経営戦略の中でDXが議論されているか?
中林氏はDXを成功に導くためのポイントを三つに絞って紹介する。まず大切なのは「経営戦略の中でDXが議論されているか」という視点だ。「テクノロジーやデータ・ドリブンはあくまで手段であり、目的ではない」とした上で、データをヒト・モノ・カネと同様、経営資源として捉え、P/LとB/Sへの貢献を意識しながら施策を考えることが重要だと語る。

二つ目のポイントは「必要な組織を持ち、必要な人材育成ができているか」。経営のアジェンダを実行するためには「然るべき権限と正しい投資が不可欠」と語る中林氏。さらに「集中と分散」を意識した組織づくりが肝要だと話す。
「DXを推進するために中央集権的な組織をつくったり、各部門で独自にDXの組織をつくったりするケースもありますが、ヤマトグループではバランスを重視したハイブリッド型の組織をデザインしています」(中林氏)
DX人材を育てる「Yamato Digital Academy」の開校
ヤマトグループではデジタル人材の採用・育成だけでなく、経営陣も含めた全社のデジタルリテラシーを底上げする活動にも力を入れているという。
「AIや機械学習などの技術を調理器具にたとえるなら、それらを使いこなしてビッグデータという素材を料理し、おいしい食事を生み出す人材が重要です。ヤマトグループでは、全社員がDX人材になるための『Yamato Digital Academy』を開校しました。経営層、デジタル専門人材、事業部門のマネジメント層、現場管理者という四つの層に加え、当社に興味を持っている学生向けのプログラムも提供しています」(中林氏)

三つ目のポイントは「アーキテクチャを描いて実現できているか」という技術的な観点にある。様々なサービスがサイロ化している場合、デジタルマーケティングを行おうとしても「データが連携しない」「システムとつながってない」といった事態が起こりうる。システムを構成するモジュールやロジックがスパゲッティ化しないよう、クラウドファーストでアーキテクチャを設計して進めると、事業のスピードと柔軟性の向上に効果的だという。
テクノロジーとデータを使った顧客体験の変革について「必要なことはすべて話せた」と語る中林氏。次のコメントを本セッションの結びとした。
「今回紹介した一つひとつのサービスや仕組みは断片的に見えるかもしれませんが、いずれもヤマトデジタルプラットフォームの中で展開している施策です。裏側の仕組みを変えることによって、お客様の“受け取り体験”の質を向上しています。ヤマトグループでは引き続き、テクノロジーとデータを駆使してサービスレベルの向上を目指していきます」(中林氏)