1to1アプローチと従業員体験がCX向上の鍵
──モバイルオーダーシステムの導入によって、どのような成果を実感されていますか。
2022年3月にモバイルオーダーを導入してから、ユーザー数は6ヵ月で約15万人まで増加。ゴンチャ全体のお客様が約150万人なので、約1割のお客様とつながっている状態です。これまで長い列に並んでくださっていたお客様からすると、モバイルオーダーによって並ばずに購入できるうえ、新商品の情報などをスムーズに得ることができるため、CXの向上にも貢献しています。

──CX向上という難題へ取り組むにあたり、越智さんが意識されていることを教えてください。
1to1でつながっていることを、うまく利用することです。お客様とのつながりを持てている場合、たとえば3ヵ月間来店されていないお客様に対象を絞ってクーポンを差し上げることもできますよね。SNSなどで不特定多数にクーポンをばらまくのではなく、LINEを通じて「あなただけに」差し上げるアプローチを大事にしています。
EX(従業員体験)も重視しているポイントの1つです。デジタル施策だけでなく、クルーたちの接客がCXの向上に大きな影響力を持つことは、各調査からもわかっています。3,000名以上いるアルバイトクルーのうち半数近くは大学生なので、毎年3月に卒業してしまいます。しかしながら、辞めたクルーはその後もずっとゴンチャのお客様、それもコアなファンでいてくださるわけです。彼らとつながり、卒業後もファンであり続けてもらうために、クルーのLINE IDと会員情報をシステム上で認証する取り組みも進めています。
DXと離脱原因の特定に注力していく
──クルーともつながることで、CXにどのような影響があるのでしょうか。
認証後のイメージとして、卒業時に「長い間ゴンチャで働いてくれてありがとう」という感謝状を送ったり、夏場の繁忙期を乗り越えた後にねぎらいの言葉を添えてクーポンを進呈したりすることを考えています。クルーの満足度を上げることで、お客様の満足度も自然と上がるのではないでしょうか。
──さらなるCXの向上に向けて、今後取り組んでいきたいことをお話しください。
中国に「HEYTEA(喜茶)」というティーブランドがあります。HEYTEAの店舗にはレジがありません。ユーザーが店舗に向かう途中で注文し、到着と同時に出来上がったドリンクを受け取るだけ。日本ではまだまだ現金を使うお客様が多いため、今すぐレジを廃止することは難しいかもしれませんが、私が目指したいのはHEYTEAのように全てスマホで完結する世界です。
また、離脱原因の特定にも引き続き取り組んでいきます。年間来店比率20%増を目標に、クーポンを差し上げたお客様の来店頻度をトラッキングしつつ、様々な施策を試しているところです。どんなブランドにも一定数の離脱顧客は存在します。ゴンチャのモバイルオーダーを利用するお客様のうち、30%は3ヵ月以上足が遠のいています。「モバイルオーダーをしてくださったお客様が離脱しているのはなぜか」この原因を解明していきたいです。