ブランド広告を継続出稿していた企業の好意度は高い
MZ:オンラインと実店舗の双方を意識した顧客の体験設計──いわゆるOMO施策を考える上で、マーケターにはどのような視点が求められるでしょうか。
倉迫(Facebook Japan):オンラインtoオフラインコンバージョンを前提とした場合「SNSやWeb広告などを見て、実店舗でブランド好意度の向上ないしは購買につなげる」といった体験をマーケターは設計する必要があります。そこで大事なのが「ブランディング」と「売上」を分けて考える視点です。
コロナ禍では、業績悪化により広告予算を大幅カットした企業が散見されました。その結果、短期的には広告に掛ける費用が減るわけですからROIは向上したでしょう。しかし、それで「100%よかった」とは言い切れません。カンター社が行った調査「ブランドZ」においては「ここ10年継続してブランド広告を出稿していた企業の方が好意度は高い」という結果が出ました。
倉迫(Facebook Japan):この結果から、長期の目標としてのブランディングと短期の目標としての売上を別々に考える必要性が見てとれます。別々に考えた上で、売上ばかりに目を向けるのではなく、長い目で見てブランディングをすること、つまりLTVを高めることで長期的な売上にもつながると考えます。
中村(コーセー):そうですね。そもそも我々が扱っている「化粧品」という商材は「1回買ってもらえればよい」ものではありません。「お客様に化粧品を通じて喜んでもらう」という姿勢が根幹にあることは今後も変わらないと考えます。
売上につながる指標を見抜くことも重要
MZ:LTVの最大化のためにブランディングが重要である一方「売上やコンバージョンへの貢献度」という指標も、施策を継続して展開する上では重要だと思います。
簡野(Facebook Japan):消費財を扱う企業様では、テレビをはじめとするマスメディアに広告を出稿するケースが多く見られます。デジタルメディアはマスメディア以上にインプレッション数やエンゲージメント率などの「指標」が多いため、現場のマーケターは「どの指標を評価したらよいのか、どの指標が高ければ『売上に貢献した』といえるのかわからない」と混乱しがちです。そうした意味で、デジタル広告の効果の指標と売上やコンバージョンとの相関関係をマーケターはきちんと把握しておくべきでしょう。
安藤(フェズ):そうですね。たとえば組織の経営層に施策の成果を伝える際にも「広告費として100万円を費やした本キャンペーンですが、結果的にクリック数は●●でした」と伝えても、経営層は正直「?」でしょう。売上という指標を示すことは、社内稟議を通す際にも重要だと思います。