SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

マーケターが知っておきたいBtoB企業広報の基礎知識

BtoB企業こそ広報とマーケの連携が重要。成果を出しているスタートアップの事例を紹介

少ない予算でできる、“社会課題を知ってもらう”ための話題作り

 しかし、創業したてのBABY JOBには知名度も予算もない状態でした。そこで、限られた予算を使ってレバレッジを効かせるために最初に取り組んだのが以下の施策です。

・アワードへの応募

・ピッチ、アクセラレータプログラムへの応募

・団体設立

・クラウドファンディング経由での意見広告

・おむつの持ち帰りに関する調査リリースの発表

 1つ目のアワードへの応募に関して上野氏は、「応募できるアワードには片っ端から応募した」と語っています。その結果、賞自体の注目が高かった『日本サブスクリプションビジネス大賞2020』のグランプリを受賞。テレビ放映などを通して、多くの生活者やメディアにBABY JOBの存在やおむつのサブスクリプションサービスについての認知を広げることができました。

 2つ目のピッチやアクセラレータプログラムへの応募でも、受賞に関するプレスリリースの配信によってメディア露出につなげることができたほか、賞の獲得によってサービスへの信頼も得やすくなりました。また、様々な場所で登壇するとBABY JOBの事業や想いに共感する人が「何か一緒にしたい」と声を掛けてくれるそうで、仲間集めとしても機能しています。

 3つ目の団体設立は、予算を割かずに社会課題を知ってもらう方法を模索する中で生まれたアイデアです。「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」という団体を自社内に作ることで、ニュースを作ることに成功しました。

 4つ目のクラウドファンディングを活用した意見広告では、賛同者から寄付を募ることにより、少ない予算で紙おむつの持ち帰りに関する社会課題の認知拡大に成功しました。

 BABY JOBが実施したクラウドファンディングのページ
BABY JOBが実施したクラウドファンディングのページ

 そして、5つ目の調査リリース(「使用済み紙おむつを保護者に持ち帰らせている公立保育園 」)は特に効果の高かった施策です。全国の自治体に直接電話しておむつの持ち帰り状況を調べ、過去に例のないデータを公開したことで注目を集めました。

 これら5つの施策を通して、おむつの持ち帰りという社会課題自体の認知が高まり、この分野に関心を持ったメディアから平均して1日1件以上もの取材依頼が来るようになりました。

 BABY JOBでは、こうした施策を経営陣とマーケティング課に所属するデジタル担当(広告、オウンドメディア、SNS)、広報担当、デザイン担当が、日々情報交換しながら一緒に企画、実行しています。

BABY JOBの成果の裏にある経営陣のコミットメント

 しかし、なぜ創業数年のBABY JOBがここまで順調にこれらの施策を企画、実行することができたのでしょうか?

 BABY JOBの成功の要因は、ずばり経営陣の広報活動に対するコミットメントの高さにあります。第1回の記事でも指摘した通り、トップのコミットメントは広報活動の成果に直接影響します。

 団体の設立や意見広告の出稿という、自社の立ち位置や価値観を前面に押し出す施策を現場の担当者だけで企画することは困難です。トップが先頭に立って会社が目指す方向性をマーケティング担当や広報担当と常に共有し、必要な決断を迅速に下す環境があったからこそ、これらの施策がスムーズに検討され、実行に至ったと言えます。

 上野氏は「まず課題があることを知ってもらえないと支援サービスの価値が理解されることはない」という考えから、「知ってもらう活動にコミットするのは当然なこと」と話しました。

BABY JOBのマーケティング&広報体制・活動
BABY JOBのマーケティング&広報体制・活動

 このようにBABY JOBでは、トップの高いコミットメントのもと「課題を知ってもらう」ことを最優先にマーケティング、広報の区別なく最適と考えられる施策を実行しています。これによって社会課題の認知を着実に高め、BABY JOBが提供する支援サービスのユーザーを短期間に効率よく増やすことに成功しています。

次のページ
活動目的が違うマーケと広報が連携し、成果を生み出すカミナシ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
マーケターが知っておきたいBtoB企業広報の基礎知識連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

松田 純子(マツダ ジュンコ)

リープフロッグ合同会社 CEO
 国内外のスタートアップ、中小企業など向けに広報部門立ち上げ支援コンサルティングを行う。伴走型、人材育成型で新人、独り広報の会社でも効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。早稲田大学卒業後、大手求人広告でのコピーライターを経て、IT系メガベンチャー、博報堂系デジタル広告会社で広報業務に従事。経営戦略室マネジャーを経て2019年に起業。現在は、B2B領域を専門にスタートアップから東証一部上場企業まで幅広くクライアントを支援しながら...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/07/29 07:30 https://markezine.jp/article/detail/39519

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング