テキスト情報は誤解を生みやすい
他方で榊原氏は「テキスト情報にはリスクがともなう」と注意提起。「たとえば、業務中に届いた1本のメールがきっかけで、メンバー間に諍いが起きるとします。しかし、直接会って話をすれば『なんだ、そういうことか』と誤解が解ける。つまり、動画などと違ってテキストはどうしても誤解を生みやすい傾向にあります」(榊原氏)

リスクを踏まえ、規模が比較的大きな企業のトップが社外へ発信する際のアイデアとして、ライターなど外部のプロフェッショナルを雇う選択肢も提案する。質問者に対しては「役員に発信してもらいたい理由をきちんと認識し、役員とすり合わせておくことが重要」と回答。単に「流行りだから」ではなく「企業のブランドイメージを向上させたいから」など、理由を明確にすればSNSやブログでの発信は“武器”になるという。
榊原氏は、たとえばTwitterについて「1投稿につき140文字以内と文字数に制限があるゆえに誤解が生まれやすく、また拡散性の高さからいわゆる炎上が起こりやすいSNS」だと指摘。自身の友人の話を例に挙げ、こうも語る。
「友人は学生時代に起業し、VCなどから資金調達を受けていました。成功して気が大きくなったのか横柄な態度を取るようになり、その態度がSNS上の発信にも表れて炎上。結果的に倒産してしまいました。この例は、SNSとの相性が良くない人も一定数存在するということを示唆しています。SNSでの発信を通じて影響力を高めている方は、概して高いSNSリテラシーを持っていらっしゃる印象を受けます」(榊原氏)
SNSの目的は「発信」か「情報のストック」か
SNSに関しては、セッションの聴講者からも以下の質問が挙がる。
SNSの重要性は理解しつつも、発信することに対してはどうしても敬遠してしまいます
この悩みに対し、榊原氏は「なぜSNSを使っているのか」と逆質問。聴講者によると、SNSを始めた主目的は情報収集にあるという。榊原氏は「情報に接触することだけが理由なのであれば、タイムライン上に流れてきた知りたい情報に対し「いいね」を押したり、リツイートしたりするだけでも、目的は十分達成されるのではないでしょうか」と回答。無理をして発信する必要はないと述べる。
「引用リツイートをしておけば、仮に自分が過去に気になった投稿も、自分のアカウントをさかのぼるだけで見つけられる」と榊原氏。自身がSNSを通じて情報発信者になりたいのか、それとも情報をストックするだけで良いのか。SNS活用の目的をいかに明確化するかが肝のようだ。
各種存在するSNSについて「どのSNSがビジネスパーソンの使用に適しているか」と問われた榊原氏は「『発信型』の人はすべて活用するべきでしょう。ストック型でSNSを活用していらっしゃる方はFacebook、Twitterだけでも目的は十分果たせると思います」と答える。