Web展示会による成果は?
Web展示会は、運営に専門メンバーを設けず、商品企画や広報、デザイン、カスタマーサポート部門など多彩なメンバーが企画立案・運営に携わった。Webの構築やコンテンツの制作は主にオンライン上で実施し、在宅勤務のスタッフや複数の外部制作会社とコラボレーションしながら約1ヵ月半で作成。コンテンツは動画をメインとし、オンラインで撮影した商品のプレゼンテーション動画も多数用意した。
掲載する情報で心がけたのは、広報と宣伝コンテンツのバランスだ。来場者動員施策の一環として、ニュースリリースや広告出稿、自社媒体での紹介など、露出が可能な媒体で積極的に告知した。その結果、2020年6月から12月までの半年間で27万ユーザー(Webセッション数)、さらに翌年の2021年には35万ユーザーが訪問したという。

こうした数字はリアル展示会でアプローチするボリュームとはケタが違う。清水氏は「コロナ禍が収束すれば、リアル展示会やコロナ以前のビジネス活動が再開される。その場合でもWeb展示会は継続したいと考えている」と語った。
アプリにあってメールにない優位性とは
2つめの施策である商品情報アプリは、新製品の情報をはじめ、ニュースリリース、自社製品のWebカタログ、商品動画チャンネル、商品FAQや問い合わせポータルを提供するものだ。自社の営業社員と流通店向けの2種類を用意しており、現在は7,000名程度の利用者を擁するという。

商品情報アプリの提供に至った背景には、「メールによる情報発信に依存しすぎていたこと」が挙げられる。これまでは大量のユーザーに対して頻繁にメールを配信していたが、それが読まれているか確認できていなかったという。YKK APは同アプリを提供することで、前線で働く営業社員やYKK APの商品を取り扱う流通店に対し、ダイレクトかつタイムリーに情報が届けられる環境を作り上げたのだ。
「アプリであれば、どのくらいの閲覧があったのかもすぐに確認できます。これにより(閲覧率改善の)PDCAを素早く回すことが可能です。また、アプリには400種類を超えるのカタログが格納されており、検索機能も備えているので出先ですぐに商品情報を確認することもできます」(清水氏)
アプリは専用開発せず、提供されているプラットフォームを活用した。YKK APの担当者は3名であり「大規模な組織ではない」と清水氏は語った。基本的にパッケージで提供されているサービスをサブスクリプション(月額課金)で活用している。これにより開発費の低減を図り、迅速な機能追加やアプリの改変を実施することが可能だ。