パーセプションフロー・モデルの描き方、描く順番は?
最後に音部氏は、『The Art of Marketing マーケティングの技法』で5万字近くかけて書いている描き方をコンパクトに解説した。まず、パーセプションフロー・モデルを埋めるためには、以下の情報が必要になるという。
パーセプションフロー・モデルを描く上で必要な情報
- ・大義(パーパスやビジョン、ミッション、バリューなど)
- ・市場/競合・ターゲット消費者
- ・ベネフィット
- ・ブランドエクイティ
- ・パーソナリティ
- ・アイコン
-
・機能/性能
「特に、ターゲット消費者とベネフィットは明確にしておきましょう。そして、ブランドを定義した上で描くようにしましょう」
そして、モデル内の項目の中でどこから手を付けるべきかを紹介。まず、戦略部分の目的欄と戦略欄を埋めていく。ここを埋めておくことで、残りの項目を書くのに悩んでも立ち戻ることができる。
次に書くのは、消費者の行動とパーセプションの現状。これにより、「現在消費者が行っていること、思っていること」を把握する。その上で興味・購入・再購入の順にパーセプションを記入し、消費者が「欲しい」「買いたい」「再購入したい」と思うときの気持ちを押さえる。
なぜ、このように飛び飛びに記入していくのか。その理由について、音部氏は以下のように解説した。「企業やブランドによって保有するデータの量は異なりますが、欲しい、買いたい、再購入したいときの気持ちに関するデータはどの企業・ブランドでも蓄積されているはず。この3つを明確にしておくと、データに基づいた記述が行いやすくなるのです」
その後、満足と発信段階のパーセプションを記入し、認知と試用に至るパーセプション、残りの行動、知覚刺激、メディア/媒体、KPIの順に埋めていく。音部氏は「マーケターによって、いろいろな描き方があるけれど、経験的にはこの順番が一番描きやすい」とした。
パーセプションフロー・モデル記入時に気を付けるべきこととは?
音部氏はこの順序を説明する中で、注意点をいくつか説明した。まず、パーセプションの変化を促す知覚刺激を描くときに「施策ありきで書かない」こと。すでにテレビCMの出稿が決まっているケースなどがあるかもしれないが、音部氏は例とともにそのリスクを語った。
「たとえば、肉好きのお友達にお中元でローストビーフをクール便でプレゼントしようと考えたとします。これは、『肉好きの友人に喜んでもらいたい』から、『ローストビーフをクール便で送る』わけです。テレビCMの出稿が決まっているなど、施策ありきで知覚刺激を埋めるのは『クール宅急便を使って、誰かに何かをプレゼントしよう』という状態。ダメではありませんが、『誰に・何を』が決まってから施策を埋めたほうが効率的だと思います」
また「売る」ではなく「買う」、「言う」ではなく「聞く」など消費者視点の動詞を使って記入することが重要だという。これにより、消費者視点で書くことができる。その他にも、メディア/媒体のその他には製品情報などを記載すると良いなどのTipsが紹介された。
ここまで、パーセプションフロー・モデルの特徴、描き方について解説してきた音部氏。最後にパーセプションフロー・モデルを描く際に最も大事なことを語り、セミナーを締めくくった。
「25年、50ブランド以上で改良してきたモデルなので、まずはアレンジせずに標準型に習熟することをおすすめします。そして、最初から正解を導けないかもしれませんが、パーセプションフロー・モデルは正解にたどり着くための全体設計図です。繰り返しPDCAを回しましょう。そして、このセミナーだけですべてを理解するのは難しいと思います。活用してみたいと思った方は、ぜひ『The Art of Marketing マーケティングの技法』をご覧ください」