工務店向けWebサイトでパートナーが求める情報を提供
3つ目の施策である「工務店会員登録制Webサイトの提供」として、YKK APは「A-PLUG」という会員登録制のWebサイトを提供している。同サイトは同社の商品を販売している工務店やビルダー、リフォーム専業店が対象で、業界の最新動向や家造りのノウハウといった現場の情報をはじめ、施工品質の向上や経営・集客の改善取り組みなど、住宅建築に携わる業者が必要としている情報のポータルサイトとなっている。
サイトの運用は2016年。以降、コンスタントに会員数を伸ばしてきたが、2020年のコロナ禍で会員数は急増した。現在は会員数が約2万名で年間PV数は約50万PV。サイトの運営に携わるYKK APのスタッフは約3名だという。
会員からの評判は上々だ。工務店からは「現在の現場の問題提起をし、最先端の考えを持つ方の意見を掲載しているところがよい。リアルな切り口の話は他では見ることができないコンテンツ」「現場のクレームにつながりやすいことなど、実際的な現場の不具合例がなまなましく感じられて大変勉強になる」といった声が上がっている。
また、設計事務所からは「A-PLUGで仕入れた知識がお客様とお話しするときに元ネタとして役に立った」、建材流通店からは「最新の断熱工法や、断熱性能重視のリフォームの施工内容を、写真などを通して知ることができた。こうした情報は提案力に差が付く」と評価されている。さらに、YKK APでは同サイトの会員限定で年間12回のウェビナーを開催し、断熱設計・施行や増改築の提案強化など、会員の仕事に役立つ実践的なテーマでのセッションを実施している。
清水氏は「こうしたデジタル施策は試行錯誤の状態だが、今後も継続していきたい」と期待を寄せる。同時に、リアルなコミュニケーションも重要視しており、状況を見ながら復活させる計画。「リアルとオンラインが共存し、両者のよいところをミックスして使っていきたい」としている。
今後も有用な情報が届く接点・手法を開拓する
最後に清水氏は今後の展望とともに、YKKグループの経営理念を紹介した。
YKKグループは企業の基本姿勢として「善の巡環」を掲げ、他人の利益を図らずして自らの繁栄はないとしている。その中でYKK APのパーパス(存在意義)として、「Architectural Productsで社会を幸せにする会社」を打ち出した。そこには、「YKK APが提供する情報を受け取ったユーザーや企業が幸せになっているかを追求すると同時に、商品力と技術力に磨きをかけ、顧客体験を向上させていく」という意味が込められている。
清水氏は「そのためには、(顧客や工務店・流通店に対して)有用な情報を提供するための手段や接点の作り方はますます重要になっている」と指摘。今後、紙媒体の利用は削減すると同時に、新媒体や新ツールなどは「とにかく試してみることが大切だ」と力説した。
