少ない予算でできる、“社会課題を知ってもらう”ための話題作り
しかし、創業したてのBABY JOBには知名度も予算もない状態でした。そこで、限られた予算を使ってレバレッジを効かせるために最初に取り組んだのが以下の施策です。
・アワードへの応募
・ピッチ、アクセラレータプログラムへの応募
・団体設立
・クラウドファンディング経由での意見広告
・おむつの持ち帰りに関する調査リリースの発表
1つ目のアワードへの応募に関して上野氏は、「応募できるアワードには片っ端から応募した」と語っています。その結果、賞自体の注目が高かった『日本サブスクリプションビジネス大賞2020』のグランプリを受賞。テレビ放映などを通して、多くの生活者やメディアにBABY JOBの存在やおむつのサブスクリプションサービスについての認知を広げることができました。
2つ目のピッチやアクセラレータプログラムへの応募でも、受賞に関するプレスリリースの配信によってメディア露出につなげることができたほか、賞の獲得によってサービスへの信頼も得やすくなりました。また、様々な場所で登壇するとBABY JOBの事業や想いに共感する人が「何か一緒にしたい」と声を掛けてくれるそうで、仲間集めとしても機能しています。
3つ目の団体設立は、予算を割かずに社会課題を知ってもらう方法を模索する中で生まれたアイデアです。「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」という団体を自社内に作ることで、ニュースを作ることに成功しました。
4つ目のクラウドファンディングを活用した意見広告では、賛同者から寄付を募ることにより、少ない予算で紙おむつの持ち帰りに関する社会課題の認知拡大に成功しました。

そして、5つ目の調査リリース(「使用済み紙おむつを保護者に持ち帰らせている公立保育園 」)は特に効果の高かった施策です。全国の自治体に直接電話しておむつの持ち帰り状況を調べ、過去に例のないデータを公開したことで注目を集めました。
これら5つの施策を通して、おむつの持ち帰りという社会課題自体の認知が高まり、この分野に関心を持ったメディアから平均して1日1件以上もの取材依頼が来るようになりました。
BABY JOBでは、こうした施策を経営陣とマーケティング課に所属するデジタル担当(広告、オウンドメディア、SNS)、広報担当、デザイン担当が、日々情報交換しながら一緒に企画、実行しています。
BABY JOBの成果の裏にある経営陣のコミットメント
しかし、なぜ創業数年のBABY JOBがここまで順調にこれらの施策を企画、実行することができたのでしょうか?
BABY JOBの成功の要因は、ずばり経営陣の広報活動に対するコミットメントの高さにあります。第1回の記事でも指摘した通り、トップのコミットメントは広報活動の成果に直接影響します。
団体の設立や意見広告の出稿という、自社の立ち位置や価値観を前面に押し出す施策を現場の担当者だけで企画することは困難です。トップが先頭に立って会社が目指す方向性をマーケティング担当や広報担当と常に共有し、必要な決断を迅速に下す環境があったからこそ、これらの施策がスムーズに検討され、実行に至ったと言えます。
上野氏は「まず課題があることを知ってもらえないと支援サービスの価値が理解されることはない」という考えから、「知ってもらう活動にコミットするのは当然なこと」と話しました。

このようにBABY JOBでは、トップの高いコミットメントのもと「課題を知ってもらう」ことを最優先にマーケティング、広報の区別なく最適と考えられる施策を実行しています。これによって社会課題の認知を着実に高め、BABY JOBが提供する支援サービスのユーザーを短期間に効率よく増やすことに成功しています。