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約70年前の財務諸表だけで企業価値を測れるのか?良い会社の定義を変える「統合諸表ver.1.0」とは

パーパスを基点に「戦略→活動→KPI」を考えていく

MZ:では「統合諸表ver.1.0」の見方、使い方を教えてください。

小布施:「統合諸表ver.1.0」は、財務諸表に代わるものという意味合いもありますが、どちらかと言うと実務的に使えるフレームワークとして開発しました。社内外で広く共有できるよう、極力シンプルでわかりやすい形に表しています。

統合諸表ver.1.0
統合諸表ver.1.0

 ポイントは、これまでは事業の業績だけを見ていたところに「環境」「社会」「社員」の3つを加え、4つの象限で企業価値を可視化する点。企業が持っているパーパスとそれに基づく戦略、実際に行っている活動、各活動のKPIがこの4象限を一覧すればわかるようになっています。企業として目指す理想と現状を確認したり、競合企業と横並びに比較したりできるのも、フレームワークを用いるからこそのメリットだと思います。

MZ:4象限の中心にパーパスがあるんですね。

小布施:はい。パーパスは、4つの象限がバラバラに分断されることなく統合されるために、統合思考の出発点として非常に重要なものです。最近は「ひとまず作ってみた」だけで終わってしまっているパーパスも多いです。その点、統合諸表ではパーパスに沿ってどんな戦略を持ち、どんな活動をしているのか。そして、それぞれどのようなKPIを持っているのかという一連の流れで見ていくので、いわゆるパーパスウォッシュにもなりません。

 もう1つポイントを挙げると、パーパスに基づいた様々な活動が各象限にある中で、その企業を代表するような「シンボリック・アクション」を作ることも重要です。

 たとえば、海外の有名な例として、ドミノ・ピザが行っているキャンペーン「Paving For Pizza」があります。ドミノ・ピザは、デコボコ道ではピザを安全に運べないという理由から、「我々が道を舗装する資金を出すので、直したい道があれば手を挙げて下さい」と、行政と手を組んだ活動を展開しています。これは、「feed the power of possible, one pizza at a time(おいしいピザを短時間で届ける)」というドミノ・ピザのパーパスを達成するものでもあり、社会をより良くすることにもつながっていますよね。その企業ならではの形で、社会をより良くするようなシンボリック・アクションを日本にももっと増やしていきたいと思っています。

社員にも、世の中にも広く知られるシンボリック・アクションを作るとよい。その企業ならではのシンボリック・アクションがあると、それを用いて企業価値を語ることができるようになるため、シンボリック・アクション自体がまた企業価値になっていく
その企業ならではのシンボリック・アクションがあると、それを用いて企業価値を語ることができるようになるため、シンボリック・アクション自体がまた企業価値になっていく

MZ:この統合諸表があれば、社員もパーパスを自分ごと化できそうです。

小布施:そうですね。パーパスは、「自分はこのためにこの会社にいるんだ」と思えるような強い共感と納得を生むものでなければいけません。我々はそのレベルにあるものを「マグネットパーパス」と呼んでいるのですが、まずはそうした人を惹きつける磁力のあるパーパスを作るところからがスタートです。そして、人の心を動かすことを考えると、やはりそこには一瞬で人の心を捉える専門家であるコピーライターの技術などがあるべきだと思います。

無形資産の指標は、各社で同じものを使うべき?

MZ:複数の企業がこの統合諸表を用いる中で、無形資産を可視化する際のKPIや指標は統一されたものを使っていくのでしょうか?

小布施:それについては、2つの考え方があります。1つは企業ごとに横並びで比較できるよう、みんなで共通の指標を使いたいという考え方。もう1つは、この指標にこそ自社の個性が出てくるから、自社のパーパスに紐づいた指標を用いたいという考え方です。

 私は、これら2つの考え方が並走していくだろうと見ています。たとえば、役員の女性比率を開示する動きはすでに広まっていますよね。コーポレート・ガバナンスコードを改定して非財務指標を開示していこうという動きもあり、全社共通して公開すべき事項がこれから決まっていくのでしょう。一方で、パーパスそのものを具現化したような、その企業ならではの非財務指標についても、各企業で議論が活発になっていくだろうと考えています。

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モノを売るだけがマーケテイングではない。マーケターの役割も変化していく

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/06/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/39094

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