コンテンツがクライアントの先をゆく
日本では「クライアントに寄り添う」受け身コンサルの姿勢が見受けられるが、S4 Capitalにおいては「コンテンツ製造者(メーカー)」の立場で、先出しする姿勢で事業を伸ばしている。Appleが「ガラケー」に見向きもせず「iPhone」を登場させたイメージとダブる。
S4 Capitalの主要クライアントの多くはテック系である(図表1)。

それに続くスモールビジネス側のテック・クライアントたちにもS4 Capitalはコンテンツ・メーカーとして先出し投資を行い、共に成長している。たとえば、Amazonの音声読書の「Audible」部門には、Amazonでさえ作り得ないコンテンツを、S4 Capitalが提供している様子がうかがえる。
また、S4 Capitalの売上総利益の構成は、額の大きなクライアント(売上総利益15億円以上)が少数で、9割以上のクライアントは1億円規模という収益構造だ。特筆すべきは、時系列で観察すると、小さい利益のクライアントが主として大きく育ち、共に成長していくモデルが浮かび上がること。「伸びる顧客」に絞った受注を可能にしているのは、「よだれが出るほどのコンテンツや、それに向き合う意思・姿勢」を先出しし続けている結果だ。
そのS4 Capitalだが、2021年の決算で監査のPwCから「待った」がかかり、2022年4月に入ってピーク時の半分の株価が吹き飛んだ。筆者はこれを「新しいことの予兆」として捉えてみたい。ソレル氏の新しい仕組みが先行するあまり、旧来のデューデリジェンスでは追いつけない状態が発生している。結果発表を待ってみよう。