ブランドこそが企業選定の勝ちポイント
揚羽は「人とビジネスを描く」をビジョンとし、顧客の未来へ伴走するブランディングパートナーだ。採用説明会で流される映像制作からスタートし、映像を作る上で、会社のビジョンや歴史、競合優位性、仕事の魅力、従業員の魅力など、包括的に理解し、それをクリエイティブで表現するという強みを養ってきた。
企業の魅力を採用候補者に伝える採用ブランディングから、従業員に伝えるインターナルブランディング、社外に伝えるエクスターナルブランディングへと領域を拡大し、全方位型のコーポレートブランディングを担うようになった。現在は、調査分析から戦略立案、クリエイティブ開発、ターゲットとの関係作りまで、ワンストップで伴走している。
同社の板倉氏は企業がブランディングに力を入れる理由は多数あると説明する。たとえばVUCAの時代と言われ目まぐるしく変化する環境や、働き方の多様化、サステナビリティへの意識の高まり、ミレニアル世代・Z世代の価値観の違いが挙げられる。また、コモディティ化が進む市場の中で「選ばれる」ためにも、BtoC、BtoBに問わず企業ブランディングが必須であることは、多くのマーケターも感じているだろう。
「市場も商品サービスがコモディティ化する時代において、機能・特徴・金額だけでは顧客も判断できません。ブランドやブランドが持つスタンスに共感、信頼が生じ、選んでもらうことが大切です。つまり、ブランドこそが企業選定の勝ちポイントになりつつあるのです」(板倉氏)
ブランディングとは「強みを知り、見える化し、関係性をつくる」こと
ブランディングという言葉は身近な一方で抽象的でもある。まずはブランディングとは何か体系的に理解することが第一歩だと板倉氏は説明する。書籍などでよく説明される表現が「ブランド価値=商品提供価値×コンテンツ提供価値×リレーション提供価値」だ。
商品提供価値とは、商品ができた時点での価値要素のすべてを指す。コンテンツ提供価値は、商品周りで知覚される全コンテンツ(広告コピーやLP等)、リレーション提供価値は、人やコミュニティを通じて顧客に好ましい関係を付与することだ。たとえば、SNSコミュニケーションや店頭でのサービス提供がある。
シンプルに整理すると、商品提供価値によって「強みを知る」、コンテンツ提供価値によって「見える化する」、リレーション提供価値によって「関係性をつくる」というステップを踏むことで、ブランドの価値が向上していく。
具体的な手順に落とし込むと、まずは経営層や顧客など多面的に調査を行って強みを知る。その強みがステークホルダーに伝わるように言語化し、キャッチコピーやブランドシンボルを作成して知覚化を行う。そして、ジャーニーマップなどを作成し、関係性構築のために必要なコミュニケーションを設計し、実施することでブランド価値は高まるのだ。
たとえば、2020年1月に富士通グループから独立したFICTは、独立後も従業員の誇りや顧客からの信頼を継続させるため、ゼロから自分たちのブランド作りを実践した。独立の1年前から取り組みを進めた結果、独立を理由にしたネガティブな退職者は0人だったという。
「ブランディングに関係のない部署」は存在しない
板倉氏はすべての企業活動がブランディングであると語る。各ステークホルダーに向けたブランディングの活動は、企業活動とシームレスにつながっている。それはサービスプロフィットチェーン(企業利益の因果関係)を見ると理解しやすい。
経営資源(人/モノ/カネ/情報)を駆使し、従業員のエンゲージメントや生産性向上を行う。すると、それが顧客の満足やロイヤリティとなり、売上や利益、ひいては株主からの信頼につながり、経営資源に返ってくる。そのサイクルを回すことで企業価値は向上する。そして、このサイクルを回すこと自体がコーポレートブランディングだ。
「本質的に、ブランディングに関係のない部署はありません」(板倉氏)
成功するインターナルブランディング4つのポイント
BtoB企業のブランディングにおいては、インターナルブランディングが重要だと板倉氏は語る。
「BtoB企業様の場合、『従業員こそがブランド』です。そのため、まずは従業員をしっかり味方につけるインターナルブランディングこそがビジネスの成功につながると考えています」(板倉氏)
ES(従業員満足度)が向上すると、生産性などプロセスが向上し、品質や顧客満足の向上ひいては売上・利益アップが実現し、職場環境がより良くなり、さらにESが上がる、と良いサイクルが回る。それが結果的に対外的にも良い企業イメージとなって反映されるのだ。
では、成功につながるインターナルブランディングとは何か? 板倉氏は4つのポイントを提示する。
1つ目のポイントが、目的を設定する・効果を理解することだ。板倉氏は「当たり前だと思うかもしれない」と前置きをした上で、それでも目的よりも手段を重視してしまう企業も多いと指摘する。この点を念頭に置いて考えたいのが、行動を促す仕組みだ。板倉氏はスタンフォード大学のBJフォッグ氏が提唱する理論を用いて説明する。
「理想的な行動は、『モチベーション』と『行動するための能力』、『行動を起こすトリガー』のかけ合わせで生まれます。インターナルブランディングにおいては、モチベーションを上げるためのエモーショナルな施策と、トリガーとなるファンクショナルな施策が必要です」(板倉氏)
具体的な施策で考えてみるとわかりやすい。たとえば、社長の年頭挨拶やメッセージといった講話は「認知」効果は高いが、「理解」「共感」「行動」などの効果は時間経過と共に薄れてしまう。一方、会社のヒストリーや社員エピソード、ビジョンなどを映像化する施策では、音楽やナレーションを活用することで世界観や空気感を伝えやすい。「認知」には弱いが、「理解」「共感」に効果が高い施策と言える。
このように、施策によって期待できる効果は異なるため、目的と効果を踏まえた設計が求められる。
また、カスタマージャーニーマップの従業員版であるエンプロイージャーニーマップの作成も有効だ。従業員のペルソナを作成し、喚起したい感情や達成したい目的を整理しながら施策を検討していく。既にインターナルブランディングを実施している企業も、マップを作ることで取り組みの抜けがないかを確認できる。
社員の巻き込み方は3パターン
2つ目のポイントがプロセスに社員を巻き込むことだ。インターナルブランディングは経営と現場をつなぐ取り組みである。経営サイドだけでなく、社員を巻き込んだ施策開発が大切だ。板倉氏が推奨する巻き込み方は3通りある。
まず、プロジェクトチームにターゲット社員を参画させること。施策の検討から開発まで一緒に進めていくパターンだ。そこまで現場やターゲット社員の時間を割けない場合は、インタビュー対象者として巻き込む方法がある。「普段の仕事で不満に思うこと」や「検討中の施策に関する意見」などに耳を傾け、現場のニーズを紐解いて施策を考える。そして、ターゲット社員を一堂に集めてワークショップを行う方法も1つの手だ。実施後にフィードバックを行うことで、プロジェクトへの参加意識を持たせることができる。
ある大手製薬会社では、コアバリューを浸透させるため、ターゲットのペルソナを設定し、インタビューを実施。その上で、社内に伝わるための新しいメッセージと、社内向けキャラクターを開発した。
このキャラクターは社内資料や、付箋などグッズの展開、社内表彰への反映など、社内で目に触れられるようにした。キャラクター名も従業員の公募によって決めており、企業内で愛されるキャラクターに成長している。アンケートの結果、75%の社員がメッセージ・キャラクターを通じて自身の意識や行動に変化があったと回答するなど、効果が出ている。
プロセス・ロジックの開示が重要
3つ目がプロセスを価値に変えることだ。インターナルブランディングは、取り組みのプロセス自体も価値になるのが特徴だ。経営と現場を相互に理解していくため、できる限りプロセスを開示しながら進める。
たとえば経営層へのインタビュー内容をドキュメントで配布したり、ワークショップに参加できなかった社員へ情報を共有したりと、熱気を伝えるために意見や写真を残すといいだろう。また、メッセージを発表する際に「どのようなプロセス、ロジックでこのメッセージに至ったのか」も従業員に提示するなど、納得感を得られる工夫をする。
さらに、プロセスをアウトプットし、残しておくことが企業としての資産になる。たとえば、プロジェクト終了から数年後に入社した中途社員や、経営層が入れ替わったタイミングでのオンボーディングなどでも、メッセージ策定の背景を振り返ることができる。つまり、人が変わっても企業文化の醸成にも役立てることができる。
アンバサダーの任命で浸透を加速
4つ目が巻き込んだ社員を味方にすることだ。どんな施策でも、「会社から全社員へ」という一方通行の構図になると浸透は難しい。各組織に触媒となる、旗振り役の社員を作ることで浸透は加速できる。
そのため、揚羽では「アンバサダー」社員を任命することを推奨している。プロセスに参加している社員はプロジェクトに対してポジティブな感情を抱いているため、浸透に大きく貢献してくれる可能性が高いのだ。
たとえば、ある大手機械メーカーのグループ企業はビジネスが多岐にわたるため、「それぞれが違った業務と向き合いながらも組織として1つになれる言葉が欲しい」という目的で取り組みが始まった。
経営層へのインタビュー、社員ワークショップ、メッセージ策定と、ここまで解説してきた取り組みを進めた上で、社員ワークショップに参加した社員を再度全国から集め、「アンバサダー研修」を実施。アンバサダーに期待することや、周囲に伝えてほしいことを伝えるとともに、アンバサダーの考案した浸透施策をプロジェクト化し、その旗振り役として推進してもらっている。
以上、この4つのポイントを押さえることで、BtoB企業のブランディングの第一歩であるインターナルブランディングを成功に導くことができる。
「各社マッチする進め方は異なります。その企業様に合わせてカスタマイズしながら、調査から課題解決まで伴走させていただきますので、コーポレートブランディングについてお悩みの企業様は一度ご相談いただければと思います」と板倉氏はメッセージを送り、講演を終えた。
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