリカ大統領選挙に影響を与えた問題で、Facebookには5,400億円の制裁が課せられた。日本でも利用者の同意なくWebの行動履歴を第三者に提供したり、スコアを算出・利用したりする問題や、チャットサービスがユーザーの会話の内容を海外でモニタリングをしていて行政指導を受けるなど、様々な問題が生じ、ネット上での炎上につながり、規制対応をするといったことが繰り返されている。
「これらの企業はちゃんと法令遵守はしていましたが、それは企業目線のコンプライアンス対応という側面が強かったと思います。そのデータを使われるユーザー側の目線で考えられていないために炎上し、そこから規制を強化していく流れが続いています」(太田氏)