社内勉強会でDXの必要性を痛感
MarkeZine編集部(以下、MZ):皆さんの業務内容について教えてください。
大久保(霧島酒造):私は霧島酒造において、コミュニケーション施策に長年従事してきました。現在は2022年4月に新設した部署においてDX推進を担当しています。
矢内(電通デジタル):私が所属するのは、Salesforceプラットフォームを中心としたCRMソリューションのプリセールスからデリバリー、活用支援までを一気通貫で行っている部署です。私はその中でも特にプリセールスを担当しています。
久保田(電通九州):私は電通九州でデジタルマーケティングのコンサルティングをしています。担当する範囲としては、Web広告による集客のみならず、CRMやECなどのシステム構築も行っています。
MZ:霧島酒造では、デジタルシフトが著しい昨今の社会情勢を鑑み、全社でDXを進めていらっしゃると伺いました。その背景を教えてください。
大久保(霧島酒造):実は、2018年頃から電通デジタル・電通九州に協力いただいて、公式サイトのリニューアルや公式SNSアカウント、Webマガジンの立ち上げ、MAツールの導入などを徐々に行ってきました。2021年5月、各部門から複数人を選出し、DX推進事務局を開設。まずは社内に向けてDXの重要性を理解してもらうべく、行政や電通デジタルなど複数の取引先を招いて社内勉強会を20回開催しました。
事務局の活動を通してDXによる事業成長の可能性を感じ「やはり当社もDXに取り組んでいかなければならない」という機運が高まったのです。そこで2022年4月にDX推進本部を新設。DXプロジェクト全体が経営層直下のため、情報伝達や決裁のスピードは非常に速いと感じています。
霧島酒造が掲げるDXの「3本柱」
MZ:霧島酒造では本プロジェクトの推進に際し、3つの領域を定められたそうですが、それぞれの概要を教えていただけますか。
大久保(霧島酒造):そもそもDXは全社で取り組むべきではあるものの「デジタルトランスフォーメーション」と聞いても、従業員にとっては内容を理解するのが難しいのではないかと懸念しました。そこで、DXの全体像をわかりやすくするために「製販プロセス」「顧客体験」「従業員体験」の3つの領域に分けました。
大久保(霧島酒造):製販プロセスの変革を社内では「あじわいDX」と呼んでいます。焼酎の製造に関し、原料であるさつまいもの調達から製造管理、物流、販売にいたるまでのプロセスを見直すとともに、効率化に加え、より高品質な製品を提供できる環境の構築を目的にしたものです。あじわいDXの推進を機に、さつまいもが持つ可能性をさらに見出し、当社が培った発酵技術を様々な領域に展開しようとしています。直近では甘酒やクラフトコーラの販売なども行っています。
2つ目の柱が、顧客体験の向上を目指した「くつろぎDX」です。当社のビジネスモデルはBtoBtoCで、顧客は2つの層に分類できます。BtoBの領域では卸店や小売店、BtoCの領域では、実際に商品を楽しんでいただいているユーザーの皆様です。BtoB領域に関しては、消費者の嗜好データに基づいた販促活動と、卸店や小売店とのより密な連携体制の構築を目指し、現在はSFAの導入に取り組んでいます。
BtoC領域に関しては、オンラインショップでの購買データやお客様相談室への問い合わせ、当社が運営する観光施設「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」の来場者データなど、オン・オフあらゆるチャネルの顧客データの統合を目指し、SalesforceのCDP導入を進めています。
3つ目が、従業員体験を向上するための「ひとづくりDX」です。データガバナンスとセキュリティガバナンスの向上をはじめ、AIソリューションやロボットの導入による作業の効率化を促進。クリエイティブな企画の考案など、人がやるべき仕事に集中できるような環境の構築を目指しています。
それぞれの領域の名前は「“霧島らしさ”を感じられるもの」「霧島ブランドを表現できるもの」という観点から検討し、ネーミングしました。