Facebook Japan、電通それぞれの取り組み&ソリューションを紹介
MZ:続いて、データ活用の透明性を高めながらパフォーマンスを追求していくために、Facebook Japanさん、電通さんがどんなシステム基盤やソリューションを提供しているか教えてください。
田中:Metaではピクセルを補完する技術として、コンバージョンAPI(CAPI)を用意しています。2年以上前に提供を開始し、導入事例を紹介してきました(参考記事一覧)。
CAPIはブラウザを経由せず、広告主のサーバーからMetaのサーバーへと、データを直接やり取りすることができる仕組みです。エンジニアが設計・実装するAPIであることから、広告主自らが送付するデータの全貌を把握・デザインできます。
他方、自由度の高さを担保している分、導入の難易度が上がってしまう側面があります。そこで電通さんには黎明期から、支援パートナーとして広告主企業への導入支援を引き受けていただいています。
三谷:生活者の利便性がわかりやすい透明性の高い広告環境を実現するために、広告業界のプレイヤーをサポートしていくのが、私たちの責務です。知見を集約できる立場にある当社だからこそ、積極的に役割を引き受けていきたいと考えています。
CAPIの実装に関連する動きとしては、昨年、Cookieに依存しない新計測基盤として「X-Stack Connect(クロススタック・コネクト)」の提供を開始しました(プレスリリース)。X-Stack Connectはプライバシー保護と計測環境の維持を両立するため、サーバーサイドのアクセスログとフォームの入力情報の両方を使った計測に対応しています。
また、同一の基盤で複数の広告プラットフォームに対応できるようなアプローチを採用しています。技術的サポートに留まらず、許諾取得のためのコンサルティングや、CMP(コンセント・マネジメント・プラットフォーム)との接続まで、一気通貫で提供しています。
田中:CAPIの実装においては、電通さんのようなパートナーにデータ活用のデザインのフェーズから全面的なコンサルテーションを依頼するパターンの他にも、Metaが提供するCAPIゲートウェイというソリューションを活用し、広告主に自ら実装いただく選択肢も用意しています。
データをサーバーに直接送付するという基本的な仕組みはCAPIと変わりませんが、あらかじめパッケージ化してある部分が多いため、CAPIと比べて実装の労力やコストを減らすことができます。もちろん省力化できるといっても、送付データの選択など重要な透明性の高さは維持されています。あくまでエンジニア自らがコード書いてデバッグしなければならないという点を削減することで効率化を後押ししています
デバイス横断でジャーニーを観察できる新手法も
MZ:プライバシー保護とパフォーマンスを両立していくためのソリューションが、具体的に用意されていることがわかりました。他にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
三谷:特に期待している取り組みに、Metaさんが提供しているデータ統合基盤「Facebook Advanced Analytics」があります。これはデータクリーンルームと呼ばれる、各プラットフォーム事業者が提供する分析基盤のひとつとして位置付けることができると我々としては考えており、これを活用することで、生活者個人を特定することなく、企業のデータサイエンティストがデータの統合や分析のためにアクセスすることができます。電通と電通デジタルでは、この統合基盤を活用したマーケティング施策の分析ソリューションを国内で初めて提供しており、既に40件以上の広告主様に活用いただいております(プレスリリース)。
Metaさんの大きな強みは、Facebook、Instagram、Messengerといった複数のサービスを、デバイス横断・同じIDでシームレスに活用できるところです。オムニチャネル化が進行し、「ネットで広告を閲覧し、店舗で購入する」といった行動が当たり前になっていますが、広告主としては、そのような顧客の行動を精緻に追っていくのは難しい状況でした。たとえば会員システムを導入し、顧客にその都度登録・ログインをお願いするというやり方がありますが、コストがかかる上に、どうしても欠落が出てしまっていたのです。
この点、Facebook Advanced Analyticsを使うと、広告の接触から実店舗での購買に至るオムニチャネルでの顧客のジャーニーのありかたを観察し、「どのタイミングで後押しとなるようなメッセージを送るのが適切か」を分析することが可能です。
チャネルやファネルを横断した統合的な顧客体験は、生活者にとって快適なものですので、結果として広告主の事業成長への貢献にもつながっていきます。これは電通の目指すIntegrated Growth Partnerとしての価値提供のひとつの形にもなっています。
Advanced AnalyticsもCAPIと同様、自由度が高いものですので、この分析基盤をどう活かすかは、実装する企業が主体的にデザインしていく必要があります。したがって我々電通では、どういった分析をすれば、生活者にデータを提供いただいた価値を還元し、クライアント企業の利益につながるのかという設計・実装領域をお手伝いしています。